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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第十章 魔人帝国編

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もうお代わりは結構です。

『それでは話を聞こうか』



 2杯目のコーヒーを飲み終わった頃、ようやく話が始まった。


 笑い過ぎだろ、どんだけツボったんだよ。


 おそらく皇帝陛下の腹筋はボロボロに違いない。



「こちらの要求は、侵攻作戦の即時停止と連れ去られた人々の返還を含んだ条約の締結。そして、コーヒーの輸出を含めた交易をお願いしたい」


 皇帝陛下は、深い理知的な瞳をわずかに見開き声を発した。


『交易に関しては許可しよう。だが、連れ去られた人々というのは初耳だな。真かアリーセ?』


 皇帝としてではなく、父親として優しく尋ねるギャラクティカ。


『はい、父上。これが私たちが命懸けで集めた証拠の資料です』


 アリーセはゼロたちが集めた資料を差し出す。


『ふむ、ヒルデガルド』


『はっ、透視(スキャン)!!』


 ヒルデガルドのスキルは、人だけでなく、物にも有効だ。彼女を欺くことは出来ない。


『こ、これは……酷いですね。間違いありません。大量の犯罪行為が行われています』


 あまりの非道さに顔色が悪くなるヒルデガルド。



『カケル殿、どうやら私の知らぬところで暴虐行為が行われているようだな……すべて余の不徳の致すところだ。すまぬ』


 頭を下げる皇帝陛下。


 どうやらこの件に皇帝陛下は直接関わってはいないようだな。


「では、すぐにでも作戦を止めていただけませんか?」


 その言葉に深いため息をつくギャラクティカ。

 

『余が命じたところで、作戦は止まらないだろう。すでにこの国の実権は皇太子であるユリウスが握っているのだ』 


 強大な力を持つユリウスは国民の人気も高く、すでに皇帝の任命権を持つ選帝侯会議の過半数を自らの取り巻きで固めている。


 つまり、ユリウスがその気になればいつでも皇帝になることが可能なのだ。



『おそらくユリウスは、今日の御前試合での優勝と魔大陸からもたらされる労働力を手土産に、満を持して皇帝の座に就こうと考えているのだろう』


 魔大陸とは俺たちが住んでいる大陸のことだ。皮肉にも、互いに相手を同じように呼んでいたんだな。



『だがな、ユリウスの考えも分からないでは無いのだ。カケル殿……魔人帝国は緩やかに滅びに向かっておる。子どもが生まれなくなっているのだ』


 魔人帝国は、長年超少子化に悩まされていて、高齢化と労働力不足は深刻化の一途を辿っているらしい。


『そこでユリウスは、他の種族と交流を持つことで、少子化と労働力不足を補おうと考えたのだ』

 

「それだけ聞くと何も問題ないように思えますが……」


『その通りだ。そもそも、地下トンネル事業は、侵攻の為ではなく、交流と交易のために始まったのだからな……だが、ユリウスは変わってしまったのだ』


 悲痛な表情で語るギャラクティカ。


 変わってしまったのか……それとも変えられてしまったのか……


 直接会ってみないと分からないな。



「わかりました。要はユリウス殿下を説得すればすべて解決ですね。出来れば今日の御前試合に俺も参加したいのですが……」



『それは可能だが……どうやってユリウスを説得するつもりだ?』


「そんなの決まっているじゃないですか! ぶん殴って目を覚まさせてやるんですよ」


 分かりやすく握り拳を掲げてみせる。



『そうか……ユリウスをぶん殴るか……ぷっ、ぷくくくっ。ワハハハハッ!! あ、あのユリウスを……ぷっ、くくくく……』



 しまった……また皇帝陛下の変なツボに入ってしまったのか? よく分からないが長くなりそうだ。




『アリーセ殿下、カケル殿、陛下が落ち着かれるまでコーヒーでもどうぞ』 


 おおっ! さすがは皇帝付きの執事長。気が利くね!


 カタッ、カタッカタッカタッカタカタカタカタ……パリンッ!


 うわあああ!? 執事長、皇帝陛下と笑いのツボ一緒じゃないですかっ!? コーヒーカップ振動で割れてますけどおおっ!? 



***



『…………スマンな、ちょっと腹筋の治療が必要になった』


 でしょうね。はい、神水どうぞ。


 コーヒーの飲み過ぎでトイレに行きたくなって来たよ。



「皇帝陛下、最後にお願いがあります」


『ふむ、何だね?』


「娘さんを……アリーセを俺にください」


『ふぇっ!? あ、あああの、私からもお願いします、父上』


 慌てて頭を下げるアリーセ。


『ほお……あのアリーセが……うむ……ん? 何だ? ヒルデガルド?』


 皇帝陛下に何か耳打ちするヒルデガルドさん。


『そうか……なるほどな……ぷっ、ぷくくくっ。ワハハハハッ!! それが条件か……ぷっ、くくくく……』


 何を言ったんですかヒルデガルドさん!?


 いや、執事長、もうコーヒーはお腹いっぱいですから!?


***


『……分かった。アリーセとの婚約を認めよう。ただし、ヒルデガルドも一緒に娶ることが条件だ。いいね?』


 えええぇっ!? マジですか!? 良いんですか、ヒルデガルドさん?


「わかりました。精一杯幸せにすると誓います」


 ヒルデガルドさんのそんな顔見てしまったら断れる訳ないじゃないですか。


『むぅ……仕方が無いですね。でも……これで晴れて婚約者に……んふふ』


 アリーセも喜んでいるし、良かったな。



『しかし、カケル殿、ユリウスは強いぞ?』


 おそらくユリウスは強いだろうな。


 だけど――――


「ご心配無く、俺は最強なんで」



 首を洗って待ってろよ。ユリウス。


 俺がお前を絶対に止めてやるからな。



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i566029
(作/秋の桜子さま)
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