9話 呪いを引き裂く者
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『アイ』
『ご主人様、どうしました? わざわざ念話で』
『確認だが……リーザは。そのう、凄く邪悪な存在とか、罪人とかで。罰として封印されているとかじゃないよな?』
『なかなか突飛な発想ですが、それはありません。この首輪には聖属性の欠片もありません。第一、リーザの魂に刻まれている悪のベクトルは、平均未満です』
『悪のベクトル?』
『全く悪のベクトルを持たぬ、人間は存在しません。ご安心下さい。リーザはケント様未満です』
『あっ、そう……』
『下級天使にとって、対象者以外の記録にアクセスすることは禁則事項です。よって、過去に関しては分かりかねますが、ベクトルを読むくらいはできます。仮にご心配のようなことがあれば、引き取ろうとされている段階で、全力で反対しております。でも、なぜそのようなことを?』
「いつからだ、リーザ。 いつ首輪を着けられた?」
『ご主人様?』
「わかりません……4歳頃にはもう」
「許せない!」
「えっ?」
「そんな幼い子に何の恨みがある! そんなことしたやつは、人間の屑だ! 俺が外してやる!」
「やっ、止めて下さい! ご主人様! 今日出会った縁もゆかりも無かった、赤の他人ですよ!」
「そうです。止めて下さい。ケント様!」
「ああ昨日まではそうだったかも知れん! だが、今は俺の縁者だ! 相棒って言っただろう。こんな理不尽を見過ごすなら、俺も首輪を填めたヤツと同じ、人間の屑だ! そもそも俺は転移者だ、死んだって誰も悲しまない」
俺は立ち上がると、リーザが弾かれるように跳び上がった。扉の方へダッシュ!
だが今の俺に捕まえるのは容易い。
「やっ! 嫌! 嫌です!」
ジタバタ暴れるので、ベッドへ組み伏せる。
これって、誰かに見られたら、とってもまずい状況では?
平らだから良いってもんじゃない。
だが、今更引き返せない。
首輪に右手が掛かった、左手も掛かる。
「動くな!」
「はっ、はい!」
思いっ切り、力を込めた。
ミシッ!
「ぐわっ!」
胸に激痛が走る! これが呪いか!
顔が引き攣る。
「駄目です! ケント様が、ケント様が死んでしまいます!!」
ミシッミシッ!
胸が締め付けられ、脂汗が噴き出て止まらない。
俺は、理不尽ってヤツが嫌いだ。
自分のことは我慢できる。だが身内とか友人、あるいは自分と同じ境遇の人間とかが理不尽な目に遭っていると、もうだめだ。我慢ならないのだ。
あのイカレ天使に反発したのもそうだ。俺みたいなヤツが、これからも増える。そう思ったからだ。自重の意識は霧散していた。それで、結局は損をすることが大半だ。自分でも馬鹿じゃないかと思うが、性分だ!
今回も。死ぬかも知れないが、仕方ない。
「リーザ。いっ、今、楽にしてやる!」
渾身の力を込めて引き千切ろうとする。
メキッ!
首輪のブロック状になった部分に隙間ができたように一瞬光ったが、眼に見えない力で引き戻される。
息が、息ができん!
負けん、負けるものかぁああ!
最後の力を振り絞った時、視界が光で埋まった──
「グゥゥゥ……ウグム……ああ」
両手に首輪の感触が残ったまま、両腕は限界まで広がった!
≪心停止! 急性多臓器不全進行中!!≫
≪期限付き不死属性発動中:超回復します!≫
≪称号:剛毅果断を得ました!≫
≪称号:生ける聖杯を得ました!≫
†
「………うゎぁぁぁああ。ケント様、ケント様……死なないで下さい……ぅぅぅああ。ケント様と……私の命と替えて下さい……私が死にますから、死ねば良いのですから」
気が付くと、俺はベッドに横たわっていた。傍らにリーザが居て、すがって泣いている。
「それは、困るな。折角外れたのに……」
その首には、少し前まで填まっていたものがなかった。
リーザが静止した。そして、大きく目を見開いていく。
「げっ、ゲンドザマァァア」
ぐしゃぐしゃに泣き腫らした顔が飛んできて、胸に抱き付かれた。
「うぁあああ…………」
「ああ、悪かった。俺は死なない。死なないさ」
少女の頭を撫でてやる。
ああ……起伏はないけど、こんな薄着で抱き付くのはまずくないか? ん?
ずり上がってきた。
ン、チュウ……って? キスぅ???
「生涯掛けて、ケント様にお仕えします!」
「気にするな、リー……ザ?」
髪が……伸びて……伸びている!
燻った金色から、華やかな金色になって、ぐんぐん伸びている。
顎のラインまでしかなかった髪が肩に届いた。
って、ぺったんこだった胸も膨張してないか?
「おい! リーザ、どうした? 大丈夫か?」
眉間に皺を寄せて苦しそうだ。
「うううむ……」
顔が……、まん丸だった顔が少しずつ面長になっている。
「えっ? まさか」
俺にのし掛かっているリーザの体重が明らかに重くなってきた。
「おいおい」
身長が伸びている! 幅も厚みも! 一気に成長している!
「はぁぁぁ…………」
「リーザ!」
表情が緩んだ。瞼が開く!
「おおう!」
美しい!
すっきりとした眉に眼がぱっちりして、すっと通った鼻筋に大きめの唇。いきなり美女になった。17歳を通り越した妖艶さだ。
俺に覆い被さって、至近距離に居る。
「アタシ、どうなったの……?」
上体を起こした。
「おおい、む、胸、胸!」
大きく開いた襟刳りから、結構な肉塊がはみ出て、いや弾け出ている。
自分の胸を見下ろす。
「っっっっっわあぁぁぁ。おっぱい大っきくなってる! ムッフゥーー!!」
「いっ、いいから隠せ。胸を隠せ!」
「あらぁ。ケントってば、かわいい! ああ……やっぱり苦しい!」
ケント?
襟元に両手を掛けるが早いか、力いっぱい広げた。
「ちょ!」
見てはいけない。完全にまろび出て、大きく揺れた乳房が網膜に焼き付く。
F! いや、Gか!
だめだ! だめだ!
左脳はそう訴えるが、右脳が抗する。目を離せさせない。
しかし、誘うように、まだ残存していたボタンをひとつ外した。
「ふうぅぅ。やっと、お腹が楽になった! 流石に子供の服じゃあねえ」
眼に飛び込む悦楽。
何とか突起は隠されたが。
素晴らしい括れ──急峻な乳房の裾から少し肋骨が浮かんだ脇を通り、露わになった臍から豊満な臀部への曲線が、牡の魂を奥底から揺さぶって来る。
生唾を飲み込む。
何度も頭を振って気を取り直す。
さっきまで小学生に見えていた子に、欲情してどうする……。
「ふーん。ケントって随分我慢が利くんだね」
「お……お前は誰だ? 本当にリーザなのか?」
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訂正履歴
2022/09/20 申し訳ありません。特濃版から見直しました。




