26 セネカ村への帰還と初依頼達成
翌朝、簡単な朝食をすませ、オークの集落跡を出発する。
集落跡には、念のため、シュタルクら、ハイオーク5体と、シュヴァインを残していく。討ち漏らしたオークなどがいた場合、戻ってくる可能性があるからだ。
午後には、プリメーラから、後発の調査隊が到着するはずなので、調査隊が到着したら、こちらに戻す予定だ。
オークのいなくなった森は平和そのもので、昨日まではなかった鳥のさえずりが聞こえてくる。
「……ところで皆さん? いつまでそうしているつもりだ?」
背中にはサラ、右手にはシルフィ、左手にはエヴァンジェリン、そして……
クロエは、俺の肩に乗って、いわゆる肩車状態だ。
出発する際、当たり前のように3人が定位置(定位置ってなんだよ)に乗ったところ、クロエが
「御主人様、申し訳ございません。昨日走りすぎて足が痛いのです」
などと可愛いことを言ってくるので、空気を読める俺は、優しくこう言ってやった。
「クロエ、すまなかったな。俺の肩なら空いているから、乗りなさい」
というわけで、傍から見たら絵的に意味の分からない状況になっている。
「森を抜けたら降りるんだぞ」
「「「「はーい」」」」
うん。気持ちの良い返事だ。本音を言えば、別にこのままでも一向に構わない。感触は最高だし、いい香りもする。だが、さすがに人目は気になるからな。もう手遅れかもしれないが……。
セネカ村の前で、カタリナさんたちと一旦別れる。
「カケルくん、じゃあまたギルドでね。彼女たちは責任をもってプリメーラまで連れて行くから安心して」
「カタリナさん、よろしくお願いします。じゃあまた後で――あ、そうだ」
カタリナさんにそっと耳打ちする。
「本当! ありがとうカケルくん。大好きよ」
カタリナさんが抱き着いて頬にキスしてくれた。ラビをプリメーラに着くまで貸しますよって言っただけなんだけど、喜んでくれて何よりだ。
「貴方様、もう空いている席はないのですが」
シルフィが心配そうに言うが、俺乗り物じゃないからね。
「シルフィたちは、一緒にセネカ村にいくのでいいんだよな?」
「もちろんです」「ボクも一緒に行くよ」「ダーリンの行く場所が妾の行く場所じゃ」
……エヴァさん、ダーリン呼びは恥ずかしいんだけど。
とりあえず、5人でセネカ村に入る。場所はわかっているので、今回はそのまま村長の屋敷へ向かう――つもりだったが、わかりました、串焼きですね、買いましょう。
クロエとエヴァの無言のプレッシャーに耐えきれなかった俺は、串焼きの屋台に並んでいる。
たくさん買ったら、屋台のおじちゃんがいろいろおまけしてくれた。美人は得だな。
村長の屋敷に着くと、すでにギルドから情報が入っていたらしく、すぐにディエゴ村長とアントニオさんが出てきて歓迎してくれた。
「いやあ、オークジェネラルを討伐しちまうなんて、信じられないな。おかげで森も元に戻ったし、本当にありがとうカケルくん」
頭を下げるディエゴさん。
「いえ、俺一人の力ではありませんし、ディエゴさんがいち早く異変に気付いて依頼を出さなければ、もっと被害は深刻になっていたと思います」
「そう言ってもらえると依頼を出した甲斐があったよ。それから、承認印押しておいたから、初依頼達成おめでとう」
「ありがとうございます。これで、俺も本当の冒険者になれたってことですね」
「……一日でギルドカードがシルバー(C級)になった奴が今更だがな」
ディエゴさんが苦笑いで返す。
「しかし、カケルくんもやるなあ。全員君の彼女かい?」
にやにやして聞いてくるディエゴさん。
「へ? いや、ちが――」
「「「「そうです」」」」
君たちなんでそんなに息ぴったりなの?
「やはりそうか。妻がごちそうを用意してるから、よかったら食べていってくれ」
「いや、せっかくなんですが、急いでギルドに――うっ……」
背後から刺すようなプレッシャーが……まさか、オークジェネラルが使っていた威圧なのか……
「御主人様、せっかく奥様が用意してくださったのです。断るのは人の道に外れるのではないのですか?」
「ダーリン、腹が減っては戦は出来ぬというではないか。何、慌てなくともギルドは逃げたりはしないぞ」
二人とももっともらしいこと言ってるけど、食べたいだけだよね。まあせっかくだし、お言葉に甘えるとするか。
***
プリメーラ ギルドにて
「カタリナ、カケルたち遅くないか? もう戻ってきてもいいと思うんだけど……」
「……うるさいわね。遅くていいのよ。私のモフモフを邪魔しないでくれる?」
一心不乱にラビをモフるカタリナ。
「おい、アーロン、カタリナはあの調子だし、俺らも酒でも飲んで気長に待ってようぜ」
「それもそうだな、今回はろくに戦ってないのにたっぷり報酬もらえたしな」
「おい、クラウディア、カケルくんたちはまだ戻ってきていないのか?」
「ギルマス、クロエが一緒なんですから、おそらくセネカ村で食べ続けていると思われます」
「そうか……ではアルフレイドには、遅くなりそうだと伝えておこう」
結局、カケルたちがギルドに戻ってきたのは、それから3時間後だった。
いつも本作をお読み頂き誠にありがとうございます。
これで2章は終わりとなります。
ここから新たな戦い、急展開となります。もちろん新たなるヒロインも。お話はまだまだ続きますので、今後も引き続き宜しくお願い致します!
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おそらくガ〇ガ〇君のアイスで当たりが出た程度には。ふふふ。
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