アルに全部、打ち明ける
あけましておめでとうございます!
本年もどうぞ、よろしくお願いします
マーカス殿下が引きつった笑顔を浮かべつつ、ベッドからそそくさと遠ざかる。
「ではアリッサ嬢、私はこれで。無理せずゆっくり休んでくれ。……アルフレッド、昨夜はあまり話をする暇がなかったので、またあとで話そう」
アルが扉のところで口元だけ、ニッコリする。
「分かりました。では、いつもの場所で」
「うむ。そうだな……」
ギクシャクとしながら、マーカス殿下が部屋を出て行く。
それをアルは見送り、目を瞑ってから一度、深く深く息を吐いた。
うう、こ、怖いよぉ。
だけどアルが私の横へ来たときには、すごく心配そうな顔になっていた。
「具合は?」
「えーと……体は特に何もなくて。ただ眠いだけなの」
ん?
さっき、アルがめっちゃ怒ってるみたいで怖かったんだけど……怒ってるのは、もしかしてマーカス殿下だったの?
私には……怒ってない???
よ、良かったぁ!
……いや、でもその年で、この切り替えの早さは別の意味で怖いけどねー。
「帰ってきたら、アリッサが昏睡状態だと聞かされて、本当にビックリした」
「うん……ごめん」
「それに、もう、全部片付いたって言うし」
そう言ってアルは脇の椅子に座り、急にパタリとベッドに顔を埋める。
「正直、情報が多すぎて、混乱している……。しかも、まさかの僕が帰ってくる直前に!兄上は……どうしてそんなタイミングで……!」
あ、やっぱりそこを怒っているんだ?
まあ、そうだよね……。
でも、マーカス殿下としては血の繋がった弟をこっそり助けたいという想いがあったんだもん。許してあげて~。
大体、私が長い間、旅に出ていたことも原因だし。
……ていうかアル、年相応の少年っぽくて可愛くない?帝国で会ったときも、ちょっと雰囲気が変わったなって思ったけど、こんな風に感情を出せるようになったんだね……。
私はつい、手を伸ばしてアルの頭を撫で撫でした。
でも。
「……僕は、ちょっとアリッサにも怒ってるよ?」
「えっ?!」
俯いたままの低い声に、手が止まる。
や、やっぱり怒ってらっしゃる……?
アルは頭を上げずに、ポケットから何かを取り出して小さく呪文を唱えた。
―――防音の魔石だ。この部屋に、今、侍女はいなくて、隣の部屋で控えているだけなんだけど。
そうしてようやくアルは顔を上げ、恨めしい目で私を見る。
「アリッサは帝国で天恵者の里へ行ったと聞いた。僕と会ったのに、そのことは隠していたよね?それと、天恵が前世の記憶だということも教えてもらった。……僕は知らないことだらけだ。アリッサとは、一番の友だちだと思っていたのに」
「う……ご、ごめんなさい~~~」
「僕はさ。帝国で、アリッサが学院へ入学する際に、魔力量を隠せる道具もちゃんと完成させたんだよ。でも、もうみんな、アリッサがただ者じゃないことを知っている。今さら隠す必要もないよね……?」
「そ、そんなことはない……と、思います……」
そういえば、そんな話をしていたっけ。
……それ、すっごく遠い昔の話に思えるぅ。
私が身を縮こませていたら、アルはフッと笑った。
「ごめん。……ちょっと言いたかっただけなんだ。僕が一番、アリッサのことを知っていると思っていたのに、蚊帳の外で話が進んでしまったものだから。でも……極秘裏になんとかしたかったマーカス兄上の気持ちも分かる。それにザカリーは幽閉されず、ラミアも許されたと知って……なんていうか、ホッとしているし。ああ、それと兄上が皇太子になることも、取り消されなかった」
「うん。私も……それはホッとした」
「アリッサのおかげだね。ありがとう」
「どうなのかな……私がいたから、ザカリー殿下は事件を起こしたワケだし……」
もし私がいなかったら。
ザカリーは誰に怒りをぶつけていたのかな……?
アルが優しく笑って私の手を握った。
「アリッサがいなかったらなんて仮定は、意味がないよ。……とりあえず、無事で良かった。ウォーレンから、癒しの魔法を使ったと教えてもらった。それも、かなり規模の大きなものだと。アリッサは光の魔法も……使えるんだね?どうして、癒しの魔法でザカリーの前世の記憶が消えたのか、教えてくれる?」
―――そこから、私はアルにいろんな話をした。
天恵者の里で見たこと、聞いたこと。魂の傷を癒やして、その結果、ザカリーの前世の記憶は消えたこと。
私は魔力量が高いだけでなく、全属性の魔法が使えることも。
ただ、全属性が使えることは、ウォーレンさんとうちの家族以外には、まだ話していないことも言った。
今まで隠していたこと全部、アルに話したので、なんだかすごくスッキリした気分だ。
アルはただ静かに最後まで聞いて、小さく溜め息を漏らした。
「そっか。全属性が使える件は……確かに、あまり知られない方がいいね。他国が知れば欲するだろうし、五大公辺りが気付けば面倒なことになりそうだ」
「うん、わかった。隠しておく。……あ、でも学院に入学するとき、わかっちゃうかな?」
「あー……そうだね。……じゃあ、帝国で作った魔力量を隠す道具に、属性も隠す機能も付加できないか、試してみるよ」
うう、ありがとうございます~。
アルって、本当に優しくて、最高の友だちだよー……。
隠しごとしてて、ごめんなさいでした……。
「ところで」
私が感激でウルウルしてたら、アルが首を傾げた。
「アリッサは、前世で天寿をまっとうしたの?」
「え?……ううん、女子高生だったよ。あ、17才の学生ってことね」
「17才……」
アルの目が丸くなる。
あ、オバさんって思ったな?
ところが、アルはプッと吹き出した。
「本当に?!僕は、アリッサがそんな年上だって感じたことがない」
「えええっ?!」
うそぉ?!
「まあ、出会ったときは、僕より一つ年下らしくないとは考えていたけど」
「アルより、だいぶ上だよ!……うーん、でも前世の記憶って一部しかないから、もしかすると……ちゃんと年齢分の重みは……ないのかも……?」
ていうか、出会ったときのアルは確実に私よりお子ちゃまだと思ったけど、この頃は私より大人な気がするんだよね……。
おかしい。私、精神が育ってないってこと?
いやいや、そんなはずはないと……思う。きっと、アルが変なだけ。
アルはくすくす笑いながら、まだ握っていた私の手の甲を撫でた。
「とりあえず―――いろいろ落ち着いたら、アリッサの前世の話を聞かせて欲しい。帝国に行って、他の世界を知ることの重要性を身を持って実感したんだ。アリッサの前世の世界は、すごく興味がある」
「うん、わかった。この世界とは全然違うんだよ。きっと、アルは驚くことばかりだと思う!」
そして、私がアルよりお姉さんだということも、ちゃあんと分かってもらわないとね!




