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兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが  作者: アイリスラーメン
第1章:異世界生活『無人販売所を作ろう編』
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17 ここからここまでが店舗スペース

 マサキのギルドカードを作ったことにより正式に二人で住むことになってから二週間が経過した。マサキが異世界して十七日目ということだ。

 一文無しのマサキと貧乏兎のネージュは無人販売所を経営するための店舗を借りることができず自宅の一角を店舗にする計画を立てた。しかしこの二週間は兎人族の森(アントルメティエ)でのニンジンの収穫に時間を費やしてしまい計画は進んでいない。

 しかしその甲斐あって冷蔵庫の中はニンジンでいっぱいだ。


「腹が減っては戦ができぬってな。これだけあれば飯には困らずに無人販売所の店舗作りに集中できそうだぜ」


「はい。でもここまで集めるのに二週間くらい時間がかかりましたね。今日からはお腹いっぱい元気いっぱいになれそうですけど」


 二人は冷蔵庫の中いっぱいになっているニンジンを見ながら会話をしている。

 マサキはやり切った満足げな表情。ネージュは小さくガッツポーズをとって喜びを体で表現している。


「それにしても入手難易度高すぎなんだよこのニンジン。というかあの森は神様からの贈り物なんだろ? どんだけ意地悪な神様なんだよ……」


「でもその神様のおかげで私たちは飢え死にしなくて済んだんですよ。感謝しましょう」


「確かに。そう言われるとそうだな。カミサマアリガトウ」


 マサキは兎人族の森(アントルメティエ)兎人族(とじんぞく)に贈った三千年前の兎人族の神様に棒読みで感謝した。

 二人は今日から本格的に無人販売所の店舗作りを始める。自宅の一角を店舗にする計画だが、どこからどこまでのスペースを店舗として扱うのだろうか? 

 そして無人販売所に必要な棚や料金箱、看板などの設置をどうするのか入念に決めていかなければならないのだ。

 まずは店舗として扱うスペースからだ。


「俺たちは飯と睡眠が取れるスペースが確保できれば生活には困らないよな。それだったら入り口からここまでをを店にすんのはどうだ?」


「ん〜、もう少しお店を広くしてもいいかも知れませんよ。お客さんがいっぱい来たら入らないので、ここくらいまでお店にしましょう」


「いやいや、それだと店の方がデカイ。自分の家なのになんか寂しいだろ。それにキッチンも店のために使うことが多くなるんだから、やっぱり俺たちの部屋の方が広くないとダメだと思う」


 無人販売所の店舗にするスペースと二人が住む居住スペースの比率をどうしたらいいのか悩む二人。

 マサキは居住スペース広めを提案。ネージュは店舗スペース広めを提案。意見が食い違うことがほとんどない二人なので余計に頭を悩ませる。


 おそらく二人の意見が食い違ったのはパートナーである相手のことを思ってのことだろう。

 家の一角を店舗にすると提案したマサキはネージュに申し訳ない気持ちがあるのだ。だから店舗スペースよりも居住スペースを広くしたいと思っている。

 さらに夢である三食昼寝付きのスローライフをネージュには満喫してもらいたい。そんな気持ちが強いので居住スペースを広く設定したいのだ。


 そんなマサキの考えとは反対にネージュは、少しでもお客さんに不便なく利用してもらい満足のいく店舗を目指そうとしている。そうすることでお金も早く稼げるのではないかと考えているのだ。

 それも全てはマサキと二人で夢の三食昼寝付きのスローライフを送るためだと考えている。


「それじゃあ、二人の意見の間をとって半々にしよう。店舗スペース半分、居住スペース半分。それならいいだろ?」


「そうですね。名案です。そうしましょう」


「ここからここまでが俺たちの居住スペースで……」

「ここからここまでが無人販売所の店舗スペースですね」


 お互いの意見を尊重して店舗スペース半分、居住スペース半分のスペースで別けることが決定した。

 無人販売所で料理を提供する際に調理するキッチンは居住スペース側にあるので正確には半分ではない。しかし家の設計上それは仕方のないことだ。


「あとはどうやって区切るかだよな。カーテンとか取り付けるか簡易的な壁を作るかだな」


「カーテンだと、なんか恥ずかしいです。扉が開いた時の風で丸見えになりますよ。なので壁にしてください。分厚い壁に!」


「まあそうだよな。俺もカーテンだと視線を感じたりして嫌だな。それにネージュが言ったように扉が開いた時に風が入り込んで部屋が丸見えってこともあり得そうだしな。よし、壁にしよう」


 部屋と店舗は壁で区切ることに決定した。


「壁を作って、その壁を背に商品棚を置こう。そうすれば店に入った時、商品棚に入ってる商品がすぐに目に入る。そんで買いたくなる。そんで買う。そんで儲かって三食昼寝付きスローライフを送る」


「そんなとんとん拍子でうまくいかないですよ。()()()()()ならいいですけど」


(兎の登り坂ってことわざか。この世界にも同じことわざがあるのね)


 ことわざがある事に心の中で驚くマサキ。しかしことわざの意味はわかっていない。


「とんとん拍子でいかないことはわかってるよ。けど、こういうの妄想するの楽しいぞ。俺がヒキニートだった頃は部屋に閉じこもって、成功する人生の妄想を膨らましてたからな」


 妄想を膨らませるマサキだったが的を得ない妄想ではなかった。

 二人が壁を作ろうとしているのは入り口から入って真っ正面のところだ。そこに壁を作り商品棚を置けばマサキの言った通り商品が真っ先に目に止まる。

 そして客はその商品に吸い込まれるように店内に入っていくのだ。

 客の目線になる。これも商売をするために必要な要素の一つである。


「でも妄想はとりあえず置いといて……どうやってここに壁を作るかだよな。金がないから自分たちで作るしかないし……」


「そうですよね。どうしましょう」


 一文無しの二人は業者などに壁を作ってもらうことができない。なので二人で協力して壁を作るしかない。

 そんな時、マサキは何か閃いたかのようにハッとした表情をした。


「なあ、ネージュ。いつもの森に竹みたいな木生えてるよな? ほら丸くて細長い茶色の木! あれって貰っちゃダメなのかな?」


兎人族の森(アントルメティエ)に生えてる木のことですね。ニンジンと同じで貰っても問題ありませんよ。不思議と一日で戻りますから」


「マジでバケモンの森だな。一日でリセットされるのかよ。それならたくさん取っても問題ないな。ありがとう神様」


 入手難易度が高いニンジンとは違い一日で生えてくる竹のような茶色の木を壁にすることに決定した。

 その木を作り出してくれた兎人族の神様に棒読みではなくきちんと感謝を告げるマサキだった。

 しかしネージュは浮かない顔をしている。


「でもどうやってあの木を切るんですか?」


「次の問題はそれだよな。さすがに引っこ抜くのは無理だろうし、ノコギリとかの伐採道具も持ってないし。包丁でギコギコするしかないかも……」


「包丁でやるのは嫌です。なので残りの全財産を使ってノコギリを買いましょう」


「そ、そうだな……金足りるかどうか心配だけどそれしか方法ないよな」


 流石のネージュも一本しかない包丁を伐採の道具には使いたくないようだ。それに包丁では切るのも時間がかかる。

 全財産を使ってでもノコギリを購入して木を伐採する方法が最適解だろう。

 店舗がなければ始まらない。痛い出費だが二人は店舗スペースと居住スペースを区切る壁のためにノコギリを購入しなけらばならない。そして兎人族の森(アントルメティエ)の竹のような茶色の木を伐採し壁を作らなければならないのだ。


「あとはヒモとか釘とかがあれば壁の件はなんとか解決だな。そんで部屋と店舗の間に頑丈な扉を作れば完成だな」


「扉とか作れるんですか?」


「やってみなきゃわかんないけどやってみるよ。せっかく壁を作ったのに部屋に入るところをカーテンにしちゃうと壁を作った意味がなくなっちゃうからね」


 店舗スペースと住居スペースは壁を作って区切るが全てを区切ってしまうと居住スペースに入れなくなってしまう。なので一つ扉が必要なのだ。

 その扉を妥協してカーテンにしてしまうと壁を作った意味がない。それなら手間をかけずにカーテンで区切れば良くなってしまう。

 人間不信のマサキと恥ずかしがり屋のネージュはひらひらしたカーテンから客の視線を感じるだけで精神的に負担がかかってしまう。

 そうならないためにも壁を作るのは必須。そして扉を作るのも必須なのである。


「というか壁と商品作れば無人販売所ほぼ完成じゃね? あと看板と料金箱か。その二つはすぐになんとかなりそう。やっぱり大事なのは壁と商品! なんか営業する未来がそこまできてるぞ!」


「そうですね。すごくワクワクしてきました」


 二人は営業する未来が見えて胸を躍らせている。そして同時にその未来が遠い未来ではないことをひしひしと感じていた。


「んじゃ再確認。ここからここまでの家の半分は?」


「私たちがの部屋。住居スペースです」


「その通り。そんじゃここからここまでの残りの半分は? ん? ぷるんって柔らかい何かに……」


 熱くなりながら住居スペースと店舗スペースを再確認するマサキ。腕を大きく広げ、広いスペースを確認しようとした際に()()()()()()に手が当たった。


「マサキさん。何どさくさに紛れて私のマフマフを触ってるんですか」


「ち、違うんだネージュ。ちょっと熱くなりすぎて腕を大きく広げすぎただけだ。まさかネージュのおっぱい……じゃなくてマフマフに当たるとは思ってなかった」


 ネージュの豊満な胸、兎人族の呼び方ではマフマフだ。そのマフマフがマサキの手に当たってしまったのだ。

 わざとではないので許しを乞おうと必死に謝るマサキだったが触られた当の本人はジト目でマサキを睨んでいる。


「はいはい。わかりましたよ。次からは気をつけてくださいね」


「優しき天使のようなネージュ様に誓って二度とラッキースケベを起こしません」


「なんですかラッキースケベって……」


 ネージュもわざとではないことは知っている。それに今回は揉まれたのではなくただ当たっただけだ。すぐにマサキを許し話を戻した。


「残りのスペースは三食昼寝付きのスローライフを送るために経営する無人販売所の店舗スペースですよね」


「も、模範解答すぎる」


 ネージュはジト目からぱちくりと可愛らしい天使のような目に戻り百点満点の模範解答をした。そんなネージュの解答に満足げな表情で親指をパチンと鳴らすマサキ。

 二人の次なる目標は店舗スペースを区切るために壁と扉を作ること。そのためにも必要な道具を残りの全財産で集めなくてはならないのだ。


「まずは壁を作るためのノコギリと釘とヒモを買うぞ!」


「それでは兎人族の里(ガルドマンジェ)の道具屋に行きましょうか。きっと欲しい商品が見つかるかもしれません」


「よし。めざせ道具屋!」


「「おー!」」


 二人は天高く拳を突き上げた。そして二人は道具屋に向かうための支度を始めた。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。


家の一角を店舗にするなら居住スペースへのセキュリティをしっかりしたい。

ということで森にある木を使って壁を作ろうとします。

木の見た目はほぼ竹です。茶色い竹をイメージしてただければ幸いです。

そしてマサキが想像している壁は竹を隙間なく並べた壁です。



次回道具屋で新キャラ登場しますのでお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まずは大工仕事からしなければならないのが大変ですが、応援したくなる2人ですね。
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