26話 ケント 調停する
調停……最近は薩長同盟の調停者は坂本龍馬じゃなくて、小松帯刀説が……
騎士の方を向く。
「従者というのは考え物だが、ちょうどパーティメンバー募集をするつもりだったんだ」
「おおう。ならば、ぜひ!」
「いや、ちょっと待て、女騎士……」
「エマとお呼び下さい」
「分かった、俺もケントで良い」
「ケント様……」
「話を戻すぞ、エマをメンバーにする前提は、このリザおよびリーザを護る盾となることだ!」
「こっ、この者をですか!」
「嫌なら、メンバーは無しだ」
「うっ、うう……」
「ええぇ、こんなデカブツなんか要らないわよ! 前が見えなくなるでしょ」
「いいや。俺の大事なリザを護る者が要る」
「えっ♡」
「リザも分かっているだろう。戦い方からして、俺は機動力重視の物理戦闘職だ」
「そっ、そうね」
「だろう。いつもリザを護ってやりたいが、それでは俺の持ち味が消える」
「護ってやりたいなんて……ああでも」
うっとりした表情で、頬に両手を当てている。
「エマはどうだ?」
「はい。ケント様のご命令とあれば、この……」
「呼ぶ時はお互いに名前を呼べ! ああ、ちなみに、この姿の時はリザ。さっきのもう少し幼い時は、リーザと呼んでやれ」
「はい! よく分かりませんが……分かりました。リザもしくはリーザを護ります」
よし!
「リザはどうなんだ? 駄々をこねるなら。これからはずっとリーザと寝る」
「しょ、しょんなあぁ……ケントの言う通りにする」
『飴と鞭ですか。ど……相棒の操縦が巧くなりましたね、ご主人様。調教士の固有スキルですかね? ほらほら。文句言いながらも、リザさんの顔が真っ赤になっていますよ』
「じゃあ、前提条件はクリアだ、後は明日実地の試験をして決めよう」
「試験?」
「一緒に戦闘をしてみるということだ」
「なるほど、わかりました。ところで」
「何だ? エマ」
「私はパーティメンバーではなくて、ケント様と主従になりたいのですが」
「主従……そんな簡単に主人を決めない方が良い! 大体エマは、俺の何を知っている?」
「そっ、それは。転移者様、男性、妙齢ということぐらいですが」
妙齢って。
「そんな良く知りもしないやつを、主人にして良いと思っているのか?」
「はい!」
断言かよ。
「そんなわけないだろう」
「いえ、夢のお告げに限って間違いはありませんし。遠い道程を参りましたが、間違いなく見付けられました。そして、お姿を見て確信しました」
「むう。予知夢に頼るな。もっとお互いのことをよく知ってから、再度検討しよう」
「主従になるには、てっ、貞操を捧げれば良いのでしょうか? リザと同じように」
これ見よがしに、リザが抱き付いてきた。
「そっ、それとこれとは話が別だ!」
リザ=リーザを保護することにしたのは、ほとんど騙し討ちに遭ったようものだしな。今では凄まじく幸運と思っているが。
「わかりました」
「それで……エマはどこから来たんだ?」
「王都です」
「ディース?」
「ああ、そうか転移者様でしたね。ディースとは、この国の首都の名前です。ここから北へ80kmほど。馬車で1日弱というところです」
王都か。
王都とやら東京とすると……ここは小田原ぐらいの距離か。
そう考えると結構遠くから来たのだな、お告げだけで。凄いというか呆れる。ここには、新幹線どころか東海道線もないしな。
「それで、エマは宿を取ったのか?」
「いいえ。夕方にこの町に着いて、やっとここを見付けました」
「そうなのか」
とんでもないやつだな。
「受付では、ここの部屋が開いているって言っていたぞ」
「それが……」
「一文無しなんでしょ!」
えっ?
「はい」
本当かよ!
「ああ、いえ。現金を使い切っただけで、預金はあります。ただ教団から降ろす暇がなかったのです」
「そういうことか。わかった。幸い、部屋は2つある。エマはこっちの部屋で……そうだな、ソファーで寝ると良い。そのクローゼットに予備の毛布がある」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えます。ところで、今からケント様はリザと奥で一緒に寝るのですか」
「そうよ!」
「くぅ、分かりました。近いうちに、その地位を奪ってみせます」
2人の間で、火花が散ったように見えた。
†
「さて」
「えーと」
「何?」
「いや、その……」
リザは不敵に笑った。
「ああ。リーザからの伝言」
はっ?
手を胸の前で握り合わせると、眉を下げた。
「私、今日はどうかしていました。どうかお許し下さい」
「それ、リーザの真似か?」
清楚さに無理が……
「そうよ! なんかね。さっき、いかがわしいって言われて我に返ったみたい。伽はしばらくご猶予を……だって」
「そっ、そうか……」
アイによると。エマがリザにペンダントを突きつけたことが、一種の聖属性退魔術なので、催淫効果が吹き飛んだらしい。
「何? リーザとしたかったの?」
「したくなかったと言えば嘘になる」
「まあ、正直ね。正直すぎるのもどうかと思うけど。今夜は赦してあげる。だからね」
「ああ。わかった」
ベッドの上に座り、リザと向かい合う。
肩を引き寄せ、ゆっくりと顔を近付け唇を奪う。
何度か啄むように触れ合わせると、首を傾ける。
うぐ……。
舌を差し入れると、リザの喉が鳴った。
背中に回した腕を下げ、シャツの裾から右手を中に差し入れ上昇させる。
ん、むぅ。
麓を捕らえた掌で押し包むと、呻いた。
「えっ、あふぅぅ……ああ、灯りを……」
「消したら見えなくなるだろ」
そのまま押し倒してシャツを捲り上げ、突端に吸い付いた。
「ヒィィィィ」
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訂正履歴
2022/10/12 少々加筆
2022/10/13 催淫効果が消えたところの表記がおかしかった部分を訂正
2023/09/15 誤字脱字訂正(ID:1576011さん ありがとうございます)




