24話 誘惑と犬耳
……だんだん自分の願望が反映されているような気が。
アイに計算させると、MAX設定で俺と一緒に戦った場合、リザと同じように獲得経験値逓倍が128倍になっていた。
最初は、魔鉱獣が居る場所から距離をとって戦ったが、魔法士レベル25になった時に、防御魔法が行使可能になってからは、自由度が生まれた。
そのまま、半日後にはレベル32まで上がった。
もっと上げるつもりだったのだが、途中でリザが、無理矢理リーザと入れ代わってしまった。どうやらレベルが追い付かれて、プライドが刺激されたらしい。
その後、リザは魔法士レベル37。俺は、剣士が51、槍士が47まで上がった。
しかし、経験値256倍でも、高レベルになるに従って、上がりづらくなってきたなあ。特にレベル40後半からは、数回戦わないと上がらなかった。
それに、ここらには魔獣がそんなに居るわけではない。やはり早く前に聞いた高レベル魔鉱獣が居る迷宮に行くべきだろう。だが、リザと2人きりというのは、少し不安だ。
人数がではない。
逆に俺ひとりなら何とかなる気もするが。迷宮では平原のようにリザだけ距離をとってという戦術が使えるとは限らない。まあ、難しいだろう。
そうなると、先制攻撃でもしない限り、リザが詠唱している間は無防備だから、彼女を護る者が必要だ。しかし、俺がその役をするのは、効率が悪い。
『ギルドで、メンバーを募集するというのはいかがでしょう?』
『ほう。そんなことができるのか。1回聞いてみよう』
いずれにしても、迷宮に行くのはリザの装備が揃ってからだが。
「お茶どうぞ」
「ああ、ありがとう」
宿に戻る前に町で食事をしようと言ったら、町に入る段階でリザからリーザに戻った。
おいしい思いをするのは、かわりばんこにするらしい。
俺としては、リザのままの方が良かった。今日に限ってはだが
リーザもレベルが上がってから、体力が付いたのだろう。痩せていることは変わらないが、心なしかぷよぷよだった肉感が筋肉質ぽくなってきた。戦闘も少しは自信が付いたのだろう、積極的になってきた。
一口喫してカップをベッド脇のサイドテーブルに置く。
「中々美味いぞ」
褒めたら、にこやかに肯く。
今日は紅茶によく似た何かだ。なぜか砂糖を入れなくてもそれなりに甘い。
それにしても、淹れ方というのはあるのだろう、自分が淹れた時より明らかに美味い。宿には、水差しとマグしかなかった。道具屋で、リーザが物欲しそうに見ていたので、ポット、カップ、スプーンを購入した。
リーザが、横に座ると俺にしな垂れ掛かってきた。
リザに比べると小振りだが、しっかり主張のある胸を押し付けている。
「あのう……」
「おっ、おう」
「狩りにお連れ戴いて、私のレベルを上げて戴いたことに感謝しています」
「そうか」
汗の臭いだろうか? 紅茶より甘い香りがする。
「それで……朝のお約束なのですが……ご褒美を下さいませ!」
「ご褒美?」
「はい」
何だ?
リーザは向こうの手で、ブラウスのボタンを上からひとつずつ外していく。
「やる気を出させる、ご褒美です」
「おっ、おう?」
リーザは俺の手首を掴んだ。そのまま襟の間に俺の手を差し入れると、ブラウスの上から押さえた。
「はぁぁ……」
耳元に深い溜息。
「うっふぅ、尖っていますよね」
なぜか声が出ないので肯く。
「ケント様に、魔力を戴いてからずっとこうなのです。ご褒美を下さい」
って、狩りに行く前からかよ。
『そういえば、マナアサインには催淫効果が有るという説が……天使に性欲はないので忘れて居ました』
今になって言うな!
抱き付かれて、良い匂いが……。
何かクラクラきて、そのままリーザを押し倒すと、ブラウスの裾を引っ張り出して、大きく寛げた。
おぉぅ。胸の膨らみは、横臥しても形を崩さない。
ふぅ。清楚な顔立ちなのに、浮かべる笑みは妖艶だ。
唸りながら飛び付こうとした刹那。
ドン、ドン、ドン!
なっ、なんだ?
向こうの居室の扉か? 誰かが、ノックというには乱暴な音を立てている。
「あぁん、ケント様ぁ」
下から首玉に腕を掛け、引っ張り込まれる。
あぁ本当に佳い香りだ。
ドンドンドン!
「*****」
なにやら、くぐもった大声が聞こえて来た。
「*****」
何だ? もしかして役人か?
前門の虎、後門の狼だ。
ドンドンドン!
ああぁ。うるさい。
「気になって、集中できん。離してくれ、リーザ」
「あぁん、嫌ぁ……」
下から腕を回され、脚も絡みついている。
やっぱり、催淫効果だ。俺も危ないところだった。
「あとで、あとでな」
リーザと睦むのは構わないが、催淫状態に流されてというのは駄目だ。
「きっとですよ」
肯くとやっと離してくれた。立ち上がってシャツを羽織る。部屋を横切る間にボタンを2つ3つ填めて、扉に取り付いて鍵を開けた。
「なんだ? 何の用だ!」
イライラが声に出る。
ドンドンドン
「分かった分かった」
「おわっ」
鍵を開けると扉に押された。タタラを踏んで、なんとか踏みとどまる。
体当たりのように、肩から何者かが踏み込んできた。
鎧!?
見上げる背の高さだが兜は被っていない。
犬……耳?!
「転移者様! やっと見付けました!」
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訂正履歴
2022/10/09 微少に加筆




