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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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⑪北側と南側



 食堂を出たタマキは、自分の泊まる部屋に戻る途中で何と無く窓の外を眺める。夜の海は内側から照らされる範囲以外は真っ暗な闇に包まれ、昼の陽射しの中で見る景色とは真逆である。


 「……ほおぉ〜、あんたが噂に聞いたお客さんかい?」


 不意にそう声を掛けられ、タマキが振り向くとそこに船員でない男が立っていた。旅客の一人なのだろうかタマキより若干年重に見えるが、強化人間の彼女と比較するのは余り現実的ではない。自分の実年齢が曖昧なら他人も同じなのだ。


 「噂ねぇ〜、そんなに私ぁ美人ってもんでも無いって!」

 「ははっ、それもそうだが……あんた、強化人間なんだろ?」


 相手の言葉に反応し、タマキの耳が警戒するようにぴくりと動く。


 「……その様子だと随分()()()()だな! で、島に着いたら幾らで売り出すつもりだい?」

 「はぁ? そいつはどういう意味だい」


 タマキの声に何か感じ取ったか、男は明らかに落胆した調子で答える。


 「何だ、あんた売り子じゃないのか。強化人間の使い道なんて戦場で使い捨てか、娼婦として売る位しか無いのにな……やれやれ」


 興味を失った男はそう吐き捨てるとタマキから離れ、客室が並ぶ船内方向に去っていった。




 「色々と世話になったな! 私ゃ船旅ってのは初めてだったから不慣れなもんでねぇ〜」

 「いえいえ、私も楽しかったですよ!」


 本島が近付きタマキは下船する準備をして部屋から出ると、仲良くなった女性船員を見つけて声を掛けた。


 「それで、本島に行ったら何かするおつもりですか?」

 「んぁ〜、そうだなぁ……一先ず、観光でもするつもりだがね」

 「そうですか……でしたら、島の南側がお勧めですね!」

 「ん? 南側はいいけど北側はダメなんかい?」


 タマキは彼女の言葉に何かを感じ取り、そう尋ねる。すると船員は一瞬考えてから、周囲を見回してタマキに顔を寄せる。


 「……北側は、惑星統治機関が星外流入者管理プログラムを実施して統治しているので、ある意味治外法権を敷いているんです。だから、色々と表向きに出来ないような店が多くて……あまりお勧めしません」


 親切な彼女はタマキの身を案じてそう教えてくれるが、それはタマキには逆効果だった。


 「……判った、それじゃ南側を回ってみるかね!」

 「ええ、それが良いと思います! では、良い旅を!!」


 だが、タマキがそう答えると船員は表情を明るく変えて見送ってくれた。



 「さぁさぁ、観光巡りのバスはこちらだよ!」

 「部屋、空いてますよ! 全面海側のオーシャンビューですから!」

 「本島名物揃いですよ! さぁ寄ってらして!」


 南側に面した埠頭は、様々な観光客向けの施設と店が並び地元の住人と外惑星からの出稼ぎ達がこぞって呼び込みをしていた。観光客に混じってタマキも彼等の中に身を投じ、言われるままに勧められた試食の魚肉を齧り、串に刺さった果物を食べながら通りをぶらつく。だが、女性船員が言っていた通り、南側に怪しげな店はやはり皆無で平凡な観光地である。


 (……ここんとこ、のどかな生活だったからな。たまには違う雰囲気も悪かないだろ)


 島での穏やかな暮らしの時と違う表情になり、タマキはにやりと笑う。島の優しい舌触りの酒も良かったが、たまには強くて匂いも癖も強い酒も飲みたい。そんな心境になったタマキは、観光客の人混みから抜けると物資搬送用の大きなタイヤを着けた貨物ドローンの上に飛び乗った。



 「へぇ〜、観光に飽きて隔離線を越えたくなったってか……まあ、気持ちは判るがねぇ」


 観光地化された南側埠頭から貨物ドローンの上を拝借して移動したタマキだったが、正規の手続きを踏まずタダ乗りした事には違いない。停車したドローンから降りた彼女は警備ドローンに直ぐ見つかり、管理事務所まで出頭しないと訴訟だ何だと喚かれて渋々やって来た。そこで話を聞かされた担当係官は、載っていたのが普通の荷物なら別に何でもないがと打ち明ける。


 「でもねぇ、ありゃあ北側埠頭の巡視艇向け物資だから……」

 「巡視艇? 何だそりゃ」

 「あんた、観光客だろ? ここの北側は治外法権が適応されてる位は知ってるだろう」

 「あー、行きの船で教わったよ」

 「……巡視艇が取り締まってんのは、南側目当ての観光客が気軽に入ってこられんように見張る為さ」


 担当係官は腕組みしたままそう話すと、自分は島出身だから嫌なんだよと前置きして続ける。


 「……普通、巡視艇は悪さする連中を取り締まる筈だろう。だが、北側埠頭の巡視艇は内側に入れないよう見張ってるんだぜ? ここは俺らの星で、ここも俺らの島の筈なのに」

 「まあ、世の中には理不尽もまかり通る事もあるさね。だが、私にゃ関係無いこった」

 「……関係無い?」


 タマキがそう言うと担当係官は怪訝な顔をするが、彼女は素直に頭を下げて貨物ドローンに乗った事を詫びて二度としないと誓った。




 

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