表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/82

29話 クラン結成

日曜日も投稿してきましたが,正式に水土の週2回投稿に致します。

「うーむ。クラン名なあ。どうしような」

「ああ……ケント様が決めて下さい」


 リザの眉が上がる。

「ちょっと、エマ! 聞こえは良いけど、自分は考えないってことだからね、それ!」

「むぅ……一利ありますね。リザ。何か良い案を持っているって表情ですが?」


「もちろん! アタシは天才だからね。言うわよ。ケントと情婦達。どうよ?」

 ドヤ顔だ。


「じょ、じょ、情婦?!」

 あぁ……。


「そっ、そんな、いかがわしい名前は却下です!」

 うんうん。同意だが、エマも真っ赤になることでもないぞ。


「なぁにが、いかがわしいよ! アイちゃんが、言っていたわよ。エマは、昨夜悶々としても眠られなかったって! その人が、いかがわしいだって、プッ」

「このぅ……リザが、夜中に変な声を出しまくるからでしょう!」

 ああ、あの耳は聴力が良いのかな。


「そりゃあ、しょうがないわよ。だって、ケントがうま「その辺にしておけ! 2人とも。今はクラン名だ」」

「だから、ケントと……」

「却下だ。ギルドの窓口で呼ばれたら恥ずかしいだろう。呼ぶ職員にも迷惑だ」


「アタシは恥ずかしくないけど。まあ……職員はそうよね」

「情婦は論外ですが、ケント様のお名前を冠するのは悪くないですね。ならば、ケント騎士団というのは、いかがでしょう」

「騎士は、エマだけでしょう?!」


「そうだな。騎士団というと、どうも公の団体ぽく聞こえるよな」

「むぅ。だめですか」

 苦情が出そうだ。


「うーむ。ケントも案を出してよ」

「そうだな。俺の名前か……名前は、もうひとつある。三浦だ」

「ミュラーかぁ」

 どうしても、そうなるのか。


「そのままだとな……ミュラーズにするか?」


「ミュラーズ。語感は良いわね」

「だろ?!」

 何ミュラーズがいいかな。ア●ナ・ミュラーズ。いやいや、ふたりの胸を見ながら発想したらおかしくなる。


「なるほど。ケント様の家名を戴くのですね」

「ああ」

「ちなみに、最後の”ズ”とは」

 エマが真顔で訊いてきた。訳されていないのか。まあ固有名詞だしな。


「最後のズは、俺が居た世界の複数形を指す発音だ。チーム名でよく使われる」

「ありがとうございます。よく分かりました」


「家名で、その一員。じゃあ、ケントの家族になるってことね! いや妻、妻だわ!!」

 リザが、顔を押さえて悶えた。

「いいですね!」

 エマも乗っかった。


「うぅむ。やめようかな」

「ダメよ! 男が一度、口にしたんだからね」

「はいはい。でもそれだけだとな。前に何か付けた方が良くないか? なんとかミュラーズみたいに」

「要らない要らない。ねえ、エマ」

「そうですね。不要かと思います」

 おまえら……。


「わかった。ミュラーズにしよう」

「やったぁ!」

「ですね」

 2人ががっちり握手した。おまえら、本当は仲良いだろう?!


「失礼します」

 タイミング良く、出納係が戻って来た。


「クランの名前は決まりましたか?」

「ああ」


     †


 ギルドの手続きを終え、エマ加入の歓迎会をやることにした。

 ただ問題がひとつある、場所だ。


「なあ。1つ訊きたいのだが」

「なに? 「なんでしょう?」」

 リザとエマが同時に答えて、微妙に気まずい。


「ああ。この世界では、飲酒は何歳から許されるんだ?」

 視線を逸らせていた2人が、顔を見合わせる。


「どういう意味?」

「は?」

「あのう。ケント様。なぜ、年齢を?」

「いや……」

「確かに余り幼少期から飲むのは、憚られるところがありますが」


「それで、大体の線は?」

「決まってないわよ。アタシは飲んだことがないけど。そういえば、このまえも、大人に成るのは何歳だと訊いたわよね」


 代官所に行く前に訊いた。その時は。

『子供が作れるようになったら、もう大人よ!』

 なぜか、リザは胸を張っていた。

 代官もリザよりは幼そうなリーザを見て認めていたから、間違っては居ないのだろうが。もうひとつ釈然としない。


「そうですね。強いて言えば、1人で食い扶持を賄えるか、金を稼げるようになったら、飲んでいても特に何も言われませんね」

「そういうものか」


「おかしいわよ。ケント」

「ん」

「だって、大人に成るのだって、成長は人それぞれだし。そもそも、サピエンだけじゃなくて、エルフも居るし……リカントだって」


 そうか。

 種属が違うからな。年齢で一律には決められないか。

 そう言われてみれば、地球でも国によって違うしなぁ。


「わかった。じゃあ、バーにしよう」

「はい」


「えぇぇ、聖職者が飲むの?」

 リザが嫌味を言うと。


「もう還俗しましたから。リザこそ、飲んだことないんでしょ!」

「ないけどさ。飲んでも良いよね、ケントぉぉ」

「ああ。2人とも飲んで良し! ただ最初は自分の限界が分からないから、ゆっくりな」

「うん」

「承りました」

 俺も油断は禁物だ。


 そうやって、このバーに来たのだが。

 限界を見極めつつ飲むなどという殊勝な考えは、30分しか持続しなかった。

 結局3人とも大いに喰い、大いに飲んでしまった。そして宿に戻ることになったが。

 エマは千鳥足気味だし。リザは俺にしなだれ掛かって歩くのがやっとだ。

 それでも近かったのでなんとか宿に着いた。


「替わりましょう」

 リザをエマに渡す。

「うぅむ」

 フロントへ行って、鍵をもらってきて、リザを受け取る。


「ああ、エマ!」

「はい?」

「そっちじゃない」

 階段を昇ろうとするので止める。


「いえ。合っていますよ。酔っていてもそれぐらい、ウッフ」

「そうよ。上よぅ! ねえぇぇ」


 俺に抱き付いているリザも肯定する。酔ったら余計仲が良くなったようだ。


「そうじゃなくて、部屋を変えたんだ。まっすぐ行って一旦外だ」

「はえ?」


 そう。スイートから離れに変えて貰ったのだ。

 外に出て、50m位歩いて、生垣を回り込むと離れがあった

 鍵を開けて中に入ると、煌々と魔灯が点いている。魔灯は小さい魔石で出来た照明器具だ。暗くなると自動的に灯りをともす優れものだ。


「おおう。豪勢ですねえ」

「まあ、多少はな。風呂もあるぞ」

「フロ?」

「お湯に浸かれる浴室だ。リザは酔っていて危ないから明日な」


 えーと。左は1人部屋(シングル)か。もうひとつ向こうもシングルがあるが。

「今日のところは、エマはここで寝ろ。ほれ、エマの荷物だ」

 預かっていた物を保管庫(ストレージ)から出してやる。


「ありがとうございます。あれ、えっ? あのう、ちゃんとした寝室のように見えますが」

「当たり前だろう、正式メンバーになったんだ。いつまでもソファーで眠らせるわけにもいかない」

 仕事に関わる衣食住は、クランで持つことにしたからな。


「ああ、ありがとうございます。ううう……」

 泣き上戸かよ!


「あのう、ケント様は?」

「確か、突き当たりが2人部屋(ツイン)だ。そこで寝る」

「リザと一緒にですか?」

「そっ!」

 覚束(おぼつか)ない足取りの割に、ご機嫌だなあ。

 それを聞いたエマは、反論もせず、さめざめと泣き始めた。


「……では。また明日」

「おう、じゃあな!」


「よぉし、夜はこれからよ!」

「リザも、酔っ払っているんだから、大人しく寝ろ!」

「えぇぇ……」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/10/19 若干加筆

2023/09/15 誤字脱字訂正(ID:1576011さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ