いろいろと、準備
結局、ディたちとそのまま控え室でのんびり過ごして、そのまま王城を辞することとなった。
まあ、立太子の儀には出たし、そのあとのパーティーも最初の方は参加したから、問題ないよね。
そして、アナベル姉さまが「商会のカフェに寄って帰るわよ!」と言い出したので、寄り道をする。
今日から3日間、カフェはマーカス殿下の立太子を祝う特別なお菓子を販売中だ。店はもう閉店していたけれど、明日の分の用意でスタッフはまだ店内に残っていた。
「アナベルさま?!どうされました?」
私たちが裏口から店に入ると、スタッフの一人が慌てて飛んできた。
「特別販売のお菓子をもらえないかしら」
「あ、はい、すぐご用意します。どのくらい必要なのでしょう?」
「んー……食事会のあと、お茶菓子として出すだけだから、そんなに要らないわ」
「食事会?明日に??……一体、どこでどなたと?」
王城でパーティーのはずなのに……という不思議そうな顔でスタッフが質問する。
アナベル姉さまは指折りした。
「えーと、パーティーが始まる前に王城で内輪の昼食会をするの。参加は、マーカス殿下とアルフレッド殿下でしょ。ディ―――水龍公爵家の双子と、私、アリッサ、ライアン兄さまね。もしかすると、水龍公爵家はナイジェルさまも来るかしら?あ、そうだ!サフィーヤ義姉さまも参加してもらう?」
後半は、私に向けての言葉だ。
それを聞いていたスタッフが、急に目を吊り上げた。
「お、お待ち下さい!そんな場に出すのでしたら……もっと、豪華な菓子をご用意します!」
「えええ?今から?そんなの、大変でしょ。出来ているものを持っていくわ。城の方でも用意するだろうし」
「ダメです!」
スタッフは両手を握り締めた。そして、悲痛な声で訴える。
「今や、我らがカフェはブライト王国一の菓子を出す店として、諸外国にも知られております。この特別なときに、王城で、両殿下にお出しするというなら……当然、特別仕様にせねばなりません!」
「あ……そ、そう……?」
姉さまがスタッフの迫力に負けて、少し後退りしながら答える。
反対にスタッフは力強く頷き、くるっと後ろを向いて大きな声を出した。
「みな!アナベルさまの話は聞いたな?!今から特別な菓子作りに取り掛かるぞ!」
「おおーっ!」
……ほぇー。すごいな、うちの商会のスタッフ。
徹夜になるんじゃないの、そんなことしたら?
たぶん、ここ数日もずっと朝早くから遅くまで働いているはずなんだけど。
これじゃカールトン商会、めっちゃブラック企業じゃん。
姉さまと顔を見合わせる。姉さまは軽く肩をすくめた。
「彼らがやる気になったら、止められないわ。だって、そういうやる気のある人たちを集めたし」
ああ~、そういえば、そうだっけ。えーと、じゃあ私たちも店にいた方がいいのかなぁ?
だけど、先ほどのスタッフが自信に溢れた顔つきで、私たちに言った。
「お嬢さま方は、もう遅いですからお帰りください。明日の朝には、ご満足いただける菓子を用意しておきます!アリッサさまにはいつも素晴らしいレシピを教えていただいておりますが、我々も、この頃はアレンジには自信があるのです!」
「あ、はい……よろしくお願いします」
勢いに負けて、私も思わず一歩下がりながら、返事しちゃった……。
屋敷に帰り、簡単な湯浴みをして部屋着になってから、アルへのプレゼントの包装に取り掛かる。
―――本当は。
パーティーが終わって数日してから、王城へ行ってさっとアルに渡すつもりだったのに。
アル、包装はみんなの前で解かずに、部屋に戻って一人になってから見てくれるといいんだけどなー。
はあ……違うプレゼントにすれば良かった。
欲しいものはなんでも手に入る王族や貴族にプレゼントを贈るって、大変だよね。来年は、外国の珍しい何かをお取り寄せしちゃうんだから!




