表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが  作者: アイリスラーメン
第2章:出逢い『透明な兎人ちゃんが来た編』
47/430

46 幽霊捕獲作戦

「今朝のポルターガイスト現象。そして不思議な出来事の数々。これらの出来事の犯人は幽霊だとわかった。でも()()()幽霊なんかじゃない」


()()()幽霊じゃないって……ど、どういうことですか? ど、どんな幽霊が……」


「その幽霊は()()()()()()()()だー!」


 推理を終わらせ結論にたどり着いたマサキ。ただの幽霊の仕業ではなく、腹を空かした幽霊の仕業だと結論付けたのだ。

 その結論に納得しないのは雪のように白い肌で白銀の髪そして垂れたウサ耳が特等的な兎人族の美少女ネージュだ。


「腹を空かした幽霊って…………そもそも幽霊ってお腹空いたりするんでしょうか? 聞いたことありませんよ。そんなこと」


「いや、俺もそれは知らん。でも今朝のクダモノハサミは食べかけだったぞ。それに売り上げ金額が合わないってことで店の商品を食べてるってこともわかったじゃんか。あと買い物の時にお菓子が入ってたんだろ? それに森で収穫したニンジンも増えたりしてたんだ。これ全部食べ物が関わってるじゃんか。この全ての犯行が同じ幽霊なら腹を空かしてるとしか思えんのだよ」


「そ、それはそうですけど……」


「けど?」


「いや、その……マサキさんって頭がいいのか……悪いのか……どっちなんですか……」


 腹を空かしていようがいまいが幽霊なのには変わりない。そして無人販売所の開業開始とともに幽霊が現れた理由は不明のまま。

 幽霊がなぜこのようなことを続けているのか。どうしたら辞めるのかなどの根本的な解決には至っていなかった。

 そのことに対してネージュは、不安そうな表情をしながら青く澄んだ瞳でマサキをじーっと見つめていた。その瞳に答えるべくマサキは口を開く。


「そこでだ。毎日うちの商品が食べられてるってのは売り上げを計算してわかっただろ?」


「はい。そうですね。毎回五百ラビか千ラビ足りませんもんね。幽霊がやったって考えれば辻褄が合うかもしれません」


「だよな。なので今夜、幽霊を捕まえて今までの無銭飲食分をお支払いしてもらおうと思う。いや、この場合、盗難被害か? 幽霊にはしっかりと支払ってもらうぞ!」


「ゆゆゆゆゆゆゆゆ幽霊を捕まえるですか!? そんな怖いことしたくありません! 今まで食べてしまった分のお金なんていらないですよ! だから追い払うだけでよくないですか? いや、追い払うだけにしましょうよ 」


 幽霊を捕まえることに対して必死に反対するネージュ。マサキの両手を掴み懇願する。


「ダメダメダメ。絶対ダメ。追い払うだけじゃダメだ。幽霊だろうがなんだろうが料金を払わなかった分はしっかりと払ってもらいたい! それが筋ってもんだろう。それに警察じゃなくて……聖騎士団とかに突き出さないだけありがたいと思ってほしい」


「い、いやでも……相手は幽霊なんですよね……お金とか持ってないんじゃないですか?」


「だったら掃除でも、皿洗いでも、ニンジンの収穫でも、なんでもいいからしてもらう。そうじゃなきゃ今後も被害は続くし今朝みたいなポルターガイストもまた…………ひぃ……怖いから考えるのやめよ。とにかくだ金を払わせて出て行ってもらう!」


 ネージュは幽霊を捕まえることに対して反対だ。不安要素が多い。多すぎる。

 そもそも幽霊を捕まえるということ自体おかしな話だ。それでもマサキは幽霊を捕まえてしっかりと償ってもらおうと考えている。

 経営者としての判断はマサキの方が正しい。だが相手は幽霊だ。捕まえること自体可能なのだろうか? そんな疑問がネージュの頭によぎる。


「マサキさんの幽霊に償ってもらいたいって考えはわかりましたよ……でもどうやって捕まえるんですか?」


「エサを撒いて幽霊を捕まえる。題して『幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)』だ!」


「ゴ、ゴーストホイホイ? ホイホイってなんですか?」


 マサキの考えが何一つピンときていないネージュ。頭にハテナを浮かべ小首を傾げながら困り顔でマサキを見続けた。


「そんな顔になるのはわかる。作戦名だけじゃ意味わかんないもんな」


「はい。その通りです。意味がわかりません。ホイホイって言葉も聞いたことありませんし……」


「よし。そんじゃ簡潔的に、そして端的に『幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)』がどんなものかをネージュに教えよう。いや、これは作戦会議だ。ともに幽霊を捕まえる同士として意見を出し合おう!」


「なんだか面倒なことになってきました……」


「そんな嫌な顔するなって。そんじゃ作戦会議するからウサ耳貸してくれ。幽霊に聞かれてたらまずいからな」


 相手は幽霊だ。姿が見えない。今ここにいるかもしれない。そんな姿が見えない相手に警戒したマサキは耳打ちをしながらネージュに『幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)』を伝えた。


 マサキの考えた作戦『幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)』はこうだ。


 無人販売所イースターパーティーの閉店時間に合わせて幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)が実行される。

 普段は商品が残っていたらそのまま商品棚に商品を残し明日の在庫にする。しかし今回は残っている商品全てを二人が食事をする際に使用しているウッドテーブルの上に並べる。これがマサキが言っていたエサだ。

 腹を空かせた幽霊がウッドテーブルの上に並べられた商品(エサ)につられてやって来るだろうという安易な考え。

 そして今朝のポルターガイスト現象のように商品(エサ)が宙に浮かび上がれば幽霊が現れ商品(エサ)に食いついたことになる。

 幽霊が現れたのを確認したら部屋と店を繋ぐ通路を完全に封鎖する。封鎖方法は使っていない棚や椅子を置くシンプルな方法だ。

 部屋を密室状態にして幽霊を部屋から逃さないようにする。もしも幽霊が壁を通り抜けることができてしまうのならこの作戦は失敗。通り抜けられず部屋に閉じ込めることができれば作戦は成功。

 あとは密室状態にした部屋の中でマサキとネージュが幽霊を捕まえるという大雑把な内容だ。肝心の幽霊の捕まえ方はマサキにもわからない。

 しかしわからないなりに出した結論は普通に素手で捕まえ布団に包み取り押さえることだった。


 作戦を聞いたネージュは涙目になりながら首を横に激しく振っていた。


「無理です。無理です。無理です。無理無理無理。幽霊を捕まえることなんて絶対に無理ですよ。それにこんな作戦絶対に失敗します。不安要素がいっぱいですよ。無理です。無理です」


「いや、やってみないとわからないだろ。幽霊でも飯食ってんだ。腹が減るってことは意識くらいあるだろ。だから捕まえたら話し合い。いや、説教だ。説教してやる」


「ぅう……捕まえるとか怖いですよ……どうかしてます……ぅぅ……なんでそこまでして幽霊を捕まえることに(こだわ)るんですか……」


 当然の質問だ。捕まえて償わせる。それは泥棒にとっては当然の罰。しかし相手は幽霊。ネージュにとってマサキの考えは理解し難い。

 そして他に意図があるように思えてならないのだった。


「いや、だって……ネージュの、俺たちの生活がかかってるじゃんか。一生懸命作ったものが盗まれるのは嫌だろ? それがネージュが頑張って作ったものだったらもっと嫌だ」


「マサキさん……」


「今朝は俺が作ったクダモノハサミだったけど他の日はネージュが作ったニンジングラッセを食べてる可能性だってあるだろ? ネージュが頑張って作ってる姿を俺は見てきたからさ……ニンジングラッセを盗んだって考えたら無性に腹が立ってきて……だから幽霊だとしても許せないんだよ。それに平気で悪いことするやるやつは許せないんだよな」


「そ、そうだったんですね……」


 マサキの意図が少しだけ理解できたネージュ。

 ネージュはマサキの優しさを感じ、心が少し温かくなった。そして落ち着きを少しだけ取り戻した。

 マサキはいつだって人のため……否、ネージュのためにやってきた。だから今回の幽霊の件もネージュが一生懸命に作ったニンジングラッセを盗んだ幽霊にその分を償わせたいと思っているのである。だから幽霊に挑むのだ。

 そして今後同じようなことを幽霊がしないようにこの幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)という作戦に全身全霊で挑もうとマサキは考えているのだ。


「……なんとなくですがマサキさんの考えがわかりましたよ。マサキさんらしいですね。怖いですけど私も協力しますよ。二人の無人販売所ですからね。私もマサキさんのクダモノハサミを盗られるのは許せないです!」


「おっ、ネージュ……やる気になってくれたか。よかった……二人ならなんでもできる!」


「はい。でも相手は幽霊なんですから気をつけましょうね。呪われないように」


「おい、さらっと最後に怖いこと言ったよな。呪われないようにって……そんなこと考えてなかったのに……やばい怖くなってきた」


「うふふっ。ごめんなさい。でも幽霊来ますかね?」


 当然の疑問だ。幽霊が戻ってくる確証はどこにもない。

 しかしマサキは自身に満ち溢れた表情で口を開いた。


「絶対に戻ってくる……と信じてる。というか信じるしかないな」


「マサキさんが人を信じるってなんか違和感ありますね」


「そうか? 幽霊だからかな……よくわかんないけどなんか信じてみようって思ったんだよね。それに俺はネージュのことは信じてるぞ。違和感なんてないぞ」


「そ、それは知ってますよ。でも私以外でこんなにも信じようとしてるのがなんか不思議で……むず痒いと言いますか……」


 二人が出会って七十八日が経過している。つまりマサキが異世界転移して七十八日目だ。

 その時の中で人間不信のマサキが他人を信じることはほぼなかった。なのでネージュは幽霊を信じようとしているマサキを不思議に思っている。


「う〜ん。うまく説明できんが相手が()()()()()()()()だからかな? 死んだ人に対していつもの人間不信が発揮しないのかも。でも怖いことには変わりないけどね。俺もよくわかんないよ」


「そうなんですか。よくわかりませんが……まあいいです」


「そんじゃ信じて幽霊を待つとするか」


「はい。幽霊に来てほしくはありませんが……仕方ありませんね。お店が閉店するまで待機しましょう!」


 二人は作戦を実行するまで部屋で待機した。

 待機中は店舗に異変を感じたらすぐに覗き穴で店内を確認できるように準備はしていた。しかし今朝のような心霊現象は一度も起こらずに閉店時間を迎えることとなる。

 閉店時間。それはつまり幽霊捕獲作戦(ゴーストホイホイ)の始まりの時間でもある。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。


今までの不可思議な現象の原因が幽霊の仕業だと推理し納得した二人。


マサキは幽霊に対する恐怖心はあるもののいつもの人間不信は発揮しません。

それは幽霊を人だと思っていないからです。だから人間不信が発揮しないという都合の良い設定。


次回は幽霊を捕まえるために奮闘します。多分。

お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ