戦いの結果
ライアン兄さまと大男の戦いが始まった。
大男は幅広の大きな剣を、驚くほど素早く振り回して兄さまに打ち付ける。
兄さまはそれを受けず、右へ左へ。機敏に避けては、その合間に男へ向かって剣を振るう……けれど、大男も巧みに躱したり大剣で反らせたりする。
ううう、胃が痛くなるよぅ。
兄さまはとても敏捷で綺麗に攻撃を避けてはいるものの、兄さまからの攻撃がちっとも有効に見えない。こんな戦いを続けていたら、いずれ兄さまの体力切れで負けてしまう……。
ハラハラしながら両手を握り締める。
このムサハカの勝負は、命までは賭けない。
でも、兄さまはたぶん、命を賭けていると思う。参ったなんて絶対言わないだろう。
お願い、神さま、兄さまを護って兄さまを勝たせて……!
ガツンガツンと大剣が地面に打ち付けられ、ひたすら兄さまが避ける展開が続く。
戦う2人の額には大量の汗が浮かび、息も切れてきた。
ふらっと、兄さまが一瞬、よろめく。
「兄さま!」
思わず叫んだとき、大男が吠えて一層大きく剣を振った。
途端。
ゴウッ!
大男の剣から真っ赤な焔が噴き出る。
「っ?!」
炎の剣?!
魔法剣だろうと思っていたけど、炎が出るの?!
―――でも。
豪炎は、兄さまに届く前に軌道を変え、霧散した。大男が驚く。
だって……ねぇ?
うちは火龍家。
四属性の魔法のうち、火と一番、相性がいいのよ。兄さまより魔力量が上でない限り、兄さまに火の攻撃なんて無意味だ。
なーんだ。
この国の宝刀というから心配したけど、炎を操る剣なら大丈夫そう。
兄さまもにやっと笑った。
相手の出方を見て、温存していたらしい。兄さまも大きく剣を振るって……相手よりも大きな炎で辺り一面を覆い尽くした―――。
という次第で、ムサハカは兄さまの圧勝だった。
ていうか、あんな簡単に決着がつくなら、最初っからどかーんと炎をかませば良かったのに。
それと……妨害の方はどうだったかって?
バートとテッドがしっかり敵を無力化し、さらに聖導師の前に引き出したので。
王さま、面目丸潰れ!
ふっふっふ、自業自得だね!
ただ、もしかするとこの後、ちょっと暴動が起きるかも。この王さま、かなり傲慢で国民から人気がなかったみたいだから。
王弟が何やら声高に言い始めて、あちこちで騒ぎになりだしたよ。
「太陽神により、サフィーヤ姫はライアンさまの妻と認められました。今のうちに……姫を連れて国を出られた方がよろしかろう」
ムサハカの熱も冷めないうちに、大臣の一人が聖導師と一緒にそう言いに来て……私たち一行は慌ただしくアシャム国を出ることとなった―――。
ファラ姫になんとかお礼とお別れの挨拶をして、サフィーヤ姫と共に再び、砂漠へ。
サフィーヤ姫は、これでもう二度とアシャム国へ帰ってくることはないかも知れないというのに、ほとんど荷物がない。
というか、一国の姫が輿入れだというのに、ほぼ着のみ着のまま。
サフィーヤ姫も恐縮している。
「こんなことになっテ、ごめんなさい……」
「サフィーヤ姫が謝ることではないぞ。姫をあんな国から救い出せて、良かった。孫をよろしく頼むな」
お祖父さまが労るように姫に声を掛ける。
私はライアン兄さまを見た。
「兄さま……。サフィーヤ姫、もう、兄さまの奥さんだって。オリバー兄さまより先に結婚しちゃったね」
「…………」
兄さまが赤い顔でそっぽを向く。
お祖母さまが渋い顔をした。
「アシャム国の決まりがどうであろうと、成人するまでは、婚約扱いです。分かっていますね、ライアン?」
「わかってるよ」
……まあこれで一応、今回の旅の一番の目的は終わったワケだけど。
アシャム国、今度、どうなるのかなぁ。ファラ姫も心配……。
すみません、来週はもしかするとお休みするかも知れません……。




