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あかないキミの、異能世界  作者: 竜世界
ProgressⅥ-MAGICAL NIGHTMARE-
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第46話 移ろう山に華を捧ぐ(前編)

 統合四日目のフィールドは廃墟と化したコンクリートジャングル。そこに現れた二体目のマインゴーレムは出現演出を除けば全ての要素が一体目と変わり無い。


 そんな事実を(あずか)り知らぬ居合わせた四名の中から、深紅の髪の女性が(かたわ)らの金髪の女性に言う。


「条件を満たしたオブジェクトを叩き続けないと準備が整わないの、アタシに攻撃が来ないようお願い」

「任された」


 残る男性二名も一人がマインゴーレムにリボルバーを向け、一人がデザイン性を帯びたハンドガンを構えた。


「折角向こうからやって来たんだ……やってやろうじゃねぇか」

「え、援護しまーす!」


 リボルバーの引き金が引かれた結果、弾は無かった為、零から二十の乱数が発生し八が出た後に三が出て、十二個の無効弾と五個の手榴弾に三個の強化弾で構成される、のべ二十個の手榴弾がマインゴーレムの周囲に生成。


 この正十二面体の規模は対象のサイズに依存する為、マインゴーレムを檻のように取り囲む光景が出来上がったが……その見た目に反し実際は足元に八個の手榴弾が十二個の余分な手榴弾に紛れて撒かれたに過ぎない。


 既に一桁だった蓄積ポイントから十三引かれようと零を下回る事は無いのだが、零を含む二十までの乱数の期待値は十一で、零を含む十一までの期待値は五・五。


 期待値を引いても無効弾九個で十八減少、通常弾六個で六、強化弾五個で十……マイナス二ポイントとなる為、期待値を上回る目を続けて出さなければ蓄積ポイントを増やすのは難しい。


 そんなヴォルフェクスのリーダーに続き、少年のハンドガンが放った青白いビームの威力は一定で、マインゴーレムの胸部を直撃……着弾による中規模爆発は見た目通りの結果をもたらした。


 このビームの射程は百六十メートルで着弾時の距離が短いほど威力が増加。攻撃対象に密着して撃てば最大威力となるが、その際の爆発は一切の軽減無く使用者も巻き込む為、ある程度離れて撃つ事が要求される。


「やっぱお前の銃、威力あるわ」

「でも、リーダーの方が……」


 蓄積ポイント二十で得られるリボルバーの弾丸ならばビーム少年の威力を上回るのは事実だったが、発射する度に指を動かして引き金を引く事だけが条件の少年のビームには回数制限が無い為、安定したダメージ効率を有する。


 金髪の女性はマインゴーレム表面の多少(えぐ)られた部分が金属的なもので塞がって行く様を見ながらビーム少年に言った。


「今のところ毎回違う場所を攻撃した方がよさそうだな」

「丁度、再生部分が金属みてえだしな……いい目印だぜ」

「わかりました!」


 やがてマインゴーレムは自身の周囲に現段階では石の塊と言えるものを一個生成すると男性二人に向け発射。突如現れた人間サイズ以上の物体に動揺する二人だったが、見てから回避可能な速度と気付くや散開した。


「ま、一方的に攻撃はさせてくれないよ、なっ!」


 言い終えると共にリボルバーの引き金を引く男性。八の無効弾、六の通常弾、六の強化弾となり蓄積ポイントが二となったが……リボルバーの弾倉(シリンダー)内にはまだ弾は無い為、手榴弾攻撃の連発は可能。


 撃った際に生成した手榴弾が一個でも残っていると弾倉だけが回転し、その時の手榴弾生成は無効となる事を踏まえれば攻撃間隔はやや長い……そんな性質を把握している男性は今浴びせた爆発が収まるのを見計らった上で更に引き金を引く。


「ちょっといいかしら」


 深紅の髪の女性が物陰から現れるや、手にした両刃の剣を何度か素振り。


 剣が振られた途端、エストック同様長めに伸びた刀身が細かく分割されるような挙動で全体的に伸ばされ、振り終える頃には元の剣の長さに戻った。


 この剣は振る動作を与える度に鞭のようにしなりながら伸び、次の瞬間には元の形状に戻るのだが……そんな蛇腹剣を今は牽制程度に振り回しマインゴーレムへの接近を試みている。


 自らの直接攻撃が届きそうな距離まで来たのを捉えたマインゴーレムは早速その巨大な拳で深紅の髪の女性を殴る動作へ。


「あぶない!」


 少年の声を他所(よそ)に軽やかな動きで後ろに下がって拳による一撃を回避した女性は武器をエストックに切り替えるやマインゴーレムの右手の甲を突くと、マインゴーレムの重心と見積もれそうな位置に金色の薔薇の幻影が淡く浮かび上がった。


「よし、この段階のまま援護に……回る前に一発入れとくわ」


 女性が更に後ろへ下がって行く中、マインゴーレムの右腕全体をシアンの色を帯びた風のようなものが渦巻き、ズタズタに切り裂くような光景が繰り広げられた。


 実際は表面にある程度の損傷を与えたに留まるが、ダメージソース要員としては少々無視出来ない働きか。


「風使いか」

「あの薔薇はアタシの消費状況だけに影響するから遠慮なく攻撃当てていいわよ」


 リボルバーの男性にそう返した女性の目の前にある薔薇は金色で四段階目。


 生成したエストックで突くと出現する水色輪郭の薔薇が第一段階目で、更に突けば第二段階である白い薔薇に。


 白い薔薇の段階では蛇腹剣状態の維持は三十秒までだが、表示された白い薔薇を蛇腹剣で攻撃している間はそのカウントが止まり、蛇腹剣で一定ダメージを与えれば次の段階である薄ピンクの薔薇に変化。


 第三段階移行は蛇腹剣の使用制限が無くなって常にエスクトックと切り替える事が可能となり、エストックで生成する薔薇は第二段階目の白から始まる。


 そんな薄ピンクの薔薇を五つ設置する事が現在の金色の薔薇になる条件だが、薄ピンクの薔薇段階から使えるようになるシアンの風も金になればチャージ速度向上という形で強化される。


「私は金属部分を攻撃するが、(みな)は石部分を頼む」


 金髪の女性がやっと行動を始めたかと思うと浮かべた合金ナイフを何本かでローテーションする方式で金属化したマインゴーレムのほぼ一箇所を攻撃して行く。


「この耳障りで頭に響く音……金属って感じだな」


 リボルバーの男性がそう呟いてから暫くして深紅の髪の女性が発言。


「あらあら、攻撃してない箇所で金属部分が増えて行ってるわね」

「とりあえず全部金属にしてみるか……お?」


 リボルバーの男性が引き金を引くと十二の通常弾と八の強化弾……得た二十八のポイントから二十が引かれ八つある弾倉の何処かに弾丸が補充された。


 起きた爆発の派手さは今までとは段違いで、マインゴーレムの膝周りから吹き飛ばされた破片も大粒……空かさず胴体の方に少年がビームによる爆撃を浴びせる。


「一旦、裏側に回るか」


 リボルバーの男性の提案を受け少年はハンドガンを解除し、


「じゃ、じゃあ! ボクが見て来ます!」


 少年が地面に手を付くと次第に氷が広がって行った。


「そういやお前、氷の上を素早く移動出来たな」


 銀髪銀瞳の少年の能力はハンドガンを解除する事で自らが生成したものかを問わずに氷と呼べるものの上を滑走出来る為、生成される氷がマインゴーレムの背後に回れる程の規模になるのを待っていた。


 少年の一人称が「ボク」だった事に亡き少女の事をぼんやりと思い出しながらも金髪の女性が言う。


「私が見て来る。攻撃は継続した方がいいだろう」


 そう言われ「は、はい!」と返した少年の手にハンドガンが生成されると広がっていた氷は蒸発という過程さえ無く消え失せた。


「氷の上を滑走しながらビーム撃てれば、こいつもサマになるんだがなぁ……」


 同時使用出来ない事を嘆くリボルバーの男性の声を背にマインゴレームへと接近して行く金髪の女性。


 あのデカイ図体で随分と(びん)(しょう)だこと。


 深紅の髪の女性がそう心の中で呟く頃には、金髪の女性はまだ金属化していない脚部分にナイフが何本か突き刺さるよう操作……それらを足場に次々と飛び跳ねて行くと傍にあった建物の二階へと飛び込む。


 再び姿を見せた頃にはマインゴーレムの背面を見渡せる距離にいて、


「脚部分は(ほとん)どが金属で、他は二割くらいだ!」


 ここぞとばかりの大声を発した。


 そんな中、目の前の攻撃対象を見失ったからかマインゴーレムは大きな塊を生成していた。アイアン部分が増えたので先程よりも色味が変化しているが、その事実に男性二人が気付く余裕は無かった。


 ちっ、また来たぜ……どうする? 次に弾の方が出ればこのデカイ塊をブチ壊せるかもしれねぇが、それなら本体を狙った方がいいよな……そもそも次が弾か空かも分からねぇ。


 そう男性が思考する間にもマインゴーレムの強度平均値で生成された大きな塊が二人に迫って行く。深紅の髪の女性が設置したマーカーとも言えそうな薔薇の幻影は大技を使っていないからか金色を維持している。


 今の内にアレがアタシの風で止まるか試しておこうかしら……?


 深紅の髪の女性がそう思った瞬間、灰色の石とは言い難くなった人の背丈に迫る塊をピンク色のビームが貫き、迎撃判定となった塊はその場で静止し落下。


 少年の青白いビームの直径が人の指程度なのに対し、今のビームは腕程あった。


 次の瞬間と言うには多少の間隔はあったが、マインゴーレムの下半分を覆い兼ねない規模のピンク色の炎がその巨体を包み込み、全体の金属部分が目に見えて増えて行く。


「やっほー」


 その声が上空からだと気付いた女性二人が見上げると、そこにはピンク髪のツインテール少女が身に纏う白いドレスと共に緩やかに降下する姿が。


 正面からでもその大きさが判る背中の赤いリボンも目立つものの、一番視線を集めるのは右手にあるステッキ先端にある鮮やかなマゼンタの宝石部分だろう。


 マインゴーレムは胴体の上に頭部がある事も含めて人型のエネミーだが……そんな頭部に着地した少女はそのコーラルピンクの瞳が輝かんばかりに意気揚々とした声を張り上げた。


「愛と正義で可愛さ爆発! ファーリーピンク、さんっじょー」


 左手をピースサインにして目元まで持って行くウィンクからなる笑顔……全体のポージングもそれに合わせたものとなっている。


 そんな魔法少女(ぜん)とした女性はやがて「助太刀いいかな?」と発したが……突然の光景と状況を一同が飲み込むまで幾許(いくばく)(ある)いはそれ以上の時間を要したようだ。



・ニアリーブルーとファーリーピンクについて少し

 nearlyには、あと少しで、辛うじて、危うく……などの意味がありますが、この場合はnear+lyでnearには接近の意味合いがあるのでインファイターのニアリーブルーにはぴったり。

 まだチラ見せ段階のファーリーピンクは既に遠距離攻撃を見せていて、far+lyですが英単語条件ではfarしかありません……「遠くの」という意味合いがあり、語呂を合わせる上でファーリーに。


・WOLFEX[ヴォルフェクス]

 ドイツ語で狼はWolf……英語と同じですが発音方法が異なり「ヴォルフ」となり……これに英語の渦や旋風を意味するvortexを併せたもの。

 音は結構上手い具合に融合していますが、ヴォルテクスの文字列だけ見れば最後の二文字しか残って無い……


・ビーム射程百六十メートルから

 拳銃の射程は有効射程は百メートル以下で「この距離なら外さないぜ」は十メートル未満じゃないと厳しいぽくて素人条件だと更に近付く必要が。

 主に13世紀末から14世紀でイギリス方面で使われたロングボウは最大射程距離が約三百メートルで有効射程距離は約百五十メートル。

 最大射程距離なら和弓が四百メートル、洋弓が三百メートルくらいなので「拳銃より弓の方が射程距離がある」と断定してもよさそう。

 能力ありなら今回のように「着弾しなくても百六十メートル飛んだら爆発する」など色々盛れますが、有効射程を考えれば拳銃はかなり近接武器に近いみたいです……集団の群れに突っ込んで次々と撃って行くイメージありますし。

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