今年は春花祭を最後まで
春華祭だ。
お祖父さまが「かなり安定して魔法を使えるようになった」と言ってくれたので、この神事から私も参加する。
それでも、念のために神官長とお祖父さまに挟まれた位置で臨むようだ。
ふふん。もう、不用意に魔法陣に魔法を流さないから大丈夫だもーん。
例年通り3日前から潔斎をし、春華祭当日の夜、白い服で神殿へ。さあ、夜通しのお祈り開始!
私はお父さま達より外側の輪に、お祖父さまと神官長に挟まれて立つ。
長い、長い詠唱と祈りが始まった。
そして───結局、神事は特にトラブルもなくすんなり終わった。
ていうか、めっちゃ長かった~……。途中、何度か立ったまま寝落ちしそうになったよ。頑張った、私。
周りは相当、心配していたらしい。神事が終わるなり、皆がホッとした顔になって私を見る。
……失礼ねぇ。
私も学習するのよ?そうそう同じ失敗はしないってば。
神事が終わり、仮眠をしてから午後はリックとテッド、ガイと一緒に下町へ。紅い髪は茶色くし、リックやテッドの妹っぽく見えるように変装した。
お父さまは相変わらずの渋い顔だったけれど、春華祭のお祭りは一度見てみたかったんだもん。目一杯、頼み込んじゃった。とうとう念願叶って、うれし~い。
ちなみにセオドア兄さまが味方してくれて、「父上はアリッサを閉じ込めすぎ」と外へ出してくれた。
「護衛がいても領内ですら自由に動けなくて、アリッサはこれからどう生きていけば良いのですか?少しずつ世界を見せていくと約束しましたよね?」
だって。
最近、セオドア兄さまが頼もしい。
下町は、どこもかしこも花だらけだった。カラフルでキレイだ。
花の門や塔も豪華ですごかった。でも祭りの最後に、厄払いの紙人形焼きで一緒に燃やしてしまうのだとか。もったいないけど、焼くことによって神さまの元に届くんだって。
家々の窓にも、たくさん花が飾られている。よく見ると、同じような花だ。ちょうどこの時期に咲く春告草を、各家庭で冬の間、大事に育てるらしい。
「ちょうど春華祭のときに咲くよう調整するのは、大変らしいっスね」
「そう。ちなみに春告草は、赤、黄、桃、白の4色の花が咲くんだけど、どの色が咲くかは種のときは分からないんだ」
「でさ、赤の花が多かったら商売繁盛や農作物の豊作、黄色が多ければその1年は病気にならない、桃色なら良縁に恵まれる、白だと災いから身を守られるって言われるんだぜ」
ガイ、リック、テッドの順で説明してくれる。
私は首を傾げた。
「……どの花が咲いても、結局、いいことばっかりだね?」
「ま、誰かが勝手に言い出したことで、本気で信じてるヤツはあんまりいないけどな」
でも春のめでたい祭りだから、明るい希望があるのはいいだろ、とのテッドの言葉になるほどと私は頷いた。
若い人なんか、桃色の花が咲くのを楽しみにしてそう。
───広場には、今までで見たことないほどたくさんの屋台があった。人も、こんなにこの街にはいたのか!というくらい溢れている。
さあ、屋台、屋台!
美味しそうな匂い~。
思わず走り出そうとしたら、テッドに首根っこを掴まれた。
ちょっと。主にその扱いはナイでしょ。
「えっ、屋台の食べ物、食べるんスか?」
いつの間にか私の袖を掴んでいたガイが困ったように聞いてくる。私は口をとがらせた。
「そりゃそうだよ。屋台の食べ物は、今までも食べたことあるよ。大体、それが一番の楽しみで来たんだから。……テッド、リック。春華祭のときにしか売ってないものって、どれ?」
「んー、お嬢は舌が肥えてるからなー……」
リックが腕を組みながら、屋台の列を見回す。そして、「よし」と手を打った。
「俺がいくつか買ってくるから、お嬢はテッドと向こうで待ってろ」
「ええ?!私も買いに行きたい!」
「普通の市のときと違って、春華祭は人が多すぎる。また町へ来たいなら、ここはガマンしてくれ」
「……はい」
うう、今回は確かにそうだね。そう言われたらワガママは言えないね。
祭りのときに町へ来れただけでもマシだもん。おとなしくしてよう……。
リックが買ってきてくれた花の形のお菓子は、まあまあだった。
久しぶりの屋台の串焼き肉も、まあまあだ。
おかしい。前はもうちょっと美味しかった気がするんだけど。
なんだろう、ガッカリ感がすごいわ……。
「屋台の肉なんて、塩を振って焼いてるだけだからなー。公爵家の食事と比べモンにならないって」
むう。
そうか。このところ、屋敷の食事の質が上がってきたせいで舌が肥えてきたんだな……。
でも、前世ではお祭りの屋台ってだけで、タコ焼きとか、焼きそばとか、美味しかったのになぁ。
やばい、なんか急激に前世の味が恋しくなってきた。
……そうだ、醤油。
せめて醤油が欲しい。トウモロコシでもイカでも、醤油につけて焼いてるだけなのに、美味しかったもんね。
よし、マシューに似たものがないか探してくれるようお願いしてみよう!
その前に、リンゴ飴とか綿菓子も作っちゃおうかな。あまーいリンゴ飴を口周りベタベタにしながら食べたい……。




