報告書2
第三十一次暗殺訓練報告
当作戦報告書は、シルファール姫(以下、ターゲットと称する)の訓練用護身魔道具の作動を目的とする、第三十一次暗殺作戦の顛末を記したものではない。
作戦概要
割愛。
実行記録
すみません、魔導トランジスタの仕組みがよく分からないのですが、もう一度教えていただけますか?
大先生の講評
この報告書、こういう使い方はアリなんですね……。
私がよく用いる魔道具部品について説明したものを添付しました。また、学習用の魔道具をいくつか同封しておきますので、自由にお使いください。
もし分からないことがあれば、道具屋クローバーまでいらしてください。敵意を持たずに正面扉から入る分には歓迎いたしますので、遠慮なさらずにどうぞ。
総評
添付された資料及び魔道具は、魔道具技術の結晶と呼んで差し支えない逸品であった。その性質上、該当資料は当作戦にて使用した後、国家機密として扱うものとする。
最後に、コメントとして以下を記す。
大変わかりやすい資料をありがとうございました。四枚目の資料の片隅に描かれていた猫のスケッチがとても良かったです。今度我が国の国旗にしてはどうかと国王陛下に具申してみます。
国王陛下のコメント
許可する。
宰相閣下のコメント
許可しないでください。
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第三十ニ次暗殺訓練報告
当作戦報告書は、シルファール姫(以下、ターゲットと称する)の訓練用護身魔道具の作動を目的とする、第三十ニ次暗殺作戦の顛末を記したものである。
作戦概要
先に明記しておくが、本作戦はこれまでに無いほどの残虐かつ非情な作戦である。もし一欠片でも良心を持つ要員は、本作戦から外れることを認める。その決断において要員が不利になることは一切無い。
本作戦は例の娘(以下、女神様と称する)の弱点を悪用し、女神様に精神的な動揺を与えて無力化することを目的とする。
作戦の第一段階では、道具屋クローバー(以下、敵拠点と称する)の正面入口から侵入する。この際侵入要員はターゲット及び女神様に対して一切の悪意を持ってはならない。侵入および布陣の完了後、作戦は第二段階へと移行。女神様に対して我らの要求を果敢に突きつけるのだ。
これまでの作戦で、女神様は非常に寛容な性格をしていることが確認されている。そのため本作戦には一定の効果があるものと推定される。
実行記録
予定されていた作戦時刻は女神様とターゲットが就寝していたため、三十分遅れて作戦を決行することとなった。
我らが店内へと侵入すると、まだ寝ぼけていた女神様はとっさにターゲットを背中に隠しつつも、困惑した様子だった。護衛騎士の二名もこの時点では動きを見せず、作戦の第一段階は無事完了。第二段階へと移行した。
女神様及びターゲットに対して要求した内容は、以下の通りである。
・お願いします! 姫様を刺さないと僕らこの訓練終われないんです!
・この訓練を終了していない部隊、もう僕らだけなんです!
・こいつなんか実家が騎士だから、今月中に訓練を終わらせないと勘当するって言われてるんです!
・少しだけでいいんです! 先っちょだけ! 先っちょだけ刺させてください!
これらの要求は、全要員による一斉土下座と並行して行われた。
なお、本作戦により女神様は激しく動揺。ターゲットに対して幾度も相談を繰り返す様子が見受けられた。
女神様の無力化は実質的に成功したものの、護衛騎士二名の手により作戦に関わった要員は即座に無力化。その後全要員が川の中へと沈められたことで、本作戦は終了した。
女神様の講評
今回はさすがに驚きました。そちらにも色々と事情があることはわかりましたが、私にはどうすることもできません。言葉だけで恐縮ですが、頑張ってください。
あと女神はやめてください。もう特定指定民間人でいいので、これ以上変な名前を私につけないでください。
カルロ・エヴァンス護衛騎士のコメント
お前ら騎士舐めてんのか。次やったらぶっ殺すぞ。
リオン・ウィンター護衛騎士のコメント
笑った。
騎士団長のコメント
本作戦の参加者は全員反省文の上減給とします。
それと、実家に問題を抱える騎士は後ほど私の下まで来なさい。助けにはなれると思います。
総評
すいませんでした。
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第三十三次暗殺訓練報告
当作戦報告書は、シルファール姫(以下、ターゲットと称する)の訓練用護身魔道具の作動を目的とする、第三十三次暗殺作戦の顛末を記したものである。
作戦概要
前回作戦は大失敗であったが、敵勢力の部分的な無力化に意義があることを証明したという面もあった。当作戦ではそこに着目し、護衛騎士の二名を無力化することに主眼を置いた。
護衛騎士を無力化する手段として、酒を用いた接待により仲間へと引き込むことを企む。本作戦の結果を持って次回以降の作戦を立案するため、今後の作戦については一旦保留とする。
実行記録
失敗。
護衛騎士への接待は行われたものの、交渉に失敗し仲間へと引き込むことはできなかった。なお、接待は四次会まで続き、大盛況の中で幕を下ろした。そういう意味では成功と言える。
特定指定民間人の講評
なんで私は他人の飲み会報告を読まされてるんですか。
カルロ・エヴァンス護衛騎士のコメント
楽しかったからまたやろう。
リオン・ウィンター護衛騎士のコメント
目的は悪くないが手段が悪い。もっと家族を誘拐して脅迫するとかあったのでは。
騎士団長のコメント
これ仕事だってこと分かってます?
総評
現在、当作戦の第二回を立案中。関係各位には追って連絡する。
騎士団長のコメント2
作戦外でやりなさい。後、第二回は私にも声をかけるように。
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第三十四次暗殺訓練報告
当作戦報告書は、シルファール姫(以下、ターゲットと称する)の訓練用護身魔道具の作動を目的とする、第三十四次暗殺作戦の顛末を記したものである。
作戦概要
当作戦はこれまで実施しなかったアプローチからの暗殺計画を考案するために、各種新兵装の有効性を実地にて試験することを目的とする作戦郡である。
第一回となる本作戦では、目に見えない気体を使用した暗殺方法を提案する。霧状となった麻痺毒を道具屋クローバー(以下、敵拠点と称する)内部に噴霧することで、敵拠点内部の敵をまとめて無力化することを試みる。
実行記録
失敗。
正面入口から毒霧を封じ込めた簡易的な魔道具を投擲し、炸裂させることには成功した。だが、例の娘(以下、特定指定民間人と称する)が何らかの魔道具を発動すると、ターゲットを中心として風が放たれた。
毒霧が全て敵拠点外へと排気されたことを確認し、当作戦は終了と判断された。
また、本作戦はその性質上、特定指定民間人の講評は求めないものとする。これについては事前に騎士団長より許可を頂いている。
騎士団長のコメント
今回は珍しく真面目じゃないですか。どうしたんですか?
総評
飲み会の席で貴方に散々怒られたからです。覚えてないのですか。




