第92話 逢魔卿、スイムスーツを作る
逢魔卿がリセンボンを引き連れてやって来た。
今回はお忍びだと行っているので、お連れは十人くらい。
空飛ぶフグが、ふよふよとタマル村に着地する。
そこから、ローブみたいな格好をした逢魔卿が降りてきた。
普段から、こういう露出度の極めて低い服装をしている人なのだ。
女性っぽいことだけは分かる。
あと、ローブがオレンジだったんで気付かなかったが、肌の色もオレンジ色なのな。
『タマルよ。楽しみにしてやってきたぞ。さあ早くわらわを案内せい』
フグから飛び降りて、小走りに俺のところにやってくる。
「グフフフフ、準備は万端だぜ」
『タマル様が邪悪な笑い声を漏らしましたな』
「機嫌がいい時はちょこちょこああいう鳴き声をあげるよねえ」
人を動物みたいに言うな。
彩色洋品店に足を踏み入れた逢魔卿はウキウキである。
いそいそと頭に被っていたフード付きの帽子を外した。
ウェーブした赤い髪が出てくる。
一見すると肌色がオレンジな人間っぽいのだが、ところどころにヒレみたいなのがある。
やはりリセンボンの上位種なのかも知れぬ。
「ようこそおいでくださいましたー。はい、こちらこちら」
「……どうも。採寸させてもらいます。ええと……好みの色はありますか」
早速作業が始まった。
俺は腕組みしながらこれを見ていたのだが、後ろからポタルがやって来て、羽交い締めにしてくるではないか。
「うおーっ、何をするーっ」
「見ちゃだめでしょー!」
「ウグワーッ!」
引きずられて外に出る俺である。
一瞬だけ、ローブの下の逢魔卿の姿が見えたが、うーん、プロポーションいいなあ……!
外で想像力をたくましくしながら待つことにする。
周囲ではリセンボンたちが、野原を駆け回ったり寝転んだりしているではないか。
「そんなにはしゃぎ回って、ただの野原が珍しい?」
『いやあ、こんな鮮やかな空とか緑とか、タマル村の外にはないですからね』
『まだまだ世界には兄弟神の影響が残ってて、全体的にくすんだ感じの色合いなんです』
「ははあ。この辺はヌキチータの支配領域になったので、美しい自然が戻ってきた感じなんだな。そう言えばデッドランドマウンテンは鮮やかな自然にあふれていた。あそこも兄弟神の影響下に無いからかな」
それを考えると、兄弟神はろくなものではない。
自分のことばかりで自然環境のことなど何も考えていないからな。
『タマル様も欲望のままに突っ走ってますが、その結果が誰かのためになったりしてますからな。人徳ですなあ』
「俺はスローライフがしたいだけだからな……。穏やかに暮らしたい系の人だと幸せになる方向性が合うんだろう。あと今さりげなく俺の思考を先回りしたな」
『タマル様は顔に出ますからな! リセンボンたちは、タマル様の欲望の幸せな犠牲者というわけですな』
「上手いこと言うね」
『ダジャレだけでは芸がありませんからな。我も日々、ポエムの鍛錬を行っているのですぞ』
ラムザーが得意げである。
体格がいいだけで戦闘力的には凡庸なラムザーは、何気に頭脳派なのだ。
こういうセンチメンタルを理解する魔人が、ヘルズテーブルに馴染むのは難しかろう。
「私はポエムとか全然わかんないんだけど」
「男をたぶらかす魔曲を歌うのに、ポエムを解さぬとは一体」
「あんなのただの音でしょ」
「リアリスト!」
ポタルにとっては生来の能力だしな。
さもありなん。
少しすると、サンが顔を出した。
「ちょっとちょっと、タマルさん」
「何かな」
「今測定は終わったんですけど、ここにしばらく滞在するんやろ、彼女? あの服装はちょっと大変そうやない?」
「確かに、ローブ姿では軽快に動き回れないな。……それは俺に、逢魔卿に服をプレゼントしろと仰っている?」
「はいー。既製品でも彼女にバッチリ合うのは、ちゃんと用意してますよって」
「商売上手め」
「おおきに」
いそいそと店内に行く。
ポタルも難しい顔をしてついてくる。
「どうしてポタルがいるのだね?」
「ライバルを警戒するためだよ!」
「正直!!」
もはや隠そうともしない!
なお、逢魔卿は薄着一枚の姿で、まったりと椅子に腰掛けている。
下着みたいなもんである。
『おおタマル。私に服をくれるそうではないか。ありがたくいただこう』
「うむ。普通の服とか分からないだろうから、この辺からそれっぽいのを選ぶ……」
「これ!!」
ポタルがビシッと一着を指し示した。
こ、これはーっ!!
清楚な白いワンピースなサマードレスである。
「じゃあこれで」
『ほう、これか。むむむ、なかなか露出度が高くはないか? これでは防御力に難があるだろう』
視点がそこか。
流石はヘルズテーブルの住人。
「だが安心して欲しい。彩色洋品店の服はどれも、破壊不能オブジェクトだ。このワンピースなサマードレスは、布地の部分であれば魔人侯の一撃を受け止められる。なお、すっごく痛い」
『ダメではないか。だが、そうだな。機能性など追求せずとも、タマル村にいる間はこれを着るのも良かろう』
逢魔卿は笑い、俺に服を奢られるのであった。
こんな時のためにポイントがかなり溜まっていたので、景気よく支払った。
既製品は安いので1500pt、逢魔卿のスイムスーツは3000ptだ。
「よし」
敵に塩を送ったようなものらしいのに、ポタルはなぜか満足げなのだった。
女子仲間のコーディネートをするのが趣味になってきているのではないか……?
▶UGWポイント
9700pt
うーん、これは三人目のヒロイン!
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