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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第十一章 勇者な美琴と天才の刹那 

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ロストテクノロジー

「まったく……いい? この秘密は墓場まで持っていくの! わかった?」


 ようやく少し落ち着いた白崎さんが、頭を揺さぶるのを止めてくれた。ちょっと酔ったかも。


「はいはい、そもそもそんなに嫌なら置いておかなければよかったのに……」


「嫌では……ない。ただ恥ずかしかっただけ。天才の私でも分からなかったこの気持ちの正体、駆は知ってる?」


「この気持ちって、会えて嬉しいとか一緒に居たいとか、抱きしめたいとか……キスしたい、とか?」


「う……最後の方は……その……うん」


「そうだな……無理に言葉にしなくてもいいんじゃないかな? したいようにすればいい。せっかく異世界に来たんだしな」


「うん、そうだね。そうしてみる。じゃあ早速リトライ!」


「ん?」 


「酷い……ほんと駆は言わないとわからないの―――ん……」


 白崎さんの口をふさいで優しく抱きしめる。


「不意打ち……ずるい」



 

 誰の邪魔も入らない幸せな時間が穏やかに過ぎてゆく。



「なあ、時間が出来たらこっちの世界に作ってみないか? ネズミーランド」


「それいいかも!! 私のスキルなら多分出来る」


 白崎さんのユニークスキル『机上の空論』は、理論上可能であれば、実現できてしまう規格外のスキルだ。材料さえあれば具現化可能とかどうなってんの?



「よし、白崎さん、土地も金も問題ないし、世界が落ち着いたら絶対2人の夢の国作ろうな」


「うん、だけど……その白崎さんって呼び方……」


「え? 駄目か?」


「駄目……刹那って呼んで」


「わかった……刹那」


「ふふっ、なんか良い」


 良い雰囲気になったので、とりあえずしばらく2人でイチャイチャした。


 

「ところで……世界がどんな感じになってるのか気になる。それと駆の現状も……」


 刹那の疑問はごもっともなんだけど、すでにジト目なのはなぜだ!? 


 まさかすでに予想済み? さすがは天才。じゃあ説明しなくても……え? 駄目?


 

 はい、説明させられましたよ。全部。こと細かくね。さすがは研究者、容赦が無い。




「……現状は把握した。何か言い残したことは?」


 なんでそんな死刑宣告みたいな感じになってるの? 怖いよ刹那!?


「……ありません」



「そう。なら今度は私。現状身寄りがなく、知り合いもいない」


 そりゃそうだな。知り合いなんて、みんなとっくに死んでいるだろう。


「今の世界で使えるお金も持っていない」


 刹那のお金は古過ぎて使えないけど、骨董的な価値はありそうだけどな。金貨は鋳潰せるし。


「さて……そんな私はどうすればいいと思う?」


 刹那の期待のこもった眼差し。



 そんなの俺の答えは決まっている。



「刹那、俺のお嫁さんになって共に生きてくれないか? そして一緒に暮らそう」



「…………うん。私でよければ」


 その屈託のない笑顔と綺麗な涙に俺はまた見惚れてしまった。


 今度は間違えない。その手は絶対に離さないから。



***



「お久しぶりです、マスター白崎。お元気そうでなにより」


「増太郎、お疲れ。これからも頑張って」


 ええっ!? それだけ? ちょっと可哀想じゃないか?


「刹那、増太郎さんも大変だから、交代要員作ってあげたら?」


「……なぜ?」


 心底意味がわからないといった表情の刹那。そういえば昔から俺以外の人間にはこんな感じだったな。


「刹那がなまじ感情を与えたせいでストレスが溜まるらしいんだ」


「なるほど。駆がそう言うならそうする」


『机上の空論!! 出でよ増次郎!!』


 刹那のスキルにより、もう1体のオートマタが誕生した。


 これなら交代制にも出来るし、話し相手にもなる。



「ありがとう、ミスターカケル。何もお礼は出来ないが、いつでもダンジョンに歓迎するよ」


「どういたしまして。部屋の片付けはまた今度あらためて来ますね!」


 増太郎さんはすごく喜んでくれた。うんうん、本当に良かった。




「じゃあ刹那、みんな待ってるから行こうか」   


 増太郎さんと別れてダンジョンを出ることにする。


「ふーん、そんなに早く他の婚約者に会いたいんだ?」


 ちょっとふくれて見せる刹那。感情表現は薄いけど、今なら彼女の気持ちが良く分かる。



「馬鹿だな。自慢の刹那を早く紹介したいからに決まってるだろ?」


「ふ、ふーん、ならそういうことにしておいてあげる」


 満更でもなさそうな刹那が可愛くて仕方ない。



「刹那、ちょっと寄り道して行こうか? もう少し2人きりでいたいからさ」


「うん、私も。そうだ! ねえ駆、デザートが食べたい。この世界そういうの全然なくて……良いお店ないかな?」


「残念だけど、そっち方面は進歩無しだ。でも俺が作ったデザートは美味いぞ」



 2人でカケルノセレスティーナ城の屋根の上で手作りプリンとソフトクリームを食べる。


「……美味しい」


「だろ? 自信作なんだぜ」


「そうだ、私がソフトクリーム製造機作ってあげる」


「マジで? それならついでに冷蔵庫も作って欲しいな~なんて」


 刹那がいれば大抵のものは作れる。夢が広がるな。


「……ちょっと待って、冷蔵庫無いの? 私が昔作ったはずなんだけど?」


「無いな」


「通話の魔道具は? 飛行艇は? 印刷の魔道具は? 魔導列車は?」


「ああ……言いにくいんだが、お前の作った魔道具、大半はロストテクノロジー扱いになってるぞ」

 

「そんな……もしかして文明退化してる!?」


 愕然とする刹那だったが、その表情は明るく楽しそうだ。



「でも……今度は駆と一緒に生きていけるんだから、それだけで良い」


「刹那……って寝てる!?」


 そりゃそうか……800年近く寝ていたんだから。反動も大きいよな。



 寝顔を眺めながらサラサラの白髪をそっと撫でる。


(ありがとな刹那……俺を待っていてくれて)



*********************

【 登場ヒロイン名鑑 】


【名 前】 白崎 刹那(しらさき せつな)(女)

【種 族】 人族

【年 齢】 27

【その他】 史上最高の錬金術師・天才科学者 


 史上最年少でヌーベル賞を受賞した天才ロボット工学者。同じ年の天才同士、カケルとは幼いころから接点があった。生まれつき色素が薄く白髪にグレーの瞳をしている。日本にいた時はカケル以外の他人との交流を嫌い、ほぼ研究所に引き籠っていた。飛行機事故を機に異世界に行き、カケルと再会するために研究を続け、800年近い年月を休眠状態で待ち続けた。肉体年齢が当時のままなのは、転移してすぐダンジョンマスターとなり老化を止めたから。理論を現実化できる【机上の空論】というユニークスキルをもつ。 



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i566029
(作/秋の桜子さま)
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