49 閑話 ミコトと美琴
おかげ様で1万PV達成いたしました。わずか二週間の快挙(自分の中で)です。初めての投稿で、まさかこんなに読んでいただけるとは。本当にありがとうございます。
「ミコトさん――次、お願いします!」
私は、不知火美琴。異世界で勇者をやっています。
現在、私は連日死神のミコトさんから猛特訓を受けている。
『では問題……プリメーラ騎士団の騎士団長セレスティーナが、カケルを呼ぶ時の呼称は?』
「はい、旦那様!!」
『ですが……エスペランサ砦隊長のサクラは、カケルのことを何と呼ぶ?』
「えっと……王子様、ですよね!!」
『……正解。なかなかやるようになった』
「やった! ありがとうございます」
『次はちょっと難しい。挑戦する?』
「もちろんです、ちゃんと予習復習してますから」
『セレスティーナを殺されそうになったカケルが、怒りのあまり魔人ヴァロノスにぶつけたセリフは?』
「長文問題ですね、「俺のセレスティーナになにしてくれてんだ!!!」です!」
『……完璧。美琴、末恐ろしい子』
「えへへへ、そんなことありますけど~」
『調子に乗らない。レベルを一段上げる……カケルの初めての召喚獣は?』
「くっ……角ウサギのラビです」
『……ですが、ラビが喋るときに付ける語尾は何?』
「え……わ、わかりません」
『ふっ、美琴、まだまだ甘い。答えは……うさ』
「えーっ、そんなのレポートにありましたっけ? だいたいそれ、カケルさんに関係ないですよ! ずるいです!!」
『む、確かに。じゃあ今日はこれまで』
「はーい! でも、ミコトさん、こんな特訓して意味あるんですか? 初対面で色々知られてたら、私だったらめっちゃ怖いんですけど……」
『大丈夫、もしばれてもカケルなら受け止めてくれる。カケルの懐の深さは、神クラス』
「確かに無理のある妹設定も普通に受け入れてますね……ううう、でもやっぱりばれたら不味いんじゃないですか~」
『……それより、美琴はもう決めた?』
「決めたって、何をです?」
『……カケルの呼び方』
「は? カケルさんじゃダメなんですか?』
『ダメ……フリアと被ってる』
「フリアって……ああ、でもあの子まだ子どもじゃないですか?」
『後5年もすればわからない。早い者勝ち』
「そんな……もうまともなの残って無いじゃないですか!」
『そんなことない、結構ある』
「えー、じゃあ例えば何ですか?」
『…………腹案ならある』
「なに政治家みたいなこと言ってるんですか! やっぱり無いんじゃないですか!」
「それに、それをいうならミコトさんだってセシリアさんと被ってますよ!」
『……大丈夫、何とかする……イリゼが』
「また女神様ですか……最初の印象はアレでしたけど、最近女神様が気の毒になってきましたよ」
***
『もしもし、やっほーミコちん、どうしたの? レポートならさっき送ったはずだけど』
『え……セシリアのカケルくんの呼び方を変えて欲しい? いや、出来なくはないけど……ちょっ、泣かないでミコちん! わかったから! で、何に変えればいいの? え……私が考えるの? 私これでも結構忙しい――ごめんごめん、わかった! 適当に考えておくから。え……この世界の女性が、今後カケルくんをカケルって呼べないように設定しろって? いや、それはさすがに……え、じゃないとその都度、私が別の呼び方を考える羽目に? え、こんなこと親友の私にしか頼めないって? むふふ〜、わかった! わかりました!! この親友にどーんと任せなさい』
***
「ミコトさん、どうでした? さすがに女神様も無理なんじゃ……」
『大丈夫。全部やってくれるって』
「マジか……イリゼ様、まじ神」
***
『お呼びでしょうか、イリゼ様』
『うん、みんなよく来てくれたね。ところで、この中から一つ気に入ったものを選んで欲しい』
『……カケルっち、カケルん、カッちん……なんですかこれ?』
『余計なことは考えず、フィーリングで選んで欲しい。とても重要なことなんだ、君たちの感性にかかっているといってもいい!!』
『わ、わかりました。これから全員で緊急会議を開きます』
『うむ、結果を楽しみにしているよ』
***
「おはようございます! セシリアさん」
「おはよう! カケルっち、今日も良い男だな」
「か、カケルっち?」
天界の緊急会議は紛糾し、結論が出るまで三日かかったという。




