第068話 数分間の焦り
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屋上の扉は案の定開いていた。
誰かがいるのかと思い、慎重になって覗き込むが人影は見えない。
「誰もいないのか。もう一人ぐらい配置していると思ったけどな。」
「いない訳ないんだよねー。」
扉の上から声が聞こえる。
それも聞いた事のある女子生徒の声。
「深澤先輩もやっぱりそちら側なんですね。」
「いやぁー、やっぱり見られてたかぁー。」
御城と深澤先輩に関わりがあるようには思えなかった。
後輩の立場である御城からわざわざ接触するはずはないので、自ずと深澤先輩からのコンタクトだと判断出来る。
そして、御城に悪知恵を吹き込み実行させて場を見出す。
彼女の狙いはそれだったのだろう。
「一年に流れてた噂はアンタが仕込んだんだろ。」
「バレバレだね、名探偵くん。薔薇姫を孤立させる為にやったんだけど、ちょっと噂のレベルが低かったねー。彼には嘘でも良いからエグいのを入れるように言ったんだけどさ。」
「アイツにも少しの良心があったのかもな。」
「あははは!まさか、まさか。自分が噂を広げた元凶だと知れたら立場が無くなる。だから、軽い悪口に逃げた臆病者だよ。」
「自分の駒にも厳しいタイプだな。」
「ただの使い捨てだからね。」
次から次へと極悪非道な言葉を並べやがる。
どれだけ顔が整っていようとこれだけ性格が悪ければ、聞くに耐えないな。
そして、まだ彼女に対して疑問が残る事が一つ。
あの日に恋愛支援部に顔を出した事だ。
華や俺の顔を確認しに来たのか、それともいざとなったら凛を脅しに使うつもりだったのか。
返答次第では例え女であろうと容赦はしない。
「どうして、あの日恋愛支援部に顔を見せた。」
「あの日?・・・あぁ!あれは普通に恋のお悩み相談だよ?ウチだって恋する乙女なんだから可笑しな事じゃないでしょ?」
全てを鵜呑みにする気にもなれないが、本当にそうだとすれば宮道先輩のことが好きと言う事か。
それもかなり熱狂的と言う感じがする。
「宮道先輩を一目見た時からビビッと来たんだよね。あの幸薄そうな顔と、浅そうな考えが滲み出てる感じが。」
「人の趣味をとやかく言うのもどうかと思うが、中々変わった趣味だな。」
「余計なお世話だっての。てか、探してるのあれでしょ?」
親指を立てて後ろを指差す。
そこには、怪しいボストンバッグが一つ置いてある。
「打ち上げまで残り三分くらいかなー。」
残り時間は少ないようだ。
急いであれを解除しなければ。
「だめだめ。どうやって、天竹突破して来たか知らないけど、ウチも時間稼ぎぐらいはするよ。」
こんな近くで時間稼ぎしてたら一緒に巻き込まれて死ぬぞ。
まだ恋愛したい年頃のはずなのに命を無駄にするなよ。
「どうにか通してくれないか。」
「無理だねー。どうしてもって言うなら力尽くでどうぞ?」
言い方が悪くなるが相手は女だ。
いくらなんでも身体能力に差が生まれるはず。
時間ギリギリでは解除が間に合わないことも考えると一分で片を付けたい。
とりあえず、このまま横を突破出来ないか試みることしよう。
「あちゃー、これってウチ舐められてる感じかな!」
横を通り過ぎようとした瞬間に、腹に目掛けて強烈な蹴りが入る。
俺が漫画の主人公なら華麗に避けて反撃も出来たかも知れない。
現実は、モロに喰らった一撃のせいで立ち上がるのも辛い。
「女だからって舐めて相手するからそうなるんだよ。これも勉強だね。」
「綺麗な蹴りが決まった所に悪いが、パンツ見せてくれたのはサービスか?」
俺の皮肉で顔を真っ赤にしてスカートを抑える。
ちょっと非道な戦術かも知れないが、今後意識して少しでも動きにくくなってくれたらラッキーだ。
「エッチ。でも、残り時間は一分切ったぐらいだよ。」
やばいな。もうそんな時間か。
考えてる暇なんてない。
止められる可能性だって、十分あるがそのまま鞄の近くまで走った。
深澤先輩は、黙ってそれを見届けて来る。
もう時間がないから手を下すまでもないって事か?
鞄を開くと深澤先輩の言った通り、タイマーに残り三十秒と表示された爆弾があった。
剥き出しになっている赤と青のコード。
どっちを切れば止まるのか。
ヒントらしき物は全く見当たらない。
適当に切ってみるなんてことしたら、半分の確率で爆発だ。
どうすれば正解なんだ。
そんな迷いすら許さないと言わんばかりにタイマーは進んでいく。
残り十秒。
こうなれば、ヤケクソになるしかない。
鞄を両手で持ちフェンスの近くまで走った。
そして、その勢いのまま空中へ放り投げる。
せめて、爆破するなら被害を最小限に抑えられる場所にするべきだと判断した。
タイマーはゼロになりる大きな音を立てて爆発する。
しかし、俺の想像していた爆発とは多少異なる。
色鮮やかな円を描く綺麗な花火が打ち上げられていた。
「なんだよあれは。」
「あははは!花火知らないの。」
「そう言うことじゃねーよ。」
「ちゃんと警告したはずだよ。花火を打ち上げるって。」
ギリギリまで通さなかったのは、時間ギリギリになったら外に投げ捨てると予測していたからなのか。
鬼龍院の策の上でまんまと踊らされたという訳だ。
「さっさとここから離れた方が良いよ。今の花火の音を聞いて、先生達が向かってるから。」
「言われなくてもそうするっての。」
必死になって、階段を駆け降りる。
途中、教師達とすれ違った。
深澤は動く気配が無かったので、そのまま残っているなら教師達に事情聴取されるだろう。
俺の名前を出すのかどうかは分からないが、そうなれば少なくとも彼女は停学状態だ。
「これでひとまず片付いたってことで良いのか。」
一息つこうとしていると電話が鳴る。
相手は華からだった。
報告も兼ねて電話を取ると、華の勢いに押される。
『もしもし!陽太、今の音って!』
「めっちゃ普通の花火だった。どうやら、俺達が焦っているのを見て、楽しんでたみたいだな。」
『ただの花火か。良かったー。巻き込んで悪かった。』
「気にすんなよ。とりあえず一件落着ということで、残りの藍連祭を楽しもうぜ。」
『そうだな。それじゃあ、また後で。』
電話の最後はいつも通りの声色に戻っていた。
彼女自身も責任を感じて押し潰されそうになっていたのかもな。
それを救う事が出来たのなら、大活躍だったと言える。
教室が屋上に向かって、五分もしないうちのこと。
校内放送が流れる。
『ただ今、花火が打ち上げられましたが、学校側の用意したサプライズですので、ご安心して引き続き藍連祭をお楽しみください。』
この場を収めるための迅速な対応だ。
理由付けも納得の出来る物になっている。
だからこそ、現場にいた俺には異様に感じる。
あれだけの教師が屋上に向かっていたのに全て言いくるめられたのか。
生徒一人に。
いや、そんなはずはない。
だとしたら、蛇龍門の裏には相当な権力者が潜んでいるのかも知れない。
底知れない恐怖に怯えながらも、そろそろ舞台に衣装や小道具を運んだりする時間なので、教室へ向かう。
蛇龍門に好き勝手されて忘れていたが、メインはこっちだ。
練習して来た成果を発揮する。
ありきたりだけど、シンプルな目標を掲げた。
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