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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第六章 西への旅路 

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束の間の休息

 俺の目の前には、色とりどりのカラフルな卵が並んでいる。そう、ハーピィの卵だ。


 ハーピィの卵の色は、ハーピィ自身の髪色と同じだ。カザネだったら、きっと桃色の卵を生むのだろう。見たいような見たくないような。


 イメージとしては、日本で食べたエミューの卵が近いだろうか。エミューの卵は綺麗なグリーンの卵で、大きさも鶏の卵の10倍程とほとんど同じだ。  


 ずっしりと重い卵を持ち、しばし考える。ダチョウやエミューの卵は、水分が多いため、目玉焼きや、卵かけご飯には向かない。しかし、甘みが強く、なめらかさに優れているので、ふわふわオムレツやプリンにはぴったりだ。


 ハーピィの卵はどうだろう? さっそく割って試食してみる。


(これはすごい……烏骨鶏の卵のような濃厚さとエミューやダチョウのような甘みとなめらかさが同居している。これならどんな料理にも使えるぞ) 


 ところで、この世界には、少量だが、米が存在する。サクラの先祖の千川桜(ちなみにこの人も俺は知っている)が、ユニークスキルで創り出したらしい。ついでに大豆も。千川さん、本当にありがとうございました。


 残念ながら、米の主要な栽培地がアストレアにあるため、このままでは近い将来、米が食べられなくなるかも知れない。魔人帝国許すまじ!


 醤油もないかと思ったけど、過去の異世界人が創り出したようだ。食へのこだわりは、さすが日本人だと思う。感謝して使わせてもらおう。


 ということで、卵かけご飯は確定として、あとはふわふわオムレツとプリンを作ろうかな。


***


「………クロエ、よだれ、よだれ!」 

「……はっ! 私とした事が」


「仕方ないだろ、さっきから凶悪なほど美味そうな香りがしてるんだからな!」 


 ネコの尻尾リーダーのセシリアが笑う。


「……ハーピィの卵って美味しいんでしょうか?」

「美味しいわよ、アリサちゃん。私も一度食べただけだけどね。ただ値段が高いから、見合っているかは微妙よ」


 ウサギの耳リーダーのカタリナが、アリサの疑問に答える。


「まあ、旦那様が作ったというだけで、美味しいのは間違いないだろうがな」


「……王子が玉子って……ふふっ」


「「「……サクラお前……」」」


「主様、今夜はアランに手伝わせてますから、かなり期待できますよ」


「ソニア、アランって誰?」


「魔人帝国でも有名な若手料理人です、サラ。主様がその才能を見抜いてエスペランサで契約した魔人ですよ」


「ふうん、となると貴方様は、それだけ本気ってことかしら」


「それもそうだけど、単に手が足りないだけだと思うわよ、シルフィ。なんかデザートも作るって言ってたしね」


「それは本当かクラウディア! ダーリンの作るデザートは絶品じゃからの」 


「この間のソフトクリームも美味しかったですよね、エヴァさま! でも、卵とデザートって全然結びつきませんけど……」


 可愛らしく首をひねるフリア。


「「「「「確かに!!」」」」」


 この世界には、卵を使ったデザート、というよりも、デザートそのものが少ない。主食の卵と甘味が結びつかないのは無理もない。


 皆、期待とほんの少しの不安を抱きながら料理が運ばれてくるのを待つのだった。



***



「…………」 


 食卓に会話は無い。食器の音だけがカチャカチャ響くのみだ。


 皆、無言で食べ続けている。見れば分かるが、決して料理がマズイ訳ではない。人間、本当に美味しいと無言になるというアレだろう。


(この状況で感想を聞くのも野暮だな)


 続けてふわふわオムレツを並べる。


 食べた瞬間、みんなの顔が笑顔になる。それだけで作った甲斐があった。


 最後に食後のデザートのプリンを出す。


(これは本当に自信作だ。喜んでもらえると良いな)


 アリサ以外のメンバーは、初めて見るプリンに躊躇していたけど、アリサが顔を蕩けさせると、みんな競うように食べ始めた。たくさん作ったんだけど、あっと言う間に無くなってしまった…………



「お兄ちゃん! このプリンすごく美味しかっ――――あれ、寝てる?」

 

 座ったまま寝息を立てるカケル。


 ミヅハが現れ、カケルを起こさないように、そっとウォーターベッドに寝かせる。


『……お疲れ様でしたお兄様……』


 皆に向き直るミヅハ。


『皆様、お兄様は、この2日間で百以上の町や村へ転移し、生存者を探し続けていたのです。ほとんど睡眠時間もとらずに。お兄様には口止めされていましたが……』


「な、なんでそこまで……」


『……みなさんの家族や友人がそこにいるかもしれないからに決まっているじゃありませんか! お兄様は、あなた方自身はもちろん、それを形作る全てを大事にする方です。そんな方だから私は……』



「御主兄様……」

「「貴方様……」」

「旦那様……」

「ダーリン……」

「カケル様……」

「主様……」

「カケルくん……」

「カケルっち……」


『だから……せめて今だけは、束の間の休息をプレゼントしてさしあげませんか?』



***



 気が付いたら、ベッドで寝ていた。ミヅハのウォーターベッドか……寝落ちしちゃったんだな。


 なんだかとっても良い夢を見ていた気がするんだけど……いや、夢じゃないか。周りを見渡して頬が緩む。


 だって、とても幸せそうな顔で寝息を立てる、愛しいみんなに囲まれて寝ていたんだから。 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[気になる点] カケル君に知らない異世界人はいないんじゃないかな(ォィ [一言] 今はこうでも、いつかは睡眠を必要としない疲れを感じない存在になりそうな気がするぜ(;゜Д゜)
[一言] 楽しく読ませてもらってますが続きはまた明日で 時間が足りない
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