おすそ分けです
「リリスさま、そんなにガッカリしなくても良いじゃないですか」
露骨に元気が無いリリスをリノが慰める。
「……だってカケルくん、来たと思ったらすぐに行ってしまうんですもん」
「……もんって……まぁ可愛いから良いですけど! カケルさまも忙しい中、わざわざお土産持って来てくださったんですから」
カケルが持って来たバスケットを差し出す。
「……何が入ってるのかしら? カケルくんが作ったって言ってたわね」
「カケルさまは料理の腕も超一流らしいですからね。(すごい優良物件です!!)楽しみです」
「えっ、リノの分は無いわよ?」
「何でですか!? カケルさまが2人で食べて下さいって言ってたじゃないですか!!」
「…………冗談よ、食いしん坊なのね、リノ」
チロリと舌を出すリリス。
中に入っていたのはプリンなのだが、2人が知っているはずもなく。
一緒に入っていたスプーンを使い恐る恐る口に入れる。
「「なっ!? なにコレ美味しい!!」」
夢中で食べる2人。
「……リノ、私、決めたわ。カケルくんのお嫁さんになる!!」
「……お嫁さんって……まぁ、同意ですけど」
しばし惚ける2人。想いは1つ――――
(次はいつ食べられるのかしら?)
***
「私の騎士、どうしたの? 私に逢いたくなったの?」
「忙しいのに邪魔して悪いな。新しいデザート作ったから、おすそ分けだ。なるべく早めに食べてくれ。なんなら俺も早くリーゼロッテを食べたいんだけどな」
「は? な、な、な、なに言ってるの! ばか!」
照れるリーゼロッテを抱きしめて、カケルは転移して行ってしまった。
「もう……何よ……美味しいじゃない。感想ぐらい聞いてから行きなさいよね……バカ」
***
「説明は要らないと思いますが、おすそ分けです。いつもお世話になっているので」
『……わざわざお土産ありがとうカケルくん! ちょっと待ってね? いまお茶入れるから』
いつもの神々しいローブではなく、今日はフリフリのメイド服を着ているイリゼ様。
き、聞けない。なぜメイドなのか聞きたいけど聞けるわけがない。
『さあ、御主人様、お茶が入りましたよ? どう? カケルくん、似合うかしら?』
「……めちゃくちゃ似合います。可愛すぎて辛いです、イリゼ様」
『……そ、そんなに? それは良かったわ。良かったらお茶も冷めないうちにどうぞ』
イリゼ様の入れてくれたお茶はマジで神レベルの美味しさだった。2人でプリンを食べる。お茶とプリンの組み合わせ最高!!
『……本当に美味しいわね、このプリン』
超絶美少女の蕩け顔はヤバい。メイド服との合わせ技で破壊力が限界突破している。プリンを口に運ぶスプーンすら艶めかしく見えてきた。ああ、プリンになりたい。
今度、プリンになってイリゼ様に食べられる夢をリリスさまに見せてもらおうと心に刻む。
『うふふ、別に夢じゃなくても、カケルくんならいつでも食べてあげるわ。 ね、御主人様?』
げっ、心の声がバレバレだった!? そりゃそうか、神様だし。
「あ、あのイリゼ様、ミコトさんにプリン渡していただけませんか?」
『ミコちんに? ん〜、わかった。ちゃんと渡しておくわ。本当は駄目なんだけど、特別だからね!』
ウインクするイリゼ様、もういちいち可愛いから困る!
「ありがとうございます、イリゼ様」
『その代わり……ん!!』
「ん?」
『……イリゼにもご褒美ください、御主人様!』
ぐはっ、ダメだ可愛すぎて死ぬ……
イリゼ様とご褒美のキスをしている途中で残念時間切れ……いまとっても良いところだったのに。
***
「あら、英雄様、いらっしゃいませ!」
服飾店『シルクの翼』店主。ドワーフ族の女性ドミニクが恭しく頭を下げる。
「こんにちは! ドミニクさん」
「……今日はひとりでいらしてくれたんですね……」
浅黒い肌を上気させ浅葱色の瞳を潤ませるドミニクさん。腕を絡め推定Iカップを押しつけてくる。
イリゼ様、この世界やっぱりエロゲーじゃ? (違うわよ!!)
「ど、ドミニクさん、新しいデザートを作ったんで、おすそ分けです。こんど街で販売しようと思ってるので、感想を聞かせて下さい」
「あら、英雄様は料理まで出来るの? ますます素敵!! ぜひいただきます」
そう言って手を離すドミニクさん。
ふぅ、危なかった。ドミニクさんの極大双丘には俺の物理無効を無効にする精神支配があるからな。
難しい顔をしてプリンを食べるドミニクさん。ドワーフ族の口には合わなかったかな?
「……英雄様、このプリンとやらは駄目ね」
やはり口に合わなかったか……
「美味しすぎます。このまま販売すれば、このプリンを巡って多くの犠牲者が出ることでしょうね」
そこまで!? でも確かに刺激が強すぎるのは良くないかも知れない。
「そうね……まずプリンの硬さだけど、ちょっと私の胸と比べてみてくださる?」
ドミニクさんに促されプリンとドミニクさんの胸を触り比べてみた。
「プリンの硬さは、私の胸くらいの柔らかさで良いと思うわ。ちゃんと触って覚えて下さいね」
なるほど! 言われるまま様々な角度から、柔らかさと弾力を確認――――しまった! いつの間にか触ってしまった。警戒していたのに……まさか精神耐性まで無効化するというのか?
思考しながらも、並行動作スキルでしっかり手の動きは止めない。プリンのためだから仕方がない!
「ん…………え、英雄様、確認出来ましたか?」
熱い息を吐くドミニクさんの声に、はっと我にかえる。
「ど、ドミニクさん、とても参考になりました。また改良して持って来ますね!」
転移して消えるカケル。
「あら残念、あと少しだったかしら? でもこれ以上はやっぱり恥ずかしいわね……」
(またのご来店お待ちしております。英雄様)
いつも本作をお読み頂き誠にありがとうございます。
これで六章は終わりとなります。
ここからいよいよ反攻が始まります。カケルの活躍をお楽しみに。お話はまだまだ続きますので、今後も引き続き宜しくお願い致します!
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