“パジャマパーティー”は魔法の言葉(たぶん違う)
午後中、お母さまと王妃さまはずっとお喋りに興じていたらしい。一体、どれだけ話すことがあるのか……驚くばかりだ。
夕食の間も二人は話が絶えなかった。
ただ、話があっちこっちへ飛ぶし、私が知らない人の名前もがんがん出てくるので、ほぼ右から左へ聞き流した。それよりも夕食が美味しいので、ゆっくりじっくり味わうことに全力を傾ける。うちの食事も美味しいけど、王家の食事も美味しい。
「そういえば、アリッサは水龍公爵家のクローディア嬢と仲が良いと伺ったのだけど」
途中、ふと、王妃さまがこちらを見て仰った。
お母さまが頷く。
「そうそう、この間の夏至祭のときは泊りにくるよう招かれるほど仲が良くて。マックスはルパート閣下と折り合いが悪いから驚いたのよ」
いえいえ、お母さま。
お父さまとルパート閣下は、折り合いとゆーより、一方的にお父さまがいじめてるんじゃないかと思いますねー。ルパート閣下は、たぶん口下手なだけ。もっともその点はお父さまも気付いてないようだけど。
王妃さまは「まあ!」と驚いたように目を丸くした。……んん?今、初めて知ったような顔をしたけど、それはウソじゃない?とっくに知っていて、わざと話題に出した気がするんだけど。
「水龍公爵家へ泊まったの?で、クローディア嬢と一晩中、お喋りでもしたのかしら?」
「えーと、そうですね、ディ……クローディアさまとエリオットさまの3人でいろいろお喋りをしました……」
主に植物の話とトカゲの話を。
って、これはあの美しい双子のイメージを損ないそうだから言わない方がいいのかしらん。
「……3人?」
「はい!お二人とも友達ですから!」
エリオットさまも友達ですよ~。婚約とか、そんな話はないですよ~。
ここが重要なポイントなので念を込めて答えていたら、突然、お母さまが怖い顔で覗き込んできた。
「その話は聞いてないわ。あなた、男の子と一緒に寝たの?」
そ、その言い方はちょっとどうかと……。
お母さまの隣で、王妃さまの目がさっき以上に丸くなった。更に、気まずそうにそっと視線を逸らすアルが見えた。
そうだった。
私にはすでに前科があったんだっけ。……アル、あの夜のこと、王妃さまには言ってないんだ?
うーん、うーん……。
そこで私は、無邪気な顔で真っ直ぐお母さまを見つめた。
ここは思いっきり笑顔で当たり前のように言わないと!
「だって、お母さまが友達ならパジャマパーティーするものだっていいましたよね?だから今日は、アルとパジャマパーティーしようと思っていたのに~」
「…………!」
ふふ。お母さまが言葉に詰まったのをみて、私はうまく誤魔化せたのを確信した。
誤字報告で「護身術を習いたい」の中の「眉をしかめ…」を「眉をひそめ…」ではないかと頂きました。
調べてみたところ、「しかめる」は「ひそめる」の誤用という見方もある一方、1530年にはすでに使用されていた例もあり、一概的に誤用とは言えない部分もあるようです。
私個人としては、「眉をひそめる」はほんの少しの不快感、「眉をしかめる」は相手にも明らかに分かるほど大きな不快感を表しているイメージで使っていたんですが、どうも意図とは違うので、別の表現に変えさせていただきました。




