改良馬車の試乗をする
今日はなんと、領の山間部へ行く。
何故かといえば、マシューが乗り心地を改良した新しい馬車を持ってきてくれたので、その試乗をするためだ。
マシューはその辺を軽く走るだけのつもりだったみたいだけど、お父さまが「悪路も試すべきだろう」と言い出し……いろいろあって、セオドア兄さまと一緒にお出掛けとなった。
一緒ではあるけれど、兄さまは馬だ。
馬車に乗っているのは、私、マシュー、メアリー。
兄さま以外に馬なのはテッドと、テッドの師でもある護衛のガイ。他にも数人、我が家の騎士が付いてくる。
たかが馬車の試乗にすごい人数でしょ?
何故こんな大人数なのかといえば……兄さまたちは山間部の魔獣を討伐するからだ。
「魔獣討伐する旅程に、よく旦那様がお嬢様の同行を許しましたね」
マシューが出発してしばらくしてから、不思議そうに聞いてきた。私は肩をすくめる。
「私がいろいろ騒ぎを起こすから。セオドア兄さまが、家に閉じ込めるんじゃなく、もっと世界を見せて対処を学んでいくべきだって」
「なるほど……」
小さく苦笑して、頷かれてしまった。
あれ?そこ、そんな簡単に納得するところ?
ちなみにマシューとメアリーはラクのことを知っている。そして、お母さまや姉さまたちは知らないはずなんだけど……私が何やらとんでもないことを仕出かした、とは気付いているようだ。なんだかねー……。
新馬車の震動は、確かに前よりかなり小さい。
素晴らしい。
でも、長時間じっと座っているのはやはり疲れる。なので、途中で休憩を挟む。
「大丈夫か、お嬢」
「テッドの方が馬で疲れない?」
「うん、お尻が痛いよ」
ハハハと笑いながらテッドが自分のお尻をトントンと叩く。
「そういや、お嬢。ラクからなんか変な印を付けられてるんだって?」
「あー、うん」
ラクが私の手の甲に付けた印、あれはラクが本能的に付けたものらしくて、解き方が本人も分からないらしい。
仕方がないので、領の神官長に相談した(私が魔力涸渇で死にかけたときに助けてくれた人だ)。
神官長はカールトンの名ではないけれど、お父さまの従兄弟だか再従兄弟に当たる、うちの親族の人らしい。なので、ラクの素性など細かいことも打ち明けた。
ちなみにお父さまより年上で、落ち着いた優しい雰囲気の方である。髪は栗色だけど、瞳は金で火龍の血を感じる。
で、神官長が言うには、私の魔力の方が上なので(私の魔力量が増えている件も話した。ものすごくビックリされた)、私から破棄することは可能なんだとか。
ただ、ラクが魔の者になっても安定しているのは、私との繋がりによると思われるので、ムリヤリな破棄はオススメできないらしい……。
テッドにそう話したら、ふうんと呟いて、ああ、そうだ!と手を打たれた。
「それじゃ今度、ラクに執着系や粘着系はお嬢の好みじゃないから、嫌われたくないならさっさと消せって言っといてやるよ」
「執着系って」
思わず吹き出してしまった。
テッドにかかると、ラクの問題も軽くなるから不思議だぁ。
朝早くに出発し、昼をかなり過ぎて目的地の村に着いた。
途中からうっすら雪道になり、かなりの悪路だった。でも、マシューもメアリーも、試し乗りしたセオドア兄さまにも、新馬車は好評だ。
……そうか。
私、前の馬車の乗り心地を知らないから、つい、前世の車と比較しちゃうんだな。
でもって、前世では舗装した道路しか私は知らない。というわけで、新馬車がどれだけスゴくても、乗り心地わるっ!としか感じない……。
オフロード車で荒れ地を走ったことあったら、違った感想を持てたのかなぁ。
マシューにどうですか?と聞かれて、「普通の馬車を知らないから分からない……」としか答えられなかった私。なんのために試乗したか、これじゃナゾよね……。




