火龍公爵家のパーティーへ
火龍公爵家長男のオリバー殿が成人を迎えるにあたり、誕生日パーティーに母上と招かれた。王城内以外で母上と一緒にパーティーへ参加するのは初めてなので、母上が張り切って大変だ。
「お揃いの衣装は止めてください……」
事前に言っておいたはずなのに、以前、ちらりと見かけた母上の服と色やデザインが同じな、恐らく僕に着せるための服を前日に見つけた。急いで母上の元へ向かう。
「当日まで見つからないようにしておいてって言ったのに……!」
「揃いの衣装が着たければ、次の王城パーティーで父上とどうぞ!」
「着るわけないじゃない、あの人が。それに、このデザインはアルだから似合うのよ。あああ~、着て欲しかったなあ」
恨みがましい目で見られたって駄目だ。久々にフリルのついた衣装を見て、どれだけ焦ったことか。
僕の部屋には目くらまし用なのだろう、別の衣装が届いており、母上の用意周到ぶりは驚くばかりである。
王都の火龍公爵邸は、その周辺も含めてすごい人気と熱気だった。
本来なら、僕と母上も馬車で来るべきなのだろうが、カールトン邸は貴族街ではなく繁華街エリアにある。なので、火龍公爵閣下が安全面を考慮して転移陣を使用出来るようにしてくれた。王城の外郭とカールトン邸を繋ぐ非常時用の特殊ルートだ。
四大公爵邸は、非常時に備えて王城と繋がっている。ただ、そのルートは限られた血を持つ人間しか使えないよう設定されているらしい。母上は、王妃ではあるがハノーヴァー家の血は流れていないため、少し手続きが必要とのことだった。
到着後、屋敷の正面が見える賓客室に通され、パーティーが始まるまでそこで過ごす。
馬車で混み合う道を興味深く眺めながていたら、コーデリア様が入ってきた。
「コーディ!」
「今日はオリバーのためにありがとう、イライザ。あら、そのフリル可愛い~!」
「でしょう?色もいいと思わない?」
「うんうん、その微妙な色合いはステキね、この部屋より、広間のシャンデリアの下でじっくり見たいわ」
あっという間に二人のファッション談義が始まった。やり取りされる情報量がすごい。スピードも展開も早くて付いていけない。僕だけ疾走する馬から振り落とされた心地だ。
ひとしきり喋ったあと、母上が「あ!」と声を上げた。
「そうだ。あのね、コーディ。夏の間に王家の保養地に遊びに来ない?1週間くらい」
「いいの?」
「あの人には許可をもらったわ。コーディにはいっぱいお世話になったのに、お礼をする機会がずっとなかったから……おもてなししたいの」
コーデリア様はちらりと僕を見た。
「……アリッサも連れて行っていいかしら?」
「ぜひ」
コーデリア様の顔が一気に明るくなる。満面の笑みを浮かべ、母上の手を握った。
「楽しみだわ!あなたとゆっくり過ごすのなんて、学院卒業以来ですもの。夜通し、おしゃべりしましょうね」
「ええ!わたくしも楽しみで仕方ないわ」
むむむ。
僕やアリッサが、お二人の話に夜通し付き合わされることはない……よな?




