カラーの万年筆、そして耳慣れない言葉
修正、終わりました!今週から更新再開します。
なお、活動報告の方で修正箇所を詳しく書いています。ついでに長期お休みした分の穴埋め(?)に、軽いSSもアリ。
ツァーンラント商会のオットーさんが来ているというので、今日はアルダー・ル雑貨店へ。
ツァーンラント商会とは、帝国の商会だ。雑貨類を扱っている。
去年、オットーさんと港町リーバルで初めて顔合わせをしたとき、アルダー・ル雑貨店を開く際はお祝いに伺いますと約束してくれた。だけど、私は開店イベントに参加させてもらえなかったため、会えていない。
なので、今回会えるのはすごくうれしい。
その上、カラフルな万年筆インクを作って持ってきてくれたらしい。やったぁ!
るんるん気分で商会に着き、裏口から入ると……カールトン商会店長のブルーノとオットーさんがいた。ちょうど商談中だったようだ。
「ああ!アリッサ様。お元気そうで何よりです」
「またお目にかかれて、うれしいです、オットーさん」
私を見て、オットーさんの目元が緩む。一見、冷たそうに見える顔がフッと和らいだ。
そのオットーさんの横には、私と同じくらいの背丈の男の子がいる。深い緑の髪、黒い瞳。オットーさんとは……似ていないけれど、オットーさんの子供だろうか?
私と目があうと、ニコッと笑った。
笑った、けれど……鋭い吊り目だからだろうか、少しだけ油断ならない感じもする(でも、それを言ったら私も吊り目だもんね。もしかして、私も他から見たらそうなのかも……ショック!)。
「ハジメマシテ。うる、ト言イマス」
「アリッサ・カールトンです。ようこそ、アルダー・ル雑貨店へ」
ウルは、オットーさんを見上げた。帝国語で店内を見たいと言っている。
オットーさんは一瞬、私の方に視線を向けて──なんだか心配そうな視線みたい?──頷いた。
「アリッサお嬢様。この子は私の親戚の者で……お嬢様と一緒に店内を見て回りたいと言っているのですが、よろしいですか?」
「いいですよ。案内します!」
ふふふ。自慢のお店だもの。いくらでも案内しちゃうよ~。
「あちらの棚は、絵本や書籍です。ここから向こうまでが文具雑貨で……」
少年と店内に行き、さっそく私は帝国語で案内を始めた。
アナベル姉さまが寝込んでいたとき、屋敷でおとなしく過ごすしかなかったから……語学には力を入れたのだ。かなり帝国語は話せるようになっている。
「……すごいな。とても流暢な帝国語だ」
「ありがとうございます。いつか、帝国にも行ってみたいと思っているので」
ウルの目がキランと光った気がした。
「ならば、いつかと言わずにすぐにでも来ないか?」
「え?」
「お前はカイワタリだろう?帝国は、ワタリモノを歓迎する」
「???」
急にテンションの高くなったウルに若干驚きながら、耳慣れない言葉に首をひねる。
ウルも首を傾げて考えるように目を上に向けた。
「うーむ……ああ、ブライト王国では“天恵者”というんだったか?」
「テンケイシャ?」
それも聞いたことがない。
「何も言われたことはないのか?なるほど、火龍公爵はそういう方針か」
……思わせ振りな話し方、イライラするなぁ。さっさと分かるように詳しく話してよと思っていたら、ウルはぎゅっと私の手を握ってきた。
ちょっと?突然、失礼なんですけど?
「周りに理解者がおらぬ中にたった一人、苦しかったであろう?アリッサ嬢。やはり、そなたは帝国へ来い。同郷の者とも会えるぞ」
ドキン。
胸が一瞬、大きく鳴った。
……どういう、意味?
「帝国の第三代皇帝は、カイワタリであった。ゆえに、我が国はワタリモノに深い理解のある国だ。他の国のように迫害したり、処刑するようなことは決して無い」
はい?なんか……物騒な言葉が並ばなかった??
思わず固まったら、「お茶をご用意しました。こちらでお話をどうぞ」という柔らかな声がかかった。
いつの間に来ていたのか……後ろにマシューがいた。
ウルは軽く鼻を鳴らし、私の手を離してマシューの指す方へと歩き出す。
すれ違い様、小さな声で囁いた。
「いずれ……ゆっくりと話をしよう」
……オットーさん。
この子、オットーさんの親戚の子じゃないよね?このエラそうな話し方、落ち着いた尊大な態度……絶対に帝国の高位の貴族だ。
いずれゆっくり?
帝国には行ってみたいけど……私、移住する気はないよ……?
その後、ウルとは当たりさわりのない話に終始した。
それと、オットーさんが持ってきたカラーの万年筆は、沈んだ赤と渋い緑色だった。
うーん、欲しい色とはだいぶ違う……。
どうも淡いパステルカラーは、まだまだ作るのが難しいらしい。まあ、そりゃそうだよねー。
とりあえず、カラーの万年筆はアルダー・ル雑貨店の店頭に並ぶことになった。早く可愛いピンクのインクとかで、手紙が書けるようになりたいなぁ。




