21話 この世界で信じられるのは……
異性に言って貰いたい言葉です。
代官所からの帰り。夕食を摂り、別の宿を取った。
また、青銀を売って金も入ったことだし、宿代を上げて寝室と居室が別のスイートにした。
2人とも、シャワーを浴びて汗を流したあと、籐の長椅子に並んで座る。
シャワーから出て来ると、リーザがリザに変身していた。
何か緊張しているな。
「なあ……」
訊いておこう、重大なことだしな。
「なっ、なあに?」
ちょっとビクッとなった。
「訊きたいんだが。一昨日の晩、リザとリーザは、なぜ入れ替わった?」
「ああ、そっち。さっ、さあ……」
そっちって。
「自分でもわからないのか。と、いうことは。戦闘中、無意識に入れ替わるかも知れないのか」
「そういえば」
「おお」
「あのとき魔力が抜けていく感じが」
「そうなのか」
「うん」
そのまま、二人とも黙り込んだのだが。
「ケントはさ」
「ん?」
「アタシが、奴隷だと嫌なの?」
「むう……まあ、俺が居た国では、奴隷制度は廃止されていたからな。リザだって自由民の方が良いだろう?」
「今は別にどちらでもいいわ。主人がいけ好かないヤツだったら、話が変わるけど」
「そうか……」
「それとも。スケベなことするのに、強制してるみたいで引っ掛かるの? 昨夜リーザを拒んだのも、それ?」
「うぅぅ。それもあるが、リーザは無理している気がしたんだ」
「リーザは、思い込みが激しいからね。なんとかケントの役に立ちたいってのが、相当強かったかのは、そうだけど」
やっぱりな。
「でも正直。恐い半分、期待半分だったからね」
期待半分か。
「それより……」
「おう」
「ケントは、奴隷って言うなって言うけど。それって、結局ケント自身が奴隷かどうかに拘っているんじゃない?」
「むう」
「拘ってなければ、関係ないでしょ。アタシは……この世界で信じられるのは、ケントだけだから、もっと好きになりたい」
「リザは、大人だな」
「もちろん」
晴れやかな顔だ。
そうか。リザは強いわけじゃない。リーザを守ろうと気を張っているだけなんだ。
腹が据わった気がした。
「うふふ……ケントの眼が恐くなった」
「じゃあ、恐くなくしてやる」
「アタシの震えを止めてくれる?」
「……ああ」
肘掛けの方へ体を預けて、リザの腹に顔を押し当てた。
鼓動が聞こえる。
髪が暖かく包まれる。
「そうか……ケントも……」
「ん」
見上げると、優しい微笑みを浮かべている。
ずり上がると、小さく蕾のような唇に自分の唇を合わせた。
ふうぅ。
思うさま貪った後、クッションに腕を突いて上体を離して立ち上がる。
リザを抱き上げた。思いの外、軽い。そのまま歩いて、奥の部屋に入り、ゆっくりとベッドへ降ろした。
胸元を綴じていた紐を引っ張って、襟を寛げると少し汗ばんだ谷間が見えてきた。
その下のボタンを外していくと、全貌が露わとなった。
見事だ。
ふるふると柔らかそうに揺れる膨らみ。無意識に手が伸びて持ち上げるように触る。
「あっ」
思ったより冷たい。
喉が熱くなった。
「リザ」
尖りに吸い付き、右手で揉みしだいた。
†
「大丈夫か?」
リザが泣いていた。
ふうっと息を吐いて、こっくりと肯く。
「平気」
「泣いているじゃないか」
「これは痛かったからじゃなくて。さみしさが……消えたって思えたからよ」
リザが穏やかに笑った。
汗で肌の密着面が滑る。
暑いが快い。
だが、いつまでもというわけにはいかない。リザの上から横に退いた。
「痛て!」
痛みが襲ってきた。
「どうしたの?」
「いやいや。忘れたのか? 俺の背中を思いっ切り掻きむしっただろ」
「えっ、アタシ!?」
「憶えていないようだな」
「いやぁ、途中から何が何だか」
顔が真っ赤だ。
「確かに、喘ぎっぱなしだったしな。ここは、良い部屋だから隣に聞こえる心配は無いだろうけど」
「えぇぇ! そりゃあ痛かったけど、途中から……って何を言わせるのよ! ケントのいけず! そうよね、ケントは何か慣れてるぅって感じだったし」
「むっ」
「ああ、そうかあ。あっちの世界にそういう人が居たのね。アデルさんの、お尻ばっかり見てたし。男は浮気者だよねえ」
「おい」
「ふふふ。アタシは寛容じゃないから気を付けてね」
そのようだな。
「あっ、痛て」
仰向けに寝たら、痛みが増した。
「そんなに? ちょ、ちょっと見せて」
「ああ」
寝返りを打つ。
「うっわぁぁ。痛そう。何本も筋が……ごめん。舐めたげる」
「それより魔法で治してくれよ」
「あぁぁ、アタシ回復系苦手みたい」
「は?」
「ああ、首輪が填まってときは、一緒だったんだけどね。今は見た目と同じで、能力が別れたみたい。回復系はリーザが得意そうよ」
「ほぉぉ」
良いんだか悪いんだか。よく冒険者登録できたよな。
俺の回復スキルも、使いづらい。ある程度、重症にならないと発動しないんだよなあ。
「おう……って、っっ、ああ染みる」
熱いぬめりが、背中を這う。
「レロっ……ふぅ。そういえば。さっき俺の居た国って言っていたけれど。この世界に来る前は、どんなところに居たの」
「地球って星の日本という国に居た」
「ムフゥ……チキュウのニホン。どんな国?」
「ああ、そうだなあ。ここみたいな田舎と、1千万人が住んでいる大都市が両方ある国だった」
「1千万って、千の千倍の十倍よね。無茶苦茶だわ……帰りたい?」
突然声を顰めた。
「帰りたくないと言ったら嘘になるが。向こうには、俺と同じ人間が居るらしいからな、帰っても意味がない」
「よくわからないけど。意味があるかないかじゃなくて、どうしたいかじゃないの? 結局は」
「確かにな。良いことを言うよな、リザは」
「ふふん。任しておいて! それよりさ……」
「おい、リザ。どこに手を回している?!」
「うぁ。また凶悪になってる! あぁぁ、アタシに舐められて興奮したんだ?」
「舐めたのは背中だろう。それより、リザの方は、もういいのか?」
「お姉さんから聞いたんだけど」
「お姉さん?」
「馬車で一緒だった」
「ああ」
娼館に引き取られていった2人か。
「痛いのは1回目だけだって。それより、優しくしてくれなかったから、お仕置きが必要よね!」
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訂正履歴
2022/10/02 少々加筆




