第059話 意外と時の流れは早く
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何か起こるのではないか。
そんな予想とは裏腹にただ時間だけが経過していく。
日を進める毎にクラスは慌ただしくなっている。
指示を各所に飛ばしているのは、御城、委員長。
たまに裏方をまとめる役として真が動く事もあるが、それはごく稀。
「競い合っているというよりは、互いに補い合ってる感じがするな。」
「そうですね。最近はウチに話しかけてくる事も少なくなったし、めでたしめでたしですよ。」
「そんな簡単な話とは思えないけどな。それに次の被害者は生まれてしまってるみたいだぞ。」
俺が目線を送った先には、一人の女子生徒。
委員長のことを睨んでいるのが、こんな遠くからでもはっきり分かる。
浅間、お前は誰にでも噛み付くのか。
残りは一週間程度。
最終日へ向けてラストスパートを掛けている者達の邪魔だけはしないでくれよ。
いや、もう既に遅かったか。
他の生徒には分かりにくくだが、委員長の邪魔になる位置を確実に陣取っている。
そのまま振り返って歩き始めれば、確実につまづいてしまうな。
俺が注意するのでも良かったけど、残念なことに休憩中の生徒に練習の再開を告げる為に動き出そうとしていた。
何が起こったのかも分からないようで、声を出ないままに尻餅をつく。
立った状態からいきなり転んだので、下手をすれば尾てい骨を骨折や、庇った時に腕を痛めた可能性だってある。
みんなの視線は委員長の安否を心配するものばかり。
「あっ!ごめん!大丈夫!!?」
うわぁー、すげー。
ここまで来れば感心の領域に達する。
あれを本番で出来れば、他のクラスを圧倒する演技力として評価されるだろう。
あくまで故意ではないとアピールする浅間。
委員長は後ろを向いていたので、これが故意なのかどうかなど分からない。
それよりもまず委員長の性格上、クラスメイトの浅間を疑うという行為自体が選択肢として浮かばないはずだ。
「いやいや、私が周りが見えてなかったからだよ!こっちこそごめんね!」
「そんなことないよ。私が悪かったから。立てそう?手貸すよ。」
差し出された手を素直に掴む委員長。
俺はてっきり性格の悪い浅間のことだから、手が滑ったとか理由を付けて再度転ばせるのかと思った。
手を握り返し委員長を起き上がらせた浅間は、委員長に呟いた。
「あんまり御城と一緒にいるとこ見ると嫉妬で潰しちゃうかも。」
今までで見て来たどの恐怖映像よりも恐ろしい。
「聞いたか今の。」
「口が動いたのは見えましたけど、何言ってるかまでは。」
「そうか。聞こえなくて正解だぞ。夜とか寝れなくなるから。」
この場では、いつも通りに冷静な様子を見せる委員長。
あの言葉で取り乱したりすれば、どちらにせよ浅間の言う潰しが始まってしまう。
こういう時、正しい人間ではなく、悪意をもった人間の方が強い。
恐怖でクラスを支配すれば、誰も助けては来れないからだ。
「大丈夫だったみたいだな。よし、練習再開するぞ。凛ちゃんもこっち来て。」
手招きして凛を呼び出す。
ちなみに俺も隣に居たのだけど、一切声を掛ける素振りは見られなかった。
「なーんか、まだ凛のことお気に入りみたいだな。」
「そんな他人事みたいに言わないでくださいよ。」
「凛に絡むの少なくなったのって単純に忙しくなったからじゃ。」
「いやいや、違いますよ・・・多分。」
根拠はないらしい。
確かに下手に手を出してこない分、解決すべき問題としては優先度が低い。
勿論、いざとなったらすぐにでも動くけどな。
目の前にある問題は、明らか委員長潰し。
とはいえ、委員長とは深い仲じゃない。
俺も他の生徒同様に傍観者を続ける手もある。
いや、それは死んでもやってはいけない気がする。
俺の周りにいる奴らは、関わりがあろうとなかろうと困ってたら助ける奴らばかりだ。
そんな奴らと一緒に笑い合う為に俺は動かなければならない。
そんな気がしてならないのだ。
「あれ、私台本どこやったかな。」
机の引き出しや台本読みをしていた周辺を探している委員長。
どうやら、台本を無くしてしまったらしい。
「良いから始めようよ。セリフだって覚えてるんでしょ?」
「セリフは覚えてるけど、細かい確認とかするから。」
「台本ないのにそんなこと言ってても仕方なくない。」
「・・・でも。」
「今回は俺が中心に確認していくから、委員長は演技に集中してくれ。」
この言葉を聞いて委員長は落ち込んでしまう。
残り期間が少なくなって来た中で、台本を無くすというミスはありえない。
それが本当に委員長のミスであるなら反省は必要だろう。
クスクスと影で笑う悪魔がいるからな、俺達のクラスには。
どこからどう見たって隠したのは浅間だ。
いや、隠しただけならまだ探せば良いだけ。
処分されていた場合は、新しく台本を印刷する必要がある。
台本は覚えていたとしても変更等を加えるのであれば必須。
それを分かっていて浅間はこんなことをしている。
これ以上は、浅間の好き勝手にさせて委員長の精神を壊す訳にはいかない。
少しばかりだが、助け舟を出してやるべきか。
俺が動こうとした時に、真が既に動いていた。
アイツは人一倍正義感の強い人間だ。
こんな目の前で陰湿なイジメが起きているのに見逃せるはずがない。
「これ使ってよ委員長。俺裏方だから、すぐに使うことないし。」
「柊さんが困ってしまいますよ!」
「良いから良いから。」
遠慮している委員長に無理矢理押し付けて、そのまま自分の作業に戻ろうとする。
「ありがとうございます!」
感謝の言葉を述べた委員長は大事そうに台本を抱えて練習を再開する。
自分の思わぬところで失敗に終わった浅間は、もちろん悔しそうにしていた。
練習が始まると今までの空気とは一変して真面目な空気感。
この時ばかりは全ての柵から解放される。
覚えた台本を暗唱しながら、動きや表情に細かく訂正を入れていく。
後はどれだけ完成度を高める事が出来るかの勝負か。
「はーい、今日はこの辺で。日数が少なくなって来たから各自でも練習するようにね。」
辺りが暗くなるまで行われた練習もやっと終わり。
解放感と共に教室を出る。
そういえば、真も一緒に帰らないかと誘ってみたが、何か用事があるらしい。
藍連祭の日程が近づいているのに、他の予定が入ってるとは忙しい奴だな。
まぁ、いつも通り一人で帰るか。
「陽太くん、ちょっと待って!」
「そんなに慌ててどうしたんだよ凛。」
「いや、ただ一緒に帰ろうと思っただけだよ。でも、教室にいなかったから帰っちゃったのかと思った。」
連絡の一つくらい送ってくれば、教室で待ってたんだけどな。
いや、携帯見るかどうか自分のことながら怪しいし、直接探す方が正解か。
「あれ?陽太と凛ちゃんだ!」
もう一人、声を掛けてくる人物が。
「今帰るとこだったんだ。そっちは物部と一緒じゃないのか?」
「風香ちゃんなら彼氏と一緒に帰ったよ。今日はデートだって。」
用事があるって言ってたけど、その事だったのか。
部活をやってるので普段遊ぶ機会の少ない二人にとっては大事な用事だろうな。
「じゃあ、三人で帰るか?今から凛と帰る所だったけど。」
「私も一緒に帰って良いの?」
「もちろんだよ!」
中々見ない組み合わせで帰ることになったな。
どんな会話をすれば良いか分からないけど、女子二人だけでも会話してくれるだろうし問題ないか。
そんな考えの下、帰路につくのだった。
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