セオドア兄さまの誕生日パーティー
領から王都に来て、ゆっくり過ごす日もないまま……セオドア兄さまの16才を祝うパーティーの日になった。
普通はたくさんの人を招いて大きく祝うけれど、このパーティーはこじんまりと行われる。
アルの10才の誕生日パーティーと日が近いということもあったので、元々、大々的には行わない予定をしていたらしい。それが、マーカス殿下の立太子の儀とも重なったので、さらに縮小したのだとか。
パーティーは、開く方もお金がかかるけれど、招かれる方もお金がかかるからね。火龍家となると、弱小貴族も「行かなくちゃ!」となるから、そこら辺を配慮したみたい。
それとセオドア兄さまは、数年後には火龍公爵位を継ぐ。
そのときにお披露目でかなり大規模なパーティーをすることになるので、誕生日は地味でいいだろう、ってことらしい。
というか、あまり裕福でない貴族だと、跡を継ぐ子のお祝いは盛大にするけど、他の子は何もしない場合も多いのだと聞いた。世知辛いよねー……前世も今世も、やっぱり、最後にものを言うのはお金だなんて。
ていうかさ、案外、庶民の方が神殿でみんなでお祝いするから、そっちの方が良かったりして?
さて、こじんまり―――と言いつつ、セオドア兄さまは未来の火龍公爵。
なので、王家からは国王陛下の代理でマーカス殿下が来られるし、他の三龍家当主も来ることとなっていた。
さらに、この日ばかりは領都からお祖父さまもお祖母さまも来られて、おかげで屋敷はここんところずっと騒然としている。
厨房はみんな、血相を変えて戦場状態だし、侍女や侍従たちも顔に余裕がない。
そんななか、私はいまだパーティーの用意をせず、セオドア兄さまの支度部屋にいた。
ジーニーさまの手でマントをつけてもらったセオドア兄さまは、いつもの数倍、カッコいい。
「うわー、兄さま、カッコいい~!」
「……正装って、なんだか息苦しいよなー」
「もう!ジーニーさまの愛のこもったマントを付けてるのに、何を言ってるの」
「んー……でもこれ、おも……いや、うん、ありがとう」
んん?重いって言いかけたね、兄さま?
ジーニーさまは、そんな兄さまの横で感極まって涙ぐんでいる。
兄さまは苦笑しつつジーニーさまの頭を撫でて、私を振り返った。
「じゃ、こっちの支度は終わったから……ジーニーの支度に取り掛かってくれるか?」
「うん!」
了解、兄さま!
―――ジーニーさまは、兄さまの着付けも手伝うのだと言って譲らず(といっても、最後のマントを付けるところだけなんだけどね)、自分の支度は二の次だったので、終わったら私がジーニーさまを支度部屋へ案内する役目を請け負っていたのだ。
あまり慣れてない場所だと、ジーニーさまはどこへ行くか分からないらしい。
兄さまの支度部屋から、数部屋ほど横へ行くだけなのに、そんな心配をされるジーニーさまって……どんだけ方向音痴なんだろ?
念のために手を繋いでジーニーさまと一緒に支度部屋へ行くと、髪を結ってもらっているお母さまが、ホッとしたようにこっちを見た。
「ああ、ようやく来たわね。二人とも、早く用意しなさい。もう時間がないわよ!」
「はーい」
……前世でドレスって憧れたけど、この頃はもう、「面倒だなー」と思うようになってる。着るのも脱ぐのも、大変なんだもん……。
そして、とうとうパーティーが始まった。
水龍家からはエリオットとディ、ナイジェルも参加だ。
次の地龍公爵となるデリックさまも来られた。デリックさまは、ダライアスさまと同じように小柄だけど、すっごく日に焼けた人だった。30代くらいだろうか……?
それと、風龍公爵の跡継ぎというギディオンさまも来られた。
名前から男の人だと思うけど、髪が長くて、すごく整った顔立ちをしていて、女の人っぽくも見える。20才前後……かな?
うーん、風龍公爵って、もしかして性別不明の人しかなれないのかしらん。
―――パーティーが始まってしばらくすると、私のそばに来たマーカス殿下が、小さな声で話しかけてきた。
「アリッサ嬢。少しだけ、二人で話が出来ないか?」
なんだろ。アルへのプレゼントの件かな?
お父さまや他の公爵から気付かれないよう、マーカス殿下とは別々に部屋を抜け出して、別室へ。
ちなみにマーカス殿下の案内はリックに頼んだので、部屋には私、マーカス殿下、リック、メアリーがいる。
「パーティーの最中に申し訳ないな」
「いえ。……で、話とは?」
ソファを殿下に勧めながら、私は話を促した。
マーカス殿下は、ソファへ座り……懐から魔石を取り出す。防音の魔石だ。
え?そんなに秘密の話……?
ふわっと魔法が作動する感覚があり、私が目を瞬かせていると、マーカス殿下はおもむろに身を乗り出した。
「手短に話す。……近日中に王城へ来て欲しい」
「……近日中、ですか?」
「アルフレッドが帰って来る前に、片付けたいのだ」
「何を……ですか?」
なんだか、マーカス殿下の様子がただごとではないんだけど。
「君を狙う者を……捕まえたい」
「えっ?!」
どういうこと?!
マーカス殿下は、私を狙う犯人が分かったの……?




