久々の王都、カールトン商会のカフェと雑貨店へ!
久しぶりの王都、そしてカールトン商会~!
今日は朝早くから領を出て王都の屋敷に荷物を置き、ゆっくりすることもなく、すぐにジョンと一緒に商会に向かった。
カフェの厨房へ入るなり、わっと従業員が集まってくる。
「アリッサお嬢さま!お待ちしていました!今日は、何か新しい飲み物をつくるんですよね?!」
「アナベルお嬢さまから聞いて、楽しみにしていたんです」
わわ、圧がすごい、圧が!
カフェのスタッフは、アナベル姉さまが新しいもの、美味しいものが好きな人員を厳選している。そのせいだろう、やる気がすごい。
ジョンも嬉しそうに腕まくりした。
「では……すぐに作り始めましょうか!」
「はい!!」
……うーん、ここはジョンに任せて、私はアルダー・ル雑貨店へ行ってこようかな。
メアリーを連れて、隣にあるカールトン商会の雑貨専門店アルダー・ルへ。
店の裏口から入ると、従業員の控え室にはマシューがいた。
「マシュー!今日、学校じゃないの?!」
まさかマシューがいるとは思っていなかったので、嬉しくなって飛び上がる。
マシューはにこにこと立ち上がった。
「久しぶりにお嬢さまが来られるので、休みにしました」
「えー、大丈夫?」
「僕は優秀なので、平気です」
「……マシュー、声、低くなってない?」
あれれ?
声が……前と違う??
マシューは照れたように頭を掻いた。
「お嬢さまが旅に出られたすぐあとくらいに、声変わりになりまして……変、ですか?」
「ううん」
前の子供ながらに柔らかくて優しいトーンも好きだったけど、今は落ち着いた深みのある声になった気がする。
まだ声変わりの途中っぽいけど……この調子で大人の声になるなら、マシューってめっっっちゃイイ声になりそうじゃない?
やばい、こんな声で商品勧められたら、女子はみんな買いたくなると思う。
うわぁ、この世界にラジオでもあればいいのに!絶対、マシューにCMさせる……!
私が内心で興奮しているのを知らず、マシューは私を奥のソファに招いた。
「旅はどうでした?」
「うん、すごく楽しかった。珍しいものをたくさん見たよ。帝国も、すごく興味深かった。あ、マシューの帝国語レッスンのおかげで、向こうで会話には全然困らなかったんだよ!ありがとう」
「それは、お嬢さまの努力の成果ですから」
いやいや、先生が良かったからだもん。
前世では英語で話すとか、全然ムリだったし。
メアリーが、私たちのためにお茶の準備を始める。
一方マシューは、机の端に置いてある箱を取り上げて、私に渡してくれた。
「これをお嬢さまに」
「なぁに?」
マシューにお土産を買ってきてるんだけど。
とりあえず、それを渡すより先にマシューからもらった箱を開ける。
中には……5cmほどの大きさの、可愛い木製の置き物がいくつも入っていた。
人形だろうか。丸い頭に、円錐の体。ちっちゃな手がついていて、小さなラッパを持っていたり、太鼓を持っていたりする。
楽隊になっているようだ。
「か、かわいい……!」
「僕の通うレブント学院で、北の国から留学している者と友人になりました。その国の子供向けの玩具らしいのですが、とても可愛いので、アルダー・ル雑貨店に置いてもいいかと思いまして」
「うん。すごくいいね」
ちょんちょんと描かれた小さな目と、少し頭でっかちな感じが、余計に可愛い。
「他に……ドレスを着たものや、騎士の格好をした人形もあるみたいです」
「いいね、いろんな種類を集めたくなる」
「良かった。では、友人に発注しておきますね。北の国なので、商品が届くまで少し時間がかかりますが」
私は思わず、マシューを見つめた。
「マシュー!いいなと思ったら、仕入れてくれていいのに」
「そういう訳にはいきません」
「じゃ、オリバー兄さまに聞くとか」
「オリバーさまも、取り扱い商品についてはアリッサお嬢さまに一任するとのお考えです」
えええ~。私だけじゃなく、みんなでお店は回していきたいなぁ。
その後はマシューにお土産を渡し、旅の話をいっぱい話した。
「楽しそうですね。僕もご一緒したかったな」
「うん、マシューがいたらいいのにって私も何度も思った。特に帝国では、アルが商人の子と仲良くなっててね。帝国の商会を見て回ったのも興味深かったよ」
フロヴィンやリートと、マシューならすぐに意気投合しそう。
すると、マシューは目を瞬かせた。
「アルフレッド殿下は、帝国商人の子と仲良くなられたんですか?」
「うん。なんかね、悪~いこともいろいろ教えてもらってるみたいだよ。アルが、あんなに砕けた雰囲気で他の人といるのを初めて見たかも。男の子同士の連体感がすごくて、少し、悔しくなったくらい」
私がアルの一番の友達と思ってたのにね。
今は、あの三人の方が私より上だったりして。
マシューは感心したように頷いた。
「すごいですね、アルフレッド殿下。帝国はブライト王国と比べられないくらい、貴族と平民の間に大きな壁があるんですよ。貴族は平民を見下しているし、平民の方も貴族と馴れ合うのは御免だという空気があって。特に商人の子となれば、壁は分厚いと思うんですが」
「そうなの?私も普通に仲良くしてもらったんだけど。……あれは、もしかして社交辞令だったのかな?」
ぷぷ、と後ろでメアリーが笑った。
「そんなことありませんよ。お嬢さまは、アルフレッド殿下以上に馴染んでましたから!向こうの商会の人に、"本当に生粋の貴族ですか、ブライト王国の公爵令嬢はすごく気さくですねぇ"と感心されましたよ?」
えっっっ。
それはちょっと……恥ずかしい……。




