第027話 老いても悩むことは多く
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今日は放課後の部室が静かだ。
誰も言葉を無理には発さずに、各々の時間になっている。
この間買ったラノベでも読もうかと思ったが、生憎持ち歩いてはいない。
あるのは、勉強道具一式ぐらいなもので大人しく勉強をしている。
勉強は好きではないがテストで良い点を取るのは好きだからな。
「偉いわね佐倉くん、テスト勉強?」
「そうですね。テスト、来週の水曜日からなので。」
「本当はもっと前から勉強始めるのが理想だけどやらないよりかは良いわ。ね?華ちゃん。」
勿論、華は勉強なんてしていない。
山積みにした少女漫画を読んでいるだけ。
よくよく見ると前にも同じの読んでいたから、何度も繰り返して読むタイプなのか。
七瀬先輩に詰められてもお構いなしに読み続けている。
一区切りがついたらしく漫画を閉じて、ドヤ顔の反論を始めた。
「先輩達はどっちも勉強してないですよね。人のこと言えないですよ。」
あ、その反論はまずいかも。
「僕は普段勉強しなくても満点取れるからね。授業で一度聞けば忘れないし。」
「あの天才は放っておいて、私は今年受験だから塾にも通ってるし、家でも当然勉強してるのよ。」
「うっ、陽太助けてくれ。」
「勉強しろよ。言っとくけど、今回のテストで赤点取って期末も赤点取ったら夏休みのほとんど補修で埋まるぞ。」
これは噂話に過ぎないが、勉強を普段していない者にとっては十分な効力を発揮する。
華もその内の一人だ。
数秒前までは呑気に漫画を読んでいたのに、慌ただしく片付けた後に勉強道具を広げた。
流石の華も夏休みが無くなるという危険性に恐怖したのか。
直後、部室の扉をノックする音が聞こえる。
いつもなら部長が誰よりも先に扉へ向かうのだが、今日は華が飛び付いた。
「こんにちはー!元気してましたか?」
残念なことに相談者ではなく元気なハイラ先生だった。
顧問であるから部活の様子を覗きに来たのだろうか。
部活という口実を使って勉強から逃れられると思っていた華がガッカリしている。
気持ちは分からないでもないが、顧問の前でその態度は問題があるぞ。
ハイラ先生は全員に座るよう促して、話の続きを始めた。
「今日、相談者を見つけて来ました!時間がそろそろだと思うんですけどねー。」
相談者と聞いて分かりやすく喜ぶ華。
赤点取っても俺は絶対助けてやらないからな。
「ここがハイラ先生の言ってた場所で合ってるかな?」
軽いノックと共に入室して来たのは見覚えのある人だった。
古典・漢文の担当教師である佐藤先生だ。
年齢は詳しく知らないが、失礼を承知で言うならばかなり老いている人だ。
人によっては定年した後も永遠にいるとか、死ぬ事はない不死なのではないかとか色んな噂があるくらいには長く勤められている。
「佐藤先生、こんにちは。」
「おっ、君は僕が受け持っている一年生の子だね。」
「佐倉陽太です。まさか先生が相談者だったとは。」
「こんな歳になっても考える事が多くて大変だよ。」
冗談めいて話しているが果たして俺は笑って返すのが正解なのだろうか。
「こちらのソファーにお座りください。」
「これはご丁寧にありがとう。」
「飲み物はお茶でよろしかったですか?」
「いやいや、わざわざお茶を出してくれなくても良いんだよ。」
ソファーに座ると大きく息を吹いた。
話している感じは元気そうにも思えたが、やはり体は正直なのかも知れない。
ここに来るまでは階段を沢山上がらないといけない。
いくら教師を続けているからと言って、体力がいつまでもある訳でもないはずだ。
「それでは早速なんですがどんな相談内容でしょうか。」
「教師の身だから相談を受けてくれないのではないかと駄目元で来てみたが、本当に僕のような老いぼれの悩みも聞いてくれるんだね。」
「ここは恋愛支援部。どんな方の相談だって拒みはしないですよ。」
「それはなんとも心強い。安心して君達に話せるよ。相談というのはね、妻のことなんだ。今週の金曜日で結婚して四十年が経つんだよ。」
結婚記念日ということか。
毎日結婚指輪を身に付けているので、既婚者というのは知っていたけど、まさか今週か記念日だったとは。
しかも、四十年も続いているとは相当長い歴史を持っている。
俺が生まれて今までよりも長く夫婦でいるということか。
年月が経てば経つほど、記念日には疎くなるものだと思っていたが佐藤先生は違うようだ。
「後、何回この結婚記念日を祝ってやれるか分からない。だから、体が言うことを聞いてくれる今のうちに最高のサプライズをしたいんだよ。」
「確かに悩ましいことですね。サプライズっていうのは喜んでもらえるか不安ですし。」
「そーなんだよ。僕も何も考えずに君達へ相談しに来たんじゃないんだ。色々とサプライズを考えてから来たんだよ。」
「おぉ、それなら話が早く進みそうですね。どんなものか実際に挙げて行ってもらっても良いですか?」
佐藤先生は自分から言っただけあって、数々のサプライズを考えていたようだ。
中には微妙なものもあったが、ほとんどは手の込んだものばかりで喜んでもらうには十分過ぎるくらいに思える。
最終的に実現可能なレベルのものをリストアップすると十個の案に纏められた。
「やっぱり自分だけだとどれにしよう迷うから助かるよ。それに、若い子の意見を取り入れた方が新鮮で面白いだろうから。」
「ここからヒアリングを行い、より具体的に構成を組んでいきましょう。」
「糸井くんは教師の間で天才と噂だったけど、こういった活動でも才能を発揮させているね。」
俺もそれには驚かされる。
やっている事が学生の部活で収まるレベルではないだろ。
もっと大々的にやれば、お金を取れたりしていると思う。
「初デートの場所とか覚えてたりしますか?女性の方は初めての経験を大切にされる方が多いので、参考までにお聞かせいただければ。」
「初デートね。あれは忘れもしない出来事だから、今でも鮮明に思い出せるよ。木枯市を一緒に回ったんだ。」
木枯市か。
昔は商店街として大いに賑わっていたらしいが、今となってはその影は見当たらない。
サービス業の発展が進むに連れて客足は軒並み減ったと聞いている。
それでも今も営業しているお店は存在するので行ってみらのも悪くないだろう。
「どんな店とか行ったりしたんですか?」
ただの興味本位で聞いてみることに。
話の流れを大きく崩す質問ではないので許してもらいたい。
「僕の好きな古本屋と妻が行きたがっていた雑貨屋に行ったんだ。そこで小さなオルゴールを買ったのは今でも忘れないね。」
「なるほど。ここは一度、木枯市の商店街に行ってみるのが良いかもしれませんね。」
「僕も随分と行ってないからどうなっているのか興味があるね。」
「それなら、私車出しますよ。」
ここでハイラ先生が運転を買って出る。
元とはいえ、スーパースターに運転をさせるのは気が引けるだろ。
それにここにいるのはハイラ先生を合わせて六人なので車に入り切らないだろ。
「六人は流石に入らないんじゃないですかハイラ先生。」
「あっ!それなら大丈夫ですよ!私の車は八人座れますから。」
今日一番驚いた情報かもしれない。
なんでそんな大人数で乗れる車を運転しているんだ。
芸能人だった時にマネージャーから譲り受けたのか。
恋愛支援部に舞い降りた新しい相談は、ハイラ先生の深まる謎と共にスタートを切った。
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