もう一人のお祖父さま
王都の屋敷にお母さまと戻ったら、兄さま姉さまたちに順番に抱き締められた。
アナベル姉さまからは、「もうこれからアリッサは、一人で出歩いたらダメ!」と怒られたけどね。
ごめんなさい~。
それからセオドア兄さまが小さく耳元で、「一緒に悩むよって言ったのに、アリッサ一人にまたいっぱい背負わせちゃったな。でも、アリッサの優しさは変わらなくて……やっぱりアリッサは、俺の自慢の妹だよ」と言ってくれた。
前にラクのことで、兄さまと話したとき。
セオドア兄さまは、次に誰かの罪を裁かなきゃいけないときは、一緒に悩んでくれると言ってくれた。そのことだろう。
ありがとう、兄さま。
いつも相談するヒマもなくトラブルに突っ込んじゃう妹を、どうか見捨てないでね……。
さて、アルの10歳を祝うパーティーと、マーカス殿下の立太子の儀が行われる前日の朝早く、お母さまのお父さま―――つまり、私のお祖父さまがカールトン家の王都の屋敷に到着した。
キャラハン・ゴドフリー辺境伯。
…………ゴツい。
オーガストお祖父さまも体格がいいんだけど、それを完全に上回っている。
え、もしかして身長2メートル超えとかじゃないよね?
首も肩も二の腕も太くて、私なんか簡単にプチッとされそう。
それと鼻の下に、ビックリするほど立派な灰色のヒゲがある。両端がちょっと長くてくるっと巻きかけているので、なんだか前世のマンガのキャラクターにいそうな感じだ。
お母さまと一緒に玄関ホールで出迎えた私がポカンと見上げていたら、ゴドフリーお祖父さまはギロッと睨んできた。
ひゃあ!眼力、すごっ!!
負けたらダメだと思って、慌てて私も睨み返す。でもよく考えたら、何に負けるとダメなのか……いまいち分からない。
だけど睨み返したら、ゴドフリーお祖父さまはフッと圧力を弱めた。
「ハハハ!良い目をしておる!さすが我が孫!」
「父上!子供相手に睨まないの!」
お母さまが厳しい声で怒る。
いや、その前に声!お祖父さまの声が大きいよ!?
「そなたは、アリッサか?うむ、コーデリアの小さい頃と同じような気の強い目をしておるな。……しかし、ちと、細いぞ。細すぎる!それでは簡単に骨折してしまうではないか!」
「アリッサは、魔獣と戦ったりしないからこれでいいんです!ごつい公爵令嬢なんて、冗談じゃないわ」
……お母さまも声が大きくなってるよー。
侍女たちが端っこで硬直してるじゃん。
唖然としている侍女や侍従たちをそのままに、ひとまず応接室へゴドフリーお祖父さまを案内する。
お祖父さまの後ろには、2人の女性が隠れていた。
お祖父さまが大きすぎて、全然、気付いてなかったよ。
女性は……ブレアお祖母さまと、ゾーイさま。ゾーイさまは、お母さまの1つ年下の妹だそうだ。
えーと……2人とも、結構、体格がいい。
例えば何か格闘技とか、してそうな感じ。服がわりとピタッとしたものを着ているので、肩や二の腕の筋肉がよく分かるのだ。そして無駄な肉は、全然無い。
ゾーイさまは、応接室でお母さまに抱きついた。
「コーディ姉、久しぶり~!すごいね、ちゃんと公爵夫人じゃん!」
「ちょっと、ゾーイ。もういい年なんだから、そんな挨拶の仕方はしないで」
「なによー、冷たいじゃない~。コーディ姉に会うために、はるばる来たっていうのに」
プッと頬を膨らませながら、ゾーイさまは私を見た。
「初めまして、アリッサ!叔母のゾーイよ。よろしくね」
「初めまして、ゾーイさま」
「あはは、様なんて付けなくていいわ。ゾーイおばちゃんで大丈夫よー」
うわー、すっごい気さくな人だなー。私、好きかも。
そのとき、オーガストお祖父さまが戸口に現れた。
オーガストお祖父さまは、昨夜、領からこちらに来たところだ。なお、お父さまはずっと王城に詰めていて、屋敷にはいない。
「おお!オーガスト殿か?!」
ゴドフリーお祖父さまが気付いて、声を上げる。
「老けたなぁ!まあ、私も人のことは言えんのだが」
「ゴドフリー殿、また会えるとは!……はは、お互い、年を取りましたが、ゴドフリー殿の肉体は衰えておりませんな」
お祖父さまたちは近寄って、がしっと握手する。
「なんの、なんの。この頃は孫に後れを取るようになって、年を感じておるところだ。だがまあ、オーガスト殿と一戦するのは問題ない!」
「ふむ、良いですな。あのときは勝負がつかんままで儂も心残りだった。決着をつけますか」
ええ?!
お祖父さまたち、戦ったことがあるの?!
でも、お母さまが一閃した。
「2人揃って何をバカなことを言ってるんですか!明日が何の日か忘れたの?!立太子の儀よ?!」
怒られたお祖父さまたちは、分かりやすくシュンとする。
ぷぷぷ、カワイイ~!




