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天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


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第九十八話 予想外な訪問と襲撃

 そのトールという男は部屋に案内されると礼儀正しく自己紹介をしてきた。


「聞いてはいるだろうが改めて名乗らせて貰おう。俺の名はトール。天職は稀少職(レアジョブ)である『戦闘狂(ベルセルク)』で周りからは【掃除屋】なんて呼ばれ方をしている「未知の世界(アンノウン・ワールド)」の戦闘要員だ。そんでもって種族はこの見てくれから分かる通りドワーフだ」


 その言葉通りトールの体は人族の成人男性と比較して短躯短肢であるし、長くて白い髭を蓄えているところなどまさにファンタジーのドワーフそのものだった。


 もっとも服の上からでも分かるくらいに筋肉隆々としており、ひ弱とかそういう印象は欠片もない。むしろその分、存在感やら力などの密度が高い気がするくらいだ。


(それにしても天職が『戦闘狂(ベルセルク)』で呼び名も【掃除屋】か。どっちも名前からして物騒過ぎるし、どう考えても戦闘を生業にする奴だよな)


 そんな奴が一体俺に何の用だろうか。その答えはすぐに奴の口から語られる。


「それとどうして俺がここに来たかだが、お前リーダーの訪問を断っただろ?」

「ああ、全力で拒否った」


 断固として拒否したのは記憶に新しい。そしてそれで悪い事したなんて欠片も思ってもいない。


 これまでの経緯を考えれば厄介事を持ち込まれる気しかしないので。


 もっとも他のメンバーが来た時点で意味がなかったに等しいのだが。


「お前が拒否したからリーダーは渋々来るのを諦めてその代理として俺が派遣されたって訳だ。謝罪の言葉を伝える為にもな」

「『戦闘狂(ベルセルク)』で【掃除屋】のあんたを?」

「ああ分かるぞ。戦闘するしか能のない俺を選ぶ時点でふざけているかとち狂っているとしか思えないからな。もっとも俺を含めた家のメンバー全員は奇人変人しかいないからそんなのは今更だがな。むしろ一方ではこの方が俺達らしい気もしてしまうくらいだし」

「それを自分で言うのかよ……」


 奇人変人の自覚が有るのなら少しはそれを抑える努力をして欲しいところである。

 こいつらにそんな事を言っても無駄だと重々承知しているがそう思わずにはいられない。


「さてと、前置きはそろそろ終わりにして早速謝罪の言葉を伝えるぞ」


 そう言ってトールは懐からそのリーダーからの手紙とやらを取り出して読み始める。


「「今回は家の【歌姫(ディーヴァ)】が迷惑を掛けたようで本当に申し訳ない。そのお詫びとしてこの【掃除屋】をしばらく貸し出すから好きなように酷使しちゃってください。なお死なない限りは何をさせても問題ないので割と乱暴に扱っても大丈夫」だとよ」

「えっと、割とと言うかとんでもなくひどい扱いな気がするんだが、あんたはそれでいいのかよ?」

「別にいつもの事だ。ちなみに俺もこの手紙で初めてこの事を知ったぞ。まったく、勝手に人の予定を決めるのはまだいいが、こんな土壇場じゃなくもう少し早めに俺に教えるべきだろうに」


 呆れたようにやれやれと溜息を吐くその姿を見て俺だけではなくソラとロゼも信じられないという表情をしていた。


 なんだろう、この常識ある対応と寛容な態度は。これで本当に「未知の世界(アンノウン・ワールド)」のメンバーなのだろうか。


 そして『戦闘狂(ベルセルク)』で【掃除屋】なんて呼ばれ方をしている人物だとは到底信じられない。何か裏があるのではと思ってしまうくらいだ。


「お前には悪いがこれがリーダーからの指令のようだから俺は従う他ない。とは言え俺に出来る事など戦う事くらいなものだからやれる事と言ったら護衛くらいだがな。まあ【歌姫(ディーヴァ)】からの情報は聞いているし、十中八九その為に俺はお前達の元に派遣されたんだろうよ。ああ、後は訓練を付けるのも出来るか? もっともそれはあくまでそっちが望むのならの話だが」


 自らを戦闘しか能がないと言い切っているトールだ。逆に言えばそこに関しては余程の自信が有るようだし、とんでもなく強いことがその言葉から窺える。


(これまでのメンバーとは違う感じだな)


 今のところ遭遇した「未知の世界(アンノウン・ワールド)」のメンバーは単純な戦闘力と言うよりは能力や性格の特異さや厄介さが目立っていた。だがそれはこの人物にはおそらく当て嵌まらない。


 戦闘しか能がないということは、それはつまり純粋に戦闘力だけで他のメンバーとタメを張れるということを意味する。間違っても戦いたくない相手だ。


 そんな人物が護衛に付いてくれるのなら教会に狙われてもある程度安心できるかもしれない。そう俺が安堵したタイミングを見計らったかのように遂にその知らせがやって来た。


「失礼します! ヒムロ様に至急お知らせしなければならない事が!」


 これまで基本的には冷静でこちらの返事も待たずに一方的に話す事のなかった係員が焦りをありありと浮かべた声で扉の外からそんな言葉を伝えてくる。


「何かあったのか?」

「こちらに向かっていた【死霊姫】を含めた一行が何者かに襲撃されたとのことです!」

「っ!?」


 遂に教会が動いたのか。しかもこんな強引過ぎる手段で。


 そう思った俺だが続く言葉でそれは否定された。


「情報に依れば襲撃者は「力の信奉者(パワー・アドマイヤー)」と思われ、そこから推測するに目的はクランの離反者の粛清だと思われます!」


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