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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ8才

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同じ刺繍でも、天と地ほどの差!

 屋敷の玄関を通った途端、「アリッサちゃーーーん!」と抱きつかれた。

「んぐっ?!」

「もう!ようやく旅から帰ってきて、王都にも来てくれたっていうのに、忙しすぎ!全然、会えないから焦っちゃったじゃないぃぃぃ」

「ジーニーさま」

「様はつけないでって言ってるでしょ」

 私にがっつり抱きついている小柄な女性は……ジーニーさま。セオドア兄さまの婚約者だ。

 桜色の髪、こげ茶色の瞳、そして眼鏡をかけた、すごく可愛らしい感じの人。そしてこんな可愛らしいのに、実はセオドア兄さまより二つも年上で、王城で書記官としてばりばり働いている。

「あのね、あのね!マント持ってきてるの。端っこにチャチャチャ~っと刺してくれる?」

「は、はい……」

 ジーニーさまと会ったのは、2回くらいしかないんだけど、人見知りも物怖じもしない人だねー。

 ジーニーさまはぐいぐいと私を引っ張り、玄関に近い部屋の一つに入った。

 そこには、豪奢なマントが広げられている。白地に、火龍家の紋章が金糸で刺繍されているのだけど……えっ、スゴッ?!

 紋章、盛り上がってない?

 立体的になってる?

 縁の飾り模様も密度が……ハンパない……。

「こ、これのどこに刺繍を……?」

「このへん。一刺し、二刺しくらいでいいから」

「はい……」

 このマントは、セオドア兄さまの16の誕生日会で着るマントだ。

 普通は婚約者や近親者が協力して仕上げるものだけど、ジーニーさまは一人で全部刺繍したいと言って、聞いたところによると二年前から取り掛かっていたらしい。

 でも、マントの刺繍はお祝いの気持ちを込めて刺すもの。近親者がまったく刺さないのもダメだということで、お母さまたちは縁を少しずつ刺繍させてもらっていた。

 残りの一人が私だ。

「すごいですね、よく見たら金色の部分もちょっとずつ色合いが違う!」

 近くでじっくり見て、私は仰天した。

 紋章部分、妙に立体的だと思ったら……微妙に色の違う糸が使われているのだ。

「でしょ。いい色の糸がなくて、いくつかは自分で染めたの~」

「ひえー」

 熱の入れ方がすごいなぁ。ジーニーさまはにこにことした。

「あんまり刺繍は興味なかったんだけどね。こんなに大きなのを時間かけて作るなら、ものすっごいのを作ってみようと思って。……うふふ、同僚から刺繍職人になったら?って言われちゃった」

 そりゃ、言われるよ。

 ジーニーさまは、一つのことに集中したら周りが見えなくなるタイプらしい。

 セオドア兄さまとジーニーさまの出会いは、学院の階段だと聞いている。ジーニーさまが本を読みながら歩いていて、階段から転げ落ちたのを、兄さまが受け止めたのだという。世の中にこんな鈍くさい人がいるのか?と衝撃を受けた兄さまは、その後、ジーニーさまを見かけるたびに目で追うようになり、あまりの危なっかしさに何度も手助けをして……そのまま好きになっちゃったみたい。

 わりと細々と世話を焼くのが好きなオリバー兄さまなら分かるけど、大雑把なセオドア兄さまで大丈夫かしら?と思うのだけど。

 オリバー兄さまいわく、「彼女は、セオドアくらいの雑さがないと、面倒をみきれない」んだって。普通の神経だったら、心配と不安でいっぱいになっちゃうらしい。

 ということで、オリバー兄さまはジーニーさまが来るとそそくさとどこかへ消える。危なかっかしくて見ていられないそうだ。

「はい、針と糸」

「ありがとうございます」

 私はジーニーさまから渡された針と糸で、端の方を少しだけ刺繍した。

 セオドア兄さま。16の誕生日おめでとうございます……っと。

 二刺しに気持ちをいっぱい籠める。刺し終えて、マントをジーニーさまに返したら、ジーニーさまは目をうるうるさせていた。

「はああ……これで完成……長かったぁ……」

「お、お疲れさまです」

 仕事しながら、こんな大作を作るんだもの。本当に大変だったろうな。

 ジーニーさまは涙を拭いながら首を振った。

「ううん、テオにはいっぱい世話になってるから、せめて、これくらいは返したかったの。……あ、そうそう。さっき、グレイシーに聞いたけど、アリッサちゃんも刺繍しているんでしょ?アルフレッド殿下にあげるやつ。どんな感じ?」

「えっ」

 この刺繍のあとに、私の刺繍なんて見せられるワケないじゃん!

 私がブンブン首を振って、「全然!しょぼい出来です!」と言ってもジーニーさまは「見せて見せて」と譲らない。

 なので。

 私は穴に入りたい気持ちいっぱいで、ジーニーさまに刺繍した剣帯を見せた。

 でも、剣帯を見た途端、ジーニーさまの目が輝いた。

「うわ~、なんかカッコいい!こういう刺繍って珍しくない?え、え、え?!アリッサちゃんが考えたの?!すごい、すごーーーい!」

 ほ、ほんと?お世辞じゃなく?

 ……アルへのプレゼントの剣帯は、和風な菱紋を刺繍していた。

 この世界では、刺繍といえば植物をモチーフにしたものが多い。でもそれは、くねくね曲がっていてすごく難しい。細かいし、配置やバランスにも気を使う。

 一方、菱紋だとバランスが取りやすくて、歪んでいるとよく分かる。初心者な私向けだと思ったのだ。

 それに男子が持つなら、こっちの方がカッコ良さそうだったし。

 一応、一色ではなく何色も使ったしね。ちょっと歪んだけど、目立つ部分に王家の紋章だって入れた。

「いやーん、アリッサちゃんにこんなデザインセンスがあるなら、マントの刺繍も相談してら良かったぁ!」

 お世辞だろうけど、ジーニーさまの台詞に思わず身を縮める。

 だって……これは、前世でお母さんが持ってた和柄バッグの紋様を真似しただけだも~ん。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 人それぞれ、のめり込むと凄い人もいるし、その努力が目に見えた結果になるなら本人も満足でしょうね! 結婚(夫婦)は相性も大切だしね〜 いくら稼ぎが良くても家庭が冷えてたら現…
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