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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ7才

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めちゃくちゃ泣きました

 アルが隠者の塔から出てゆき、私、リック、ウォーレンさんの3人になった。気まずい沈黙が辺りを占める。

 部屋の角の椅子で、フードを深く被り、器用に膝を抱え込んで三角座りしているウォーレンさんに、私は意を決して話しかけた。

「ウォーレンさん。ラクが魔の者って本当ですか」

 ウォーレンさんが顔を上げた。フードの奥の表情は見えない。

「……ど、どうして……あ、あ赤目の、か、かかか彼を……う、受け……いれたの……」

 どうして?それ、難しい質問だよ……。

「受け入れたっていうか……私にラクを裁く資格はないって思ったからです。それに……ラクも好きで赤い目になったワケじゃないだろうし。いわれない差別で、辛かっただろうなって……」

 赤い目は、魔障に触れた証しだと聞いたことがある。魔物に噛まれたり、瘴気に溢れた地に長くいると、魔の気に侵されて赤くなるのだとか。ただ、中身はあくまでも普通の人間だ。

 だけど、赤い目をしているとそれだけで差別をされるらしい。社会から弾かれてしまう。

 一方、魔の者とは魔物の眷属になった人のことを言う。もはや人間ではなく、魔物に近い存在。人語を解さなくなる者もいるし、生肉や血を好むようになるんだとか。

 けれどもラクは……話もできるし、生肉なんか食べない。普通の食事やお菓子が大好きだ。それに……そう!けん玉で遊ぶのも好き。だから魔の者ではない……と思う。

 私の微かな希望は、しかしすぐに否定された。

「……か、かかか彼は……ま、魔の者だよ。な、なってから……日は、あ、浅そうだけど……」

 そっか……。

 

 小さな音を立てて塔の扉が開き、お父さまがアルと共に入ってきた。

 顔色が悪い。眉間にも、すごいシワが寄っている。

 ……アルとリックに続いて、お父さまからも私は見限られるのかな。

 身の置きどころがなくて縮こまっていたら、お父さまは無言で私の前まで来て……ツ、と涙を流した。

 え?

 見間違いかと思って瞬きをする。

 その瞬間、お父さまに抱き締められた。

「お父さ……ま……?」

「お前は……大事に領へ囲っておいても、危険なことに巻き込まれるのだな。どうしたら、お前を守れるんだ?アリッサ。頼むから……もっと自分を大事にすることを考えてくれ……!」

 ……怒って、ない?

「私に……怒ってないの……?」

「いいや、怒っているよ、私自身に。お前をきちんと守れない情けない父親に」

「…………」

 頭が混乱してきた。

 するとお父さまは私を離して、目の前に跪いた。

 真っ直ぐに目線が合う。

「アリッサ。ちゃんと伝えたことがなかったね。お前は私の大事な大事な娘だ。お前に何かあったら、私も……コーデリアもきっと耐えられない。そのことを、きちんと理解してくれ」

「お父さま……」

 私と同じ金色の瞳が、苦しげにこちらを見ている。白目の部分は真っ赤になっていた。

 それを見ていたら……私もじわっと涙があふれてきた。

 私……てっきり怒られるんだと思ってた。そうじゃなくて……私のことを心配して……怒っているのか……。

 ふと周りを見渡すと、リックも泣きそうな顔で横を向いてる。

 リックも、心配して怒ってた、の、かな?

 ……ごめんなさい。そんなに……みんなに大事にされてて、心配されてるって……私、ちゃんと分かってなかった、かも……。

「ごめ゛ん゛な゛ざい゛~~~!」

 ポタ、ポタポタ……。

 涙が頬を伝い始めて……私はとうとう大声を上げて泣き出してしまった───。


 前世も含めて、こんなに泣いたのは初めてだ。

 泣きすぎて涙と鼻水で顔はぐしゃぐしゃ、頭もガンガンする。

 とても落ち着いて話をできる状態ではないから、と私はお父さまに抱き上げられて、そのまま家に帰ることになった。

「一度、その者と私が話をします。殿下へは改めてご報告しますので」

「わかった」

 お父さまとアルが話をしている。アルの声は冷ややかなままだ。

 聞くともなしにお父さまとアルの会話が耳に入る。

 ……私の手にあるラクとの契約の印。

 どうやら結びつきが深いため、強引に消すと体に弊害が出るかも知れないということだった。なので、今はひとまずそのままにするらしい。ただ、これを消さない限り、王城には足を踏み入れてはいけないようだ。

 まあ、そりゃそうよね。

 こうして……ラクはお父さまの護衛に担がれ、私たちは王城を後にした───。

ラクの件、あともう一話続きます…

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