第047話 多数決は避けられない
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テストが明けてからの授業は普段通りのものだった。
何か変わった様子がある訳でもなく、ただただカリカリと音を立てながら黒板に書かれていく白い文字を板書する。
シャーペンでノートに写す光景は、今の時間が授業中であることを嫌でも思い出させる。
しかし、今日はいつもと違う時間も。
クラスにとっても喜ぶ者が多い時間だ。
「これから話があるから良く聞いておけ。」
始まった。
何も説明が始まるかなど聞かなくとも知っている。
まだ担任が発言していないのにも関わらず、生徒のテンションは最高潮に。
「静かにしないと本題に入らないぞ。まぁ、知ってる者も多いが近々藍連祭が行われる。」
藍連祭か。何とも安直なネーミングセンスだ。
誰が考えたのか知らないが、どこかのタイミングで変更した方が良いぞ。
「ここからは生徒の自主性を尊重して、学級委員長に進めてもらう。困らせないようにしっかりと聞いておく逆よー。」
自主性を尊重とかどうとか言っているが、決めるまでの工程が面倒だっただけじゃないのか?
「それでは先生に変わりまして、話し合いを進めていこうと思います。まず、一年生についてなんですが演劇をすると言うことか各クラス共通で決まっています。なので、どんな演劇をするのかから話し合いましょう。」
「はい!やっぱり演劇と言ったらロミオとジュリエット!」
真っ先に上がったのは、ロミジュリか。
ありきたりな案ではあるけど外れることも無いだろう。
一から作り上げるよりはよっぽど楽だし。
そして、何より恋愛物ということで演じている本人達が楽しめるだろう。
次に意見が出るのは長いだろうな。
クラスのカースト上位が自信を持って出した案に水を差すことになるのだから。
他の案がある生徒は内心で誰か案を出してくれと願っているはずだ。
ただ、その願いとは裏腹に誰も次の案を挙げる事は無かった。
幸い、委員長も一つの案だけで決めるのはと困り果てている。
俺は携帯を取り出して、真にメッセージを送る。
それ読んで意図を汲み取ってくれたのか、真が手を挙げて発言した。
長い間の沈黙だったので、委員長も普通以上の反応で食いつく。
「何か他の案があるんですね柊くん!」
「いやいや、そうじゃなくてさ。このままだと意見出てこないから匿名で意見出せる様にしたら?」
「匿名ですか?」
「誰にも分からないように紙にでも書いて。ほら、どうしてもこういう場だと視線を集めて緊張しちゃう人もいるだろうし。」
「そうか。それは確かに配慮に欠けていたかも。素晴らしい案をありがとう柊くん。」
「いやいや、それほどでも。」
周囲からは真を褒め称える声が聞こえる。
委員長としても活発に話し合いが進められそうな案が出て一安心だろう。
真が先に座る瞬間、これで良いんだろ?と言わんばかりに俺の方を見て合図を送る。
俺が言っても良かったが、それよりも真が提案した方がスムーズに事を進められると判断したのだ。
実際に俺の意見は正しかったと言える。
瞬く間に作られた小さい長方形の紙。
前の席から後ろの席へと配られていく。
特に意見がある訳ではない俺は白紙のまま提出する。
さて、何人の生徒が自分の意見を出すことが出来るのか。
「はい、これで全部ですかね。一旦これを適当に混ぜてから、開封していきたいと思います。」
「あ、委員長一人だと大変だと思うから板書は俺がするよ。」
副委員長がフォローに入る。
事前の予定では、一人で進めさせられるはずだったのかも知れないが、流石に一人で開封して板書は時間的に難しい。
副委員長のフォローに入る判断は完璧だったと言える。
やはり匿名効果は絶大だったのか、先程の沈黙が嘘だったかの様に黒板には案が並べられる。
その時最初にロミジュリを出した生徒の顔が、少しだけ苛立ちを覚えていたのを見逃さない。
自分の意見が通ると思い込んでいたのに、いきなり掌を返されたように他の案が出てくれば余り良い気分ではないだろう。
しかも、他の案もありきたりでどれを選んでも変わらない物ばかり。
中には、ふざけて書いた物だって存在する。
「さて、ここからは投票タイムに入ろうか。これも先程と同様に紙に書いて貰います。」
さて、俺はどの案にしようか。
一番気になるのは、『おま勇』と書かれた案だ。
誰とは言わないが、俺にはその案を書いた生徒が分かる。
多分、他の人もな。
どんな劇にするのか気になるので票を入れることに。
選ばれるかは別の問題だけどな。
「さて、集計が終わりました。」
この言葉で、教室内は騒がしくなる。
集計が終わったということは何の劇をするか決まっているのだから、早く結果が知りたいのだろう。
「結果は、二十票獲得で美女と野獣になりました。」
結果はロミジュリとは違う物となってしまった。
これには最初に意見を出した彼も怒りの表情かと思いきや、何故だかガッツポーズをしている。
結局、何が目的だったのかさっぱり分からないな。
「異論がある人がいなければ、次の話し合いに進みますよ。」
一拍置いてみたが誰も反論は無いようだ。
仮に不満があったとしても、それが多数決というクラスの意見に打ち勝てるほどの物とは思えないけど。
それにしても美女と野獣か。
確かに良い作品ではあるけど、野獣の衣装や顔の表情は難しい。
学生の演劇でどこまでのクオリティが出せるのか。
笑い者にされない程度に頑張って欲しい。
「それじゃ、早速なんですけど担当決めを初めて行こうと思います。演者を先に決めてから、残りを裏方に割り振って行きますね。」
何をするか決まれば、後はスムーズに事が進んで行くだろう。
俺は自分の狙っている裏方の担当を決める時間になるまで、ぼんやりと窓の外を眺めているだけで良い。
「じゃあ、主役である王子様役が良い人ー。」
「俺やりたい!」
「まずは御城くんね。他にいなさそうなら、彼で決定するけど。」
真っ先に手を挙げたのは、御城という生徒。
ロミジュリを提案していたのも彼だ。
よっぽど演劇が好きなのか、それともただの目立ちたがり屋なのか。
別の狙いがある可能性だって捨てきれない。
いや、それは俺の考えすぎか。
「じゃあ、野獣役は?」
ここで誰も手が上がらない。
魔法が解けた王子の姿はカッコよくて良い思いをするかも知れないが、野獣役はセリフ量も多いので覚えることは多い。
「えっと、これは誰もいないようなので匿名式をまた採用するしかないですね。」
これはひどいな。
誰がなるかも分からず、投票されたら逃げ場はない。
恐らく、普段はしゃいでるカースト上位の誰かがやることになるのだろう。
「結果は、あっ、佐倉陽太くんですね。」
「・・・えっ?」
「一応、圧倒的に票数集めているので。」
何で俺なんだよ。
断るにも断れないと言ったばかりだが、流石に。
「俺は無理だぞ。人前出るの得意じゃないし。」
慌てて抵抗する為に席を立った。
このまま押し切られれば本当に舞台に立つだろう。
「まぁ、でもこればっかりはお願いしますよ。」
「次行こうぜ次ー。」
あり得ないだろ、何で俺なんだ。
野獣役が嫌とかではなく、全生徒の前で演劇をすること自体乗り気になれない。
しかし、多数決が正義の高校生活において、俺に残された選択肢は受け入れることだけ。
あまりに唐突な出来事に言葉を失いながらも、大人しく受け入れろよという視線浴び席に座った。
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