勘違いしないよう、自分の言い聞かせる
夏至祭から数日後、アリッサが王城へ来る日になった。今日から、アリッサはウォーレン指導の下、魔法の練習だ。
すでに僕より十分、魔法は使えるようだけれど、正しい使い方を学べばもっと上達するだろうから……正直、複雑な気分だ。僕もそれなりに魔力量が多く、魔法のセンスもいいと言われていただけに、この気持ちは嫉妬に近いかも知れない。
夏至祭で僕が上げた花火は、王城の誰もが褒めてくれたけれど。
アリッサだったらもっとすごいものを、何発も上げられるんだろうな。
……そんな風に思いながらアリッサを迎えに行ったら。
いきなり飛びつかれた。
ぎゅっと首に抱き着いて、「アル!花火、すごかった!一番大きくてキレイだったね!」と大絶賛だ。
ちょ、ちょっと待った!
この間のお茶会から、少し、距離が縮まった感じはしていたけれど―――今日のこれ、近すぎないか?!会うなり、いきなり抱き着くなんて。ほら、後ろで火龍公爵の目が怖いよ!!
だけども、金色の瞳が今までで一番、キラキラと僕を見ている。
うっ。
ダメだ。勘違いしちゃ、ダメだ。
これは僕への恋でキラキラしているんじゃない。たぶん、恐らく、ほぼ確実に、違う。きっと……魔法の練習が楽しみで仕方なかったに違いない。
分かっていても、顔が勝手に赤くなるのは止められない。
しかも。
アリッサは手まで繋いできた。
どうしよう。今夜は眠れないかも知れない……。
アリッサの魔法練習は、意外なことにすんなりとはいかなかった。
ウォーレンいわく、アリッサには妙なクセがついているらしい。術の発動に際して、魔力が余分な回り道をしていて、そのせいで魔法が歪むのだとか。
……いまいち、よく分からない。
アリッサも分からないらしい。
先生であるウォーレンも、上手く説明し切れないようだ。
魔法は、いつの間にか子供が歩き方を覚えるように、基本的な部分は感覚で覚えていく面がある。言葉で説明するというのは、やはり難しいものなのだろう。
とにかくしばらくは、小さい魔法を繰り返し何度も使って慣らしていくしかないようだ。
ということで。
今日、いきなり圧倒的な僕との差を見せつけられないで良かった……。さっき、すごく幸せな思いをしたのに、急転直下で落ち込みたくはないもんなぁ。
転移部屋へアリッサを送るとき、また自然にアリッサが手を繋いでくれた。これが当たり前になると嬉しいけれど……今日は魔法の件でふわふわしているだけみたいだから、難しいかも知れない。
だけど、いつの間にか、僕と話すときに敬語が取れていることにアリッサは気付いているだろうか。どことなく、リック達といるときとは違う空気感を感じるのは僕だけか?
彼女の中で、僕の位置がどの辺りにあるのか……気になって仕方がないよ。




