第057話 返り咲く悪
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昨日怒って教室を出て行った御城が、どんな顔で来るのか。
そればかりを気にしていた。
もしかすると休む可能性だってある。
そうなれば、クラス全体で士気が下がるだろう。
「おはよー!昨日?あー、怒ってないって。大丈夫大丈夫!」
寝たら忘れるタイプなのか。
友達との会話を盗み聞きするに、元気そうなのは確認出来た。
それに昨日のことは気にしていないようだ。
教室の雰囲気が心無しか明るくなる。
「みんな聞いてくれ!昨日はちょっと焦りすぎた。本当にすまない。でも、どのクラスにも負けたくないのは本当だ。今日から張り切って行くぞ!」
心を入れ替えたように綺麗な言葉を吐く。
この一連の流れだけを見た生徒にとっては、彼の成長物語でも見ている気分だろうな。
でも、奴には裏の顔がある。
どうしてもあの放課後の言葉が引っ掛かり、彼の姿が濁って見える。
しかし、これで藍連祭においてクラスの主導権を握ったのは、委員長ではなく御城になった。
一時的か、それとも今後の行事も彼が仕切るのか。
それは今回の藍連祭の結果で大きく変わる。
厄介なことになったな全く。
成功させたい気持ちとアイツにクラスの主導権を渡したくない気持ちの半々だ。
陽太がもっと積極的に前へ出るタイプならアイツもリーダーに仕立て上げるのに。
思いとは裏腹に御城を讃える拍手と取り戻された活気。
御城が何を考えているのか知らないが、恐らく思い描いた通りに進んでいるだろうな。
「さて、練習を始めよう。昨日考えたんだけど、ひとまず欲張らないで、台本通りに進めて行こうと思う。そして、基礎が完璧になってからアレンジしていこう。」
おいおい。それ、昨日の俺と全く同じこと言ってるじゃないかよ。
けれど、そんなの他の生徒は知った事ではない。
今一段と輝き始めた彼の成長の方が今後のクラスにとって大事に見えるから。
「あれって、昨日陽太くんが言ってたよね。」
「気にすんな。今のクラスにはアイツが必要だ。それに、格好付けてるけど言ってることは普通のことだからな。」
覚醒したリーダーの登場はやはり必要だった。
どこか必要な要素が足りていなかった委員長とは違い、確実に決断力がある。
トライアンドエラーの精神で突き進む。
指示がある分、手持ち無沙汰のクラスメイトはおらず、昨日とは段違いに忙しくなって来た。
「ぼっとしてないで、こっちで練習始めるぞ。」
「あぁ、悪い急ぐ。」
呼ばれたのでみんなの所へ向かう途中、すれ違い様に御城が呟いた。
「お前を潰す。藍連祭で確実にな。」
「どういう「さぁ、練習練習。昨日の遅れを取り戻さないと。」
言いたいことだけ言って逃げやがった。
知らん間に恨みが俺に向いていたか。
元から凛と仲が良い俺をよく思っていなかっただろうが、今になってより顕著に嫌悪感を覚えたようだ。
急に人が変わったのも何かを隠すための演技なのか。
既に彼の舞台に立たされているのだとしたら、素直に乗ってやるしかない。
哀れにも、醜くもアイツの台本通りに動く。
そして、完璧なタイミングでアイツの腹黒さを暴いてやる。
凛を巻き込むなんてこと絶対にさせない。
お前の企みは失敗で終わらせる。
「頑張るからな凛。」
「え?演技を頑張るの?それならウチも負けないから。」
それで良い。
知らないまま藍連祭にだけ集中してくれ。
◇◆◇
放課後も練習に充てるクラスが増えて来た。
辺りが暗くなって教室の明かりは付いたまま。
俺達のクラスも遅くまで練習する日が多い。
それも勿論、御城から提案して来たことだ。
参加は自主性だけど、なるべく協力して欲しいと。
今は放課後の時間一杯まで練習した帰り。
トイレに寄ってから校舎を出ようとすると御城が誰かと話しているのが見える。
それもいつもの取り巻きや浅間ではない。
確か、名前は深澤先輩だったか。
「ーーー。簡単でしょ?」
「簡単だけど、それで成功するのかよ。」
何かの作戦会議をしているようだけど、会話の内容を聞く限り作戦内容は伝え終わってるな。
深澤先輩に関しては情報が少ないけど、御城と一緒に何か企んでいるのだとしたら褒められたことではないだろう。
「成功するかじゃなくて、成功させるの。お・わ・か・り?」
「チッ。美少女相手でもアンタは好きになれなさそうだぜ。」
「あららー、褒め言葉?」
あの御城にさえ嫌がられるとは、どれ程やばい奴なんだよ。
話を盗み聞きしている間にも彼らボロボロと情報を溢している。
このまま行けば、御城の企みを事前に阻止できるかもしれない。
俺はこの時、背後から近付く人影に気付かなかった。
変な薬こそ飲まされなかったが、声を掛けられて二人の監視から目を離してしまう。
「おーい、何してんだ?誰かいんのか?」
「静かにしろよ。バレたらどうすんだ。」
「バレたらって誰に?」
「誰にってそれは。」
チラッと先程見ていた場所を覗くと誰も居ない。
真の声の大きさで気付かれたか?
だとしても、こんな一瞬で姿が見えなくなるとか瞬間移動でも使えんのかよ。
「なんか分からんないけど、帰るなら帰ろうぜ。」
このまま外に出ようとする真。
「ちょっと待てよ。俺喉乾いたからジュース買おうぜ。」
もしもどこかで隠れたのだとしたら、慌てて外を探しに来る生徒がいないか見ているはずだ。
この状況で俺と真が出ていけば、怪しまれるのは確実。
あえて堂々と出て行く選択肢もあるが、そもそも顔を見せない方が得策だ。
「えぇー、でも俺は喉乾いてないしなー。」
なんでゴネるんだよ。
友達が喉乾いたって言ってるんだから自販機くらい付いて来てくれ。
・・・いや、俺も面倒だなと思ってしまうかも。
仕方ない、ここは対価を払っておくか。
「なら、奢ってやるから行こうぜ。」
「まじ!?ラッキー!ちょうど喉乾いて来たかも。」
「その数秒で乾いたのだとしたら、風邪かなんかだから病院行け。」
こんな感じで真はいつも調子だけは良いな本当に。
しかし、文句も言ってられない。
今回は素直に付いて来るだけ有難いと思うことにしよう。
自販機に行くと人が数人いるのを見かける。
それもどうやら知らない顔ではないようだ。
同じクラスの委員長とその他女子生徒数名。
練習が終わりに休息でも取っていたのかもな。
こちらに気付いてはいるみたいだが、わざわざ声を掛ける仲でもないので気まずそうにしている。
俺一人だったら、余計気まずかっただろうけど横に真が居て助かった。
「委員長達も喉乾いたのー?」
「そんな所かな。後はみんなに相談って感じ。」
普段はお気楽で人の懐に入り込むタイプの真を深く詮索することはしなかった。
相談内容なんて聞かなくても分かる。
自分のクラスでの在り方について迷っているとかだろう。
本来クラスを引っ張って行くべき立場にある委員長という役職。
その役職に就きながら、仕事を他人に奪われてしまったのだから落ち込むのも頷ける。
俺の本音を言えば、彼女にもう一度クラスをまとめるリーダーに返り咲いて欲しいのだが、今ここでそれを言えるほど最低な人間になれなかった。
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