突然の旅の計画
「アリッサ~!冬至祭のあと、一緒に旅に出るぞぉ!」
ある日、お祖父さまが勢いよくやってきて満面の笑顔でそんなことを言い、私を抱き上げた。
「え?ええ?!旅??ど、どこに……」
「まずは、アシャム国だ」
アシャム国?
どこ……?
頭の中がハテナだらけだ。
すると、いつの間にかお父さまがそばにいて、渋い顔でお祖父さまを止めた。ていうか、お父さま、領に帰ってきてたんだ?
「父上。少し落ち着いてください。そして、アリッサを降ろす!もうアリッサは幼子ではないのですから、そんなすぐに抱き上げないでください」
「何を言う、可愛い孫は、たとえ成人しても儂は抱っこするぞ!」
「父上……」
うーん、お祖父さまは大好きだけど、さすがに大人になって抱っこは恥ずかしいかなぁ。将来の旦那さまにされるのは……ちょっと憧れるけど。
お父さまとお祖父さまはひとしきり言い合ったあと、ようやく私は降ろされ、部屋で詳しい話を聞くことになった。
―――アシャム国とは、南の島国の一つらしい。
その国の第三王女と。なんとライアン兄さまが婚約するという。
お父さまの話を聞いて、私は思わず叫んだ。
「え~、ライアン兄さまが王女さまと?!」
「といっても母親の出自が平民のため、国では疎略に扱われてきた姫君だそうだ。まあ、ライアンが選んだのであれば、親としては応援するだけだな」
ほほう。兄さまが選んだ人なのね?
私は前世の転生モノのマンガや小説の知識のせいで、貴族は家同士で婚約を決めるという思い込みがあったけれど……ブライト王国の四龍は元からそれなりに権力が強いので、あまり家と家の結び付きは重視しておらず、どちらかといえばまずは本人の意思を尊重して婚約を決める傾向が強いらしい。
ちなみにオリバー兄さまもセオドア兄さまグレイシー姉さまも、7才か8才までで婚約を決めたけど、みな、お茶会に参加していた子の中から、自分で選んだと聞いている。
「上の子たちは早かったが、ライアンにアナベルにアリッサはなかなか決まらないからなぁ。まあ、ライアンが決まって少しホッとした」
「アリッサは無理に婚約しなくていいぞ?」
お祖父さまが横から言ってきて、お父さまが眉を寄せる。
ふふ、無理に結婚せず、商会でバリバリ働くのも……悪くはないかなぁ。でも、ステキな人との結婚も憧れる。
お祖父さまとお祖母さまはいまだに仲良しだし、お父さまもお母さまもラブラブだし。そういうの、いいよねぇ。
「で、だな」
お父さまが続きを話す。
「この婚約の件は、まだ当人たちからの申し出だ。きちんと婚約するには、家同士できちんと約束を交わさればならん」
「ということで、マックスは王都から長く離れる訳にはいかんからな。代わりに儂が出向くことになった」
ふんふん、なるほどね。
「ライアン兄さまも一緒に?」
「もちろん。ついでにな、帝国にも行くぞ、アリッサ」
「えっ、帝国も?!」
「お前に"天恵者"ならば帝国へ来いといった子供がいたのだろう?何者か気になる。モラ湖の件やアナベルの毒殺未遂に関係しているとは思えんが、調べておくべきだと思ったのでな。ところがツァーンラント商会のオットーに詳しい話を聞こうとしたのに、あやつと連絡が取れん。直接、帝国へ乗り込むことにした」
ふおお!
て、帝国!
私も気になっていたから、行けるのなら行きたい!
そして、帝国へ行くのなら。
「帝国には、私のような天恵者がたくさんいる場所があるって聞いています……そこにも行ってみたい……!」
ダメかな?
でも、もしかするとそこで、私の知らない転生の実態について、いろいろと知ることが出来る、かも知れない。
「ふむ。そうだな、帝国が隠している可能性もあるが……行ってみるのも悪くはないな」
「父上!あまり危ないところへアリッサを連れて行くのは止めてください」
「何を言う。国にいても、アリッサは命を狙われとる。天恵者ゆえに狙われるのなら、他の天恵者と話をするのは現状を変える一手となるかも知れん」
「そ、それは……まあ……そうですが……」
お祖父さまは私の頭を撫でた。
「儂がおれば、アリッサは危険な目に合わせん!な、アリッサ」
「はぁい!」
やったぁ、お祖父さまと一緒なら、どんなところでも怖くなく旅が出来るよ!
帝国にも行けるなんて……もしかしてアルに会える、かな?




