アルの誕生日を祝うよ!
翌朝、食事に行くと、庭の方から気合の入った掛け声が聞こえてきた。
「ゴドフリーさまやブレアさま、ゾーイさまが日課の鍛錬をされています」
ほえ~。
昨日も遅くまでパーティーだっただろうに、朝早くから元気だなぁ。
私、辺境伯家へ嫁ぐのは絶対にムリ。あんなに鍛えられない……。
そうそう、ブレアお祖母さまとゾーイ叔母さんといえば!
私は食事を急いで終えて、衣装部屋へ行く。
今日の衣装の準備をしている侍女たちに、ブレアお祖母さまとゾーイ叔母さんの衣装を見せてもらう。
お祖母さまは昨日の衣装の袖を取り、上から違う色のケープをまとう形になっていた。
叔母さんの方は袖を付け替えている。色も形も違う袖に、その袖の色と同じレースをスカートの上に巻いていた。
どちらも昨日と同じドレスだけど、まったく違うものに見える。
同じドレスを続けて着ていくワケにはいかないけど、この短期間で何着も用意はできない。ということで考えた苦肉の策だ。
「アリッサさま!これで宜しいでしょうか?」
「うん、完璧!お祖母さまの方は、ケープと同色の組紐のベルトでもあれば、それを付けてみてね」
「はい。アリッサさまがいて、助かりました」
侍女たちが笑う。そのうちの一人が、しみじみと呟いた。
「下級貴族にこの仕立て直し術を伝授するべきかも知れませんわ。今回のような3日連続のパーティーなんて、きっと大騒ぎですもの」
そうか……確かに、下級貴族は大変だろうね……。
リボンの色を替えたりして雰囲気を変えるのはよく使う手段らしいけど、袖を取ったり付けたりというのは、あんまり一般的ではないみたいだし。
うーん、下級貴族向けに、袖を付け替えられるドレスを安価で作ってみる???
アナベル姉さま、ライアン兄さまと一緒に王城へ。
サフィーヤ義姉さまも誘ったけれど、この食事会は遠慮したいとのことだった。まあ、まだブライト王国にそんなに慣れてないのに、王族と食事するのは気を使うよねー。
さて、王城に着き、案内された部屋には……カールトン商会カフェ自慢のスイーツがすでに届いていた。
カラフルなマカロンがグラデーションを描いて、三段ケーキの側面を飾っている。ケーキの上には、砂糖や飴で作られた花々の飾り。
すご……。
「一晩でよく作ったわね……」
アナベル姉さまも呆れ顔だ。
いやもう……これは、あとでスタッフをしっかり労わなくちゃ!うちのカフェのスタッフ、誇りだわぁ。
ディたちも到着し、みんなでアルを迎える準備をする。ちなみに、ナイジェルさまは来ていない。まだ小さいナイジェルさまは、このあとの正式なパーティーに参加するため、昼食会は欠席するそうだ。行きたい!と駄々はこねたらしいけど。
そうそう、昨日も式典が長かったせいでナイジェルさまは途中で寝てしまい、ルパート閣下が抱っこしたんだよね。
いつも無表情なルパート閣下が、少し困ったような、でも優しい顔でナイジェルさまを抱っこしている姿は、もう、聖母ならぬ聖父!神々しくて周囲の女性はみんな、気を失いそうになってたよ……。
やがて、それほど待つこともなくマーカス殿下とアルが登場した。
「……アルフレッド殿下、10歳の誕生日、おめでとうございます!」
アナベル姉さまがお祝いの言葉を言い、それを合図にエリオットが魔法を発動させる。
空中に細かい霧が出現、それらがみるみるうちに凍ってゆく。ライアン兄さまがそれを風の魔法で、アルとマーカス殿下の周りにくるくると回らせた。
キラキラと輝く、光の渦。
そして、私とディ、アナベル姉さまは紙吹雪を撒く。
「アル、おめでとー!」
「殿下、おめでとうございます!」
アルは目を真ん丸にして、ポカンとした。
こんなに無防備なアルって、珍しい。
ふふふ、それに可愛い。
マーカス殿下は満足そうに笑って、アルの肩を抱いた。
「おめでとう、アルフレッド!」
「お……どろきました」
アルが何度か目を瞬かせ、ほんの少し言葉を詰まらせながらポツリと言う。そして、ふわりとステキな笑顔になった。
「みんな……ありがとう」
きゃー!!
その笑顔が見れただけで、もうこの場の全員、超幸せな気分だよぉ!




