魔力枯渇は相当ヤバいと知りました
今回もちょっと文章量多め。
次の日。
お父さまが一人で私の部屋に来た。
今日はなんとか起き上がれるようになっていた。昨日は液体系しか体が受け付けなかったんだけど、今日はもうご飯をもりもり食べれるので、明日には普通に動けると思う。
魔力も半分ほどまで回復してる。思ったより早くて、ホッと一安心だ。
「体調はどうだ?」
「もう、大丈夫です。明日には元どおりです」
「そうか」
お父さまは小さく呟き、じっと私の目を覗き込んだ。
「アリッサ。神事のとき、何が起きたか記憶はあるかい?」
「いいえ。魔法陣が光ったとおもったら、すぐ意識をうしなったので……」
ただ、昨日、兄さま達が興奮して街が大変なことになったんだよ!と言っていたので、気にはなっている。
お父さまは難しい表情になって眉を寄せた。
「魔法陣から出た光は、空まで届いていたらしい。街中から光の柱が見えたそうだよ。その後、一斉に緑が芽吹き、花が咲いた」
「…………」
「アリッサ。心当たりはないかい?」
「…………」
何故、そんなことを私に聞く?
お父さまは、私が何を知ってると思っているのだろう?
───ただ、推測していることはある。
あの陣は、恐らく春を呼ぶ陣だ。
この世界で前世を思い出してから、不思議に感じていたのは、季節や天候のことだった。まだ、私が“私”になって2年も経っていないけれど、とても安定した天気循環、季節循環で過ごしている。
歴史書を繙いてみても、異常気象は滅多に起こっていない。
台風だの、酷暑だの、100年に一度の豪雨だのが毎年やって来る日本と比べて、なんていい世界だろう、なんて思っていたのだけど。
もしかしたら。
季節折々に国王や領主が行う神事が、大きな役割を果たしているのかも知れない。
つまり、魔法で気候を操っているのだ。
古王国時代は、魔物も多く天候も不順で、人が生きるには苛酷な時代だったと言う。それを、魔法で変えたのではないか、というワケ。
そしてあの陣は、本来、強引に冬を終わらせ春を呼ぶものだったのだ。
だが長い年月で、魔法陣か呪文に間違いが生じ、威力が弱まった……いや、もしかすると誰かが故意に変えた可能性があるかも?
落ち着いた時代に、あまり強力な魔法は必要ない。しかし、緩やかな作用なら欲しい。
ということで、わざと少し書き換えて威力を弱めた、とか。
それを今回、私が無理に魔力を押し流したせいで、 元々の魔法が発動した───ま、あくまでも私の推論だけどね。
お父さまは、私と同じ金の瞳でじっと見つめてくる。
私も見つめ返した。
魔法を独学で学んでいることは、秘密にしている。
まだ魔法を知らない私が、たとえ推論でもあれこれ言うのは変だろう。ここは、分からない振り一択だ。
お父さまは、底の見えない眼差しをふと逸らし、溜め息をついた。
「まだ魔法を知らないアリッサに言っても詮ないが……魔力枯渇には気を付けなさい。命を落とすこともあるからね」
「そうなのですか?」
「神殿で倒れたとき、アリッサは呼吸も心臓も止まっていたよ。神官長がいたから、すぐに甦生が叶った。魔力も、皆から少しずつ注いで、事無きを得た。本当に運が良かったと心得なさい。普通なら、魔力枯渇になって命が助かっても、廃人になる可能性が高い。これから先、魔法を習い始めたら、絶対に魔力が尽きるまで無茶をしてはいけないよ」
「はい!」
ひえ~。今まで何度か魔力枯渇状態になったと思ってたけど、あれ、実は魔力1か2くらい残存してたのね。そんな危ないことだったんだ。今後は本当に気を付けないと。
……それにしてもお父さま。私が魔法を練習してるって、薄々勘づいているのかしら。目が、ちょっと怖いんですけど。




