第052話 被害者は誰か
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人は常に何かしらの演技をしている。
本来の自分というとは、本人ですら分からない。
それほどに自然に日常へ溶け込み演技も、いざやってくれと言われるとままならない。
何が良いたいかって?
こういう事だ。
「佐倉くん、もうちょっと棒読みなんとかならない?」
「棒読みになってたか。俺は精一杯やってつもりだけど。」
「いやいや、ロボットみたいだったよ。」
総監督を務める委員長の指導は厳しい。
特に俺は酷い演技らしく、何度も何度も訂正が入る。
確かに好きで舞台に立つ訳ではないが、それが理由でわざと下手にしているなんて子供の様なことはしない。
寧ろ、台本を二ページぐらいはスラスラ読めるほど、暗記したぐらいだ。
「ちょっと休憩しようぜ。このまま続けても疲れるだけだろうし。」
御城がストップを掛ける。
序盤とラストだけのコイツが仕切るのは解せないが、ありがたい提案だ。
ほぼ、俺の個別指導と言えるぐらい喋ったからな。
他の生徒の練習にならないのが本当に心苦しい。
「大丈夫ですか陽太さん。」
「大丈夫ではないかもな。もっと練習しておかないと恥をかく事になりそうだ。そんな事よりすごい上手だな凛は。」
「そんなことはないですよ。」
口では否定しているが顔が嬉しそうだ。
あの時もメッセージで言っていたが、本当にこういうのに興味があるのかもしれない。
「ちょっと良いかな凛ちゃん?」
「え、あの。・・・ウチですか?」
「そうそう!ちょっと演技のことで話し合いたいことがあってさ。」
俺と凛の間を割って話しかけて来たのは御城。
誰に対してもフレンドリーな性格なのかいきなり下の名前で呼んでいる。
その陽気さが怖いのか、凛はちょっと距離を取って話を聞いていた。
「でも、休憩中なので後からでも。」
「せっかくの文化祭なんだし、みんなと仲良くなりたいんだよ俺。だから、雑談とかも兼ねてだからさ。」
なんとなく、役決めの時から感じていたが御城は凛の事を狙っているのだろう。
文化祭の準備が始まってから、明らかに凛にだけ話しかけている回数が増えている。
他の舞台組に話し掛けているなら分からなくもないが、一人を集中的に狙うのは何か理由があるはず。
なんて、ただの勘違いの可能性もあるけど。
「それなら陽太さんも一緒に行きましょうよ。みんなと仲良くなるべきなのは賛成ですから。」
「ちょっと気になってたんだけど、二人って付き合ってたりすんの?良く話してるの見るけど。」
「えっ!?いえいえ!そんな事ないですよ!」
両手を全力で振って否定する。
勘違いされたくないのかも知れないが、全力で否定しなくたって良いじゃないか。
本当のことだけど、少し、いや、かなり傷付く。
そんな事より俺の話題なのに、だんまりも不自然なので俺も一言声を掛けておく。
「部活が一緒なんだからな。俺が友達少ないから慈悲で話し掛けてくれてんだろ。」
「ふーん。そいう事なら良いけど。」
「まぁ、佐倉も来いよ。みんなで仲良くなってた方が一致団結して文化祭臨めるし。」
なんだか、面倒な事に巻き込まれているかも。
言葉だけ聞けばすごい良い事を言ってるんだけど、口角はピクリともしていない。
なんなら、目で邪魔だよって言ってるのが伝わる。
これは、俺の遠慮待ちなのか?
「そう言ってくれるなら参加しようかな。」
あくまでも、俺のノリが悪いと思われない為に参加するんだ。
決して、友達が欲しいとかじゃない。決して。
参加の意思を見せると若干顔が不服そうだ。
嫌なら誘わないければ良いだろ。
昔の嫌な思い出が蘇るから止めろよ。
休憩中だった舞台組は小さな円を作って雑談を始めた。
会話の主導権を握っているのは委員長と御城で、そのほとんどが余り喋るのが得意でない生徒への質問攻め。
「佐倉は休日とか何してんだよ。」
雑な質問が俺に向かって投げられた。
何をしていると言われても特別決まった事をしている訳でもない。
ただダラダラと過ごしているだけ。
それを形容するのも難しいが、大方趣味の事を語れば良いのか。
趣味と言えるものは少ないがゲームやマンガ、アニメなどのサブカルチャーには強いと言える。
在り来たりな答えにはなってしまうが、そう答えよう。
「ゲームとか漫画とか、とにかくインドアだな。」
「なーんか、普通って感じだなー。いや、良いんだけどさ。」
「ぷっ、ちょっと酷くなーい御城!可哀想じゃんか。」
カバーになってないですよ、そこの貴方。
それどころか俺の痛ましさがより顕著になってるんですけど。
傷口広がり過ぎて心臓見える勢いなんですけど。
「それでさー!凛ちゃんはどうなの?何してんの?」
明らかに声のトーンが上がった。
場を盛り上げようとしているのか、個人的な感情なのか。
言うまでもなく、後者だな。
だが、俺の事を馬鹿にした罰が今ここで執行される。
「あの、・・・ウチもゲームとかしてます。」
「あはは!ウケる!女子でゲーム好きとか珍しくなーい?」
「まぁ、でも最近ゲーム好きな子とか増えてるんだし、俺も好きだよゲーム。」
あからさまに凛を庇う。
これで好感度調整もバッチリだと思ってんのか?
俺の時に遠回しに馬鹿にしてただろ。
それに、先程から合いの手を入れている女子生徒からすれば面白くない。
せっかく声を大きくして、他人を落とす作業をしていたのにな。
どんな理由でそんな事をしていたか分からないが、ちょっとだけスッキリした。
「そんな話よりもさ、佐倉はもうちょっと何とかなんねーの?棒読みはさぁー。」
「それは私も同意見です。あの時は仕方なく多数決を採ったのに、当てつけのようにわざと下手な演技されたら困ります。」
「あれはわざとじゃないっての。こっちは真面目にやってる。」
「嘘!私のやり方に文句があったからあんな感じで。」
いつの間にか、俺が責められる時間になってきた。
不運なことに舞台組のメンバーは全てここで話を聞いている。
俺の話と委員長の話、どちらが信じるのかなんて言わなくて分かる。
委員長は耐えきれなくなったのか、涙まで流し始める始末。
あぁ、避けようもなく俺は悪者だ。
女子は委員長に駆け寄って慰めながら俺を睨む。
それを見てニヤニヤしている御城が視界の端に映った。
なるほど、アイツが良からぬ事を委員長に吹き込んだのだろう。
俺の評価を落とす為によくやるぜ。
そんなもの元から無いに等しいのに。
「なんで、こんなことに。・・・ウチのせいで。」
聞こえる声で凛が嘆いた。
これ以上事が大きくなれば、凛が自分を責めてしまうかも知れない。
それだけは何とか止まらないと。
ここで場を収める方法は一つ。
スラスラと無機質ながらも覚えた二ページを朗読する。
文字数にしたら大した事はないかも知れないが、まだ始まって数日。
ほとんどの生徒が台本を見ながらの練習をしている。
「これで本気で取り組んでるって分かったか?演技は確かに下手だけど、そこは根気強く教えて欲しい。」
「台本、覚えてくれたんだ。」
「下手だからより演技に集中出来るようにな。」
「私ごめんなさい。泣いちゃったりして。」
まだ目は赤いが強引に制服で涙を拭う。
敵対してた女子生徒達も委員長を励ます事にシフトチェンジする。
本人は謝ったと言うのに、彼女達は何か謝罪の言葉はないのだろうか。
それとも、ただの第三者のつもりか。
「単なる勘違いだから気にしてない。それより、練習再開しよう。少しでも俺が上手くなるように。」
考える事を少なくする為、逃げるように練習を再開した。
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