第058話 弱いと思っていただけで
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もうそろそろ校内から追い出されてしまう時間だというのに、委員長達は動く気配がない。
相当精神的にやられてしまったのだろう。
入学してから今まで誰かクラスをまとめる役が必要な行事はなかった。
だが、いざ藍連祭という大きな行事を目の前にすると、思っていた通りに動けない自分への腹立たしさが込み上げてきたのかもな。
泣いてこそいなかったが元気はない。
それに他の女子生徒の距離が必要以上に近い。
背中をさするなり、手を取るなりして励ましていた可能性が一番しっくり来る。
「委員長、これで元気出してよ。」
真が取り出したのは個包装された飴。
味はレモンだ。
「・・・私の好きな味だ。」
「いやー、最近元気ないなと思って今度渡そうと思ってたんだ。でも、今渡した方が良さそうだと思って。」
よく見てるな。
御城に注目しすぎて、委員長がどうとか考えていなかった。
恐らく、俺だけでなくクラス全体が。
それなのに、真は委員長の落ち込んでいるのを気付いていただけでなく、労いの物を用意しておいたなんて。
これがモテる男とそうでない者の差か。
「ありがとう。これから元気出して頑張らないとね。」
「無理する必要なんてあんの?」
「無理なんて!・・・いや、してるかも知れないけどクラスの為には必要でしょ。」
「そうよ!てか、佐倉。アンタは何もしてないのに善井さんの気持ちわかるの?」
あっ、委員長ってそんな苗字だったのか。
覚えて損しない豆知識だな。
「藍連祭は一年間の行事の中でも記憶に残り易い重要な行事。だから、クラスのみんなの為にも私が頑張らなくちゃ。って感じだと思う。」
「・・・。」
答えは沈黙で返された。
肯定も否定もしていないが、この場面においては肯定と捉えておこう。
「でもさ、それで委員長が無理する必要あるの?だって、みんなの中には委員長自身も含まれてないといかないだろ。」
「そうそう、これには俺も賛同するね。気張らずに楽しかったと思える選択をして欲しいよ俺達は。」
「確かに今は御城が中心となって準備してるけど、普段はどうだ。集会の時、真っ先に指示を出して列を組ませるのは?話し合いになった時、意見をまとめる役割は?他にも俺達が気付いてないだけで、色んな委員長としての役割をやり遂げて来ただろ。」
「そうだよね。ちょっとだけ元気が出てきた。・・・また、明日もよろしくね。」
口ではそう語るが、帰り際の背中は今まで見てきた委員長のどれよりも小さい背中だった。
「珍しくお前にしては熱く語ったな。」
「委員長がクラスのリーダーになってもらわないと困るからな。」
「なんで?御城が頑張ってるから良いじゃねーか。わざわざ委員長の負担になるようなことを言わなくて。」
「真が委員長と全く同じ立場なら、自由に楽しんで良いと言われてその通りにするか。」
「いや、それでもクラスの役に立てることはないか探すな。てか、いよいよ要らないって言われてるようなもんだろ。」
「そうだろうな。だから、俺はそう言ったんだ。」
「・・・良い加減遠回しな説明はやめろよ。」
はっきりとしない物言いに苛立ちを覚えたのか、睨み付ける。
委員長に負担が掛かると知っていて焚き付けたんだ。
いくら親友とはいえ、その行為は許せなかったのだろう。
「問題なのは委員長じゃなくて、御城の方だ。アイツを止めることも出来たら、委員長の尊厳も取り戻せる。一石二鳥だろ。」
「御城が何かあったのか?」
俺は御城が教室で話していたことと、角に蹲っていた凛の話をする。
他の生徒には話すのを躊躇うが、真はそこまで口が軽い男ではない。
誰かに協力してもらうことを考えた時に、最も最初に思い付いた生徒だ。
話を真剣に聞いてくれる中で一通り説明が終わった。
「そいつは大変なことになってるな。嫌な奴とは思ってたけど、御城の悪評は聞いたことが無かったし。」
「クズ以外の何者でもないよアイツは。」
「だとしたら、星海さんに早く伝えた方が良いんじゃないか?」
「その伝えるタイミングを迷ってるんだよ。ただでさえ、浅間とのゴタゴタがあるのに、余計な負担にならないだろうか。」
「いや、そんなこと言ってられないだろ。伝えるなら早い方が良い。」
真に相談した結果、御城についても伝えることにした。
メッセージで送るのは簡単だけど、会って直接話した方が良いと思い、まだ学校にいるか確認する。
返信は間を置くことなく来た。
どうやら、今学校を出たばかりらしい。
待ってもらうのは申し訳ないので、走って追いつくことにした。
「ありがとう、真。行ってくるわ。」
「おう、頑張れよ。」
短い応援だが、込められた思いは伝わってくる。
鞄が邪魔で走りにくいけど、全力で走った。
息をするのも苦しくなるほどに全力で。
すると、道の途中で凛の姿を見つけた。
特徴的なパーカーを着ているおかげで、少し離れた所からでも凛だと分かる。
誰かと一緒にいるかもと思っていたが、どうやら一人らしい。
「おーい、凛。ハァハァッ、やっと・・・見つけた。」
走った後なので、言葉が途切れ途切れになる。
「えっ、陽太くんだ。走って来たの?言ってくれれば待ってたのに。」
「流石に待たせるのは悪いと思って、走って合流することにしたんだ。」
「もしかして、何か用でもあった?」
察しが良い凛から話を聞かれる。
俺から切り出そうと思っていたので、少しだけ間が生まれる。
しかし、覚悟を決めて御城の件について話した。
最初に俺が聞いた事から事細かく。
全部話した時には、勝手ながらに晴れやかな気持ちになる。
ようやく本人に伝えることが出来たのだと。
しかし、問題は凛がどう思っているかだ。
「そうなんだ。だから、こんなややこしいことになってたんだ。」
「すまない。けど、何とかしようとは思ってるから安心してほしい。」
「いやいや!陽太くんが謝ることないよ!御城さんに、ウチが軽く見られてた事がショックだっただけ。しかも、勘違いで浅間にも嫌われてるし散々だなー。」
「本当だったら、もっと怒って良いんだぞ?御城のせいでこんなに事が大きくなってるんだから。」
「良いの。それにもしも何かあったら、陽太くんが助けてくれるんでしょ?」
「当たり前だ。俺だけじゃない、きっと華だって、糸井先輩や七瀬先輩だって。」
凛にはたくさんの友達が出来た。
困った時には彼らも力を貸してくれるだろう。
だけど、クラスの問題はクラスで解決するのが普通だ。
凛にはなるべく負担を掛けないように解決を目指す。
「そっか。ウチには、そんなにも助けてくれる人がいるんだ。良かった。」
「凛の人柄が良いから人が集まるんだろ。」
「ウチを褒めてもゲームの攻略情報しか出ないよ?」
「ちょっと聞きたくなるな。」
笑みを浮かべる彼女とそれを見ながら帰る俺。
ただ、この時間が消えてしまわないように。
守らないといけない。
「俺こっちだから。またな。」
「ありがとうね、話してくれて。裏で知らない間に解決されるより、こっちの方が嬉しいから。」
「まだ、何にも出来てないけどな。」
「ううん、大丈夫。何かあったら言ってね、ウチも頑張るから。じゃあ、また明日。」
手を振ってくれる彼女へ手を振り返しながら、帰る彼女の背中を見届けた。
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