表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/111

第八十七話 魔刃

 襲い掛かって来た蛇型の魔物を俺は一刀で斬り伏せる。魔力で強化したことによる特有の銀と赤の剣閃を閃かせて。


「お見事。流石の実力だな」


 それを見てマハエルが感心したかのように口笛を吹いている。後方で支援もせず、ただ時折する道案内以外は見ているだけで。


 その所為でロゼやソラが明らかに不快そうに顔を顰めて睨んでいるというのも気にしない辺り本当に神経が図太い奴である。


 今現在、俺達が居るのは「大蛇の迷宮」だ。なんでもマハエルの話ではここの一番奥で落ち合う予定であり、そこに行けば真犯人とやらと会う事が出来るらしいからだ。


 だから俺達は何もしようとしないマハエルを護衛するかのような形で襲い掛かってくるナーガなどの魔獣や魔物の群れを撃退しながら進んでいるという訳である。でなければ誰がこんな奴を守るように戦うものか。


(身を守る術を持っていないとは思えないし最悪はこいつを見捨てても良いんだが、この言葉が嘘だった時の事を考えるとそう簡単にそうする訳にもいかないか)


 この考えは俺だけの物ではない。現に先程ソラなどは迷宮内なら証拠も残らないからいっそのこと自分に始末するように命令を出して欲しいとこっそりとこちらに頼んできてくらいだし。


 勿論返答は「気持ちは分かるが今は我慢するように」である。少なくともこの件が片付くまではという条件付きではあるが。


「それにしても〈魔刃〉を使えるのか。器用な奴だな」

「〈魔刃〉?」


 それはこの魔力を込めた時に光る現象の事だろうか。


「おいおい、知らないで使ってたのかよ。末恐ろしいな」

「それはいいから説明しろ」


 言外に話すか歩く以外は特に何もしていないんだからという意志を込めて俺は問い掛ける。


「俺も原理までは知らないが天職の中には魔力で人体や物質とかを強化できるものが存在するんだと。んでそれは正式な名称は魔力強化ってのが付いているんだが、その中でもある種のものを〈魔刃〉だと巷だと呼んでるんだよ」

「なんで名称が変わるんだ?」

「詳しくは知らんが、ただの〈魔力強化〉よりも難易度が断然高いらしいぞ。そこら辺が関係しているじゃねえのか?」


 それと単なる魔力強化だとこの赤い光は発生しない事も要因の一つとして考えられるらしい。そう言えば確かにデュークが魔力で左腕を強化しても赤い発光現象が起こることはなかったっけ。


(つまり〈魔刃〉は魔力強化の一段上の技能や現象と考えればいいのか?)


 マハエルの話では〈魔刃〉が使えるだけでそれなりの腕である事の証明にもなるとのことだし、大体そういう認識で間違いないだろう。今までこの〈魔刃〉とやらを使っていた相手が『剣王』だけだったことからも。


 なお、銀色にも光り輝くのはミスリルの特性に依るものとのこと。


 ミスリルはある一定以上の魔力を通すと銀色に眩く発光する性質を持っていて、それで真贋を見分けるのにも使われるという豆知識を教わる事でそれが判明する。


「まあ一人は〈魔刃〉を使える腕利きが居る上に、残る二人も中々の実力者。となればこの迷宮程度を踏破するのは楽勝だろうよ。そういう訳で敵の殲滅は頼んだぞ」

「うるせえ、少しは働く素振りぐらい見せろ」


 マハエル本人は自分の戦闘能力はたかが知れているとのたまってるが、身のこなしなどから察するにある程度は出来ると思われる。少なくともこの「大蛇の迷宮」程度なら問題ないはずだ。


(要するに面倒だから動きたくなんだろうが)


 それでこちらに戦闘を丸投げしているのだから本当にいい度胸である。まあ道中の敵を倒す事はロゼやソラにとっても悪くない事なので別段損をしている訳ではないのだが、やはり気持ち的になんかムカつく。


 ロゼもそう思ったのか大きく溜め息を吐いて複雑疎な表情をしており、ソラの方はと言えば、


「イチヤ様を腕利きとはある程度の見る目はあるようですね。少しだけ見直しました」


 何故かうんうんと頷いており、それだけで結構機嫌を直しているようだった。さっきまで始末したいとか言ってたくせに。


(俺が言うのも変な話だが、ソラは俺に対しての忠誠心が高過ぎないか?)


 信頼関係を作れていることでありそれが悪いなどと言うつもりはないが、何でも全肯定するのは少々行き過ぎな気がしないでもない。


 俺は別に絶対的な天才や超人でもないし、間違えもするただの人間なので期待が大き過ぎると若干気が重くなるのである。


 まあそうは言ってもそれは好意や信頼から来ているものなのでそれなりに嬉しくはあるが。その分、気恥ずかしくもあるが。


「っと、話はここまでだな」


 通路の先に数体の敵影が有るのを視界に捉える。今回の目的は最奥まで辿り着く事なのでマハエルの道案内の元になるべく敵との戦闘は抑えておりフロアボスの部屋などは入らないようにしているが、それでも全ての敵から逃れられる訳ではない。


「二人共、さっさと倒して先を急ぐぞ」

「了解です」

「そうね、ここでのんびりしてても意味ないし」


 ソラとロゼが了承の意を返してくるのを聞いて俺は頷くと、


「二人って俺は?」

「何もしない奴は黙ってろ」


 恍けたことを言ってくる奴の言葉も一刀両断してやるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ