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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ8才

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大急ぎで式の準備

 ブレアお祖母さまとゾーイ叔母さんは、なんと鎧姿で式に参加するそうだ(もちろん、ゴドフリーお祖父さまも)。そのために、一張羅(?)の鎧姿で王都まで来ていた。

「だって、ドレスなんて持ってないもの」

「今回のためだけにドレスを作るのも無駄だし、うちの辺りにお洒落なドレスを作る工房もないし、持って来るのだって大変でしょう。そもそも、着慣れていないものを着ても、道化師になるだけだわ」

 な、なるほど。

 でも、お母さまは納得しなかった。

「警護の女性騎士ならともかく、それ以外の貴族女性が鎧を着て参加するなんて、型破りにもほどがあるわ!今から、用意します!」

 すぐに服飾職人や針子を呼ぶように言われた侍女長が、引きつった顔で頷く。

 今から用意?!と驚愕しているに違いない。

 ゾーイ叔母さんは嬉しそうに手を叩いた。

「えっ、本当?!じゃあ、似合うドレスを見繕ってくれる?私、一度くらいはステキなドレスを着てみたかったの!」

「ゾーイ、無理よ。私たちにドレスが似合うはずがないじゃない……」

 すると、お母さまが私を見た。

 ……え?もしかして、私がなんとかするの??


 お母さまの実家、キャラハン辺境伯領はブライト王国の北の端、高い山々に囲まれた地なのだそうだ。

「娯楽もお洒落なものも、なーんにも無いところなのよ」

と、お母さまは言う。

 そして、強力なものは滅多に出ないけれど、それでもよく魔物が出現するため、キャラハン一族はみな、男も女も子供の頃から魔物を狩るらしい。

「えっっっ、お母さま、魔物を狩ってたの?!」

 うちにある、ありったけのドレスを広げた部屋の中で、私は初めて聞いた驚きの情報に目を丸くする。

 だけど、ゾーイ叔母さんが笑った。

「ううん、コーディは小さい頃は体が弱かったから。部屋で寝て過ごすことの方が多かったのよ。で、"こんな田舎はイヤだ~、王都で華やかな暮らしがしたい~"ってしょっちゅう言ってたの」

「へええ」

「でね。キャラハン領は、王都どころか他領へ行くのも不便な隔絶された地だし、うちの一族は子供でも大事な戦力だから。基本的に学校は魔法通信で済ますんだけど……コーディは王都の学園に行くと言って、領を出て行ったの。次に帰ってきたときは、火龍公爵のご子息と結婚するって報告で……いやもう、あのときは家族も領民も腰を抜かしたわぁ!」

 ていうか、ガサツなコーディが未来の公爵夫人なんてね!と口を大きく開けて笑う。

 お母さまは、顔を赤くしてゾーイ叔母さんを睨んだ。

 ほー、へー、知らない話ばっかりだよ。もっと聞きたい……!

「アリッサ!もう服飾職人が来るわ。早くドレスを決めて」

「はーい」

 もう、お母さまったら。

 おしゃべりしながらでも、ドレスは決められるってば。


 お二人に似合いそうな形のドレスを選び、到着した服飾職人にサイズ調整や細かい修正をお願いする。

 ゾーイ叔母さんはドレスを着て大喜びしながら、私にこそっと更なるお母さま情報を教えてくれた。

「さっき話した、コーディが子供の頃は体が弱かったって話……あれ、ウソだからね」

「えっ?ウソなの……?」

「うん。ウソっていうか……コーディは、みんなを騙せたと思ってるだろうけど。ホントは、父さんがね。魔物と戦う気のない者をムリに戦わせるワケにもいかん、って目を瞑ってたのよ」

 そうなんだ。

「でも、コーディは馬も上手に乗りこなすし、弓の腕も領一番だったの。父さんが、惜しいなぁって何度も言ってたわ。……コーディが馬や弓の達人だって話、きっとダンナは知らないと思うな~」

 お父さまは知らない?!

 うわぁ、すっごい秘密を教えてもらっちゃった。

「教えてくれて、ありがとう!ゾーイ叔母さん!」

「んっふっふ。アリッサも、こんなゴツい私を可愛くコーディネートしてくれてありがとう!」

 いえいえ、どういたしまして!


 大騒ぎの衣装部屋に、アナベル姉さまが顔を出した。

 アナベル姉さまは、カールトン商会のカフェで立太子の儀に合わせたお菓子を販売するため、昨日からバタバタしている。

「お母さま……って、何これ?」

「なぁに、アナベル?今、手が離せないんだけど」

「あ……えと、キャラハン辺境伯にご挨拶しに行ったら、お祖父さまと組手をするとかで騒ぎになっているんです。家令が止めているけれど、止め切れないみたいだから……お母さまに相談を……」

「はあっ?!ダメって言ったのに、何をしてるの、あの筋肉バ……くっ」

 お母さまが叫びかけて、途中で言葉を飲み込む。

 ……もしかして、筋肉バカって言いたかったのかしら。

 いやーん、こんなお母さま、ホント、珍しいわー。アナベル姉さまも目を丸くしているよ。

 まあでも、今はそれどころじゃないよね。

 私は手を挙げた。

「じゃあ、私が行ってきます。お祖父さまたちに、代案を提供してくる」

「代案ですって?どんな?」

「えーと、腕相撲とか」

「……うでずもう?」

「台の上で片手を握り合って、どちらかに倒すゲーム。腕の筋肉勝負みたいな感じ?」

 これなら、ケガもしないと思う。ルールも簡単だし。

 でも、お母さまは渋い顔をした。

「筋肉で勝負するゲームは、白熱したら結局、戦うって言い出しそうじゃない?」

 そ、そっか……。

 それじゃあ……親指ゲームかな?前にラクに教えたやつ。

 私がそれを説明すると、アナベル姉さまとゾーイ叔母さんが「面白そう!」と言ってくれた。お母さまも眉間のシワが緩み、「それは大丈夫そうね……」と呟く。

「じゃあ、アリッサにお願いしてもいい?」

「うん。……行ってきます」

 私としては、お祖父さまたちが戦うところも、見てみたい気はするけどね。

 ただ王都の屋敷じゃ、お祖父さまたちが戦える場所がないのよねー。残念。

 ―――さて親指ゲームは、お祖父さまたちだけでなく、セオドア兄さまやライアン兄さまたちも巻き込んで、大盛り上がりとなった。

 男って、こういうゲームが好きなの……?

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 母の黒歴史いろいろかな(笑) ま〜、どこの親でも娘(息子)には過去のいろいろは知ってほしくない、少なからずのプライドはあるかな?? 格好良い(可憐な)とかの過去話なら話し…
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