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先生

超絶久々の更新ですm(__)m

 

 日課の鍛錬が終わり、フォルオは市井の見回りに繰り出した。当然俺もそれに同行する。


 城下町はいつもと変わらない活気をみせていた。

 街中を歩きながら、目を光らせるフォルオに俺は手持ち無沙汰に尋ねる。


「王都の治安は良いのか?」

「周辺の村々よりは良いと思いますよ。でも、ここで悪さをするのは働き口もない、生きていくだけで精一杯の半魔の人たちが多いんです。それを捕らえて保護しても、彼らの生活を保障する制度はこの国にはありません」


 暗い表情をしてフォルオは思いの丈を吐き出す。

 それを認めてしまえるほどに現実問題、半魔による治安悪化は深刻なのだ。


「だから余計、半魔への迫害は増え続ける。民も彼らは厄介事しか起こさないものだと思いきっているんです」


 フォルオは言外に、悪いのは半魔だけではないと言っているのだ。

 バケモノと罵り手を差し伸べもしない人間にも非はある。けれど、どちらも歩み寄ろうとはしない。

 こんな状態が続けば、共存なんて夢のまた夢だ。


 それに加えて、差別は半魔を庇うその家族にも及んでいる。

 俺も経験済みだから分かるんだ。奴らはそれを良いことだと思ってやっている。だから尚更質が悪いのだ。


「なかなか、上手く行かないもんだな」

「でも僕は諦めませんよ! 一人だったら折れていたかもしれません。でも今はジェフもいる。僕の考えを理解してくれる人がひとりでもいるのなら、これほど嬉しいことはありません!!」


 嬉しそうに語るフォルオの顔は喜びに満ちていた。

 誰がどう見ても無理だと判断する問題でも、彼は決して諦めることはないのだ。




 二時間ほど見回りをして屋敷に戻ると、ヴェラが焼き菓子を用意して待っていた。

 出来たての甘い香りは食べなくても美味しいとわかる。


「冷めないうちに持って行きましょう」


 フォルオは終始ご満悦だった。きっと孤児院の子供たちの事を想っているのだろう。

 俺もミルの事を想えば、彼と気持ちは同じだ。

 こんなに美味そうなお菓子をサプライズで持って行ったら、皆喜んでくれるに違いない。


「でもお前、出禁くらってるだろ」

「あっ、……そうだった」


 孤児院へ向かう道中、指摘するとフォルオは落ち込んで項垂れた。


「今回だけ特別ってわけにはいきませんかね?」

「無理なんじゃないか? また怒られると思う」

「そんなぁ」


 仕方ないからこれは俺が持って行ってやろう。おいしい所を持っていくようで気が引けるけど、この焼き菓子は絶品だ。おいしいものはおいしいうちにだ。




 村の入り口でフォルオには待ってもらって、俺は一人で孤児院まで向かう。

 予定より早い帰りに出迎えてくれたリオンは驚いていた。


「もう用事は終わったのか?」

「いいや、フォルオがみんなに食べさせたいって用意してくれたんだが……」


 ――出禁だったことを忘れていた。


 それを言うと、リオンは仕方ないなと首の後ろをさすった。


「フォルオのやつ、わざとやってるのか?」

「いいや、たぶん違うと思う」

「知ってるよ。残念なことに親友だしな」


 やれやれと嘆息すると、リオンはフォルオを迎えに行くと去っていった。


「ああ。ちょうどいま先生が来てるんだ。興味があるなら話を聞いてみると良い」


 ――そんな言葉を残して。



「先生って、確か……」


 リオンが前に言っていた話を思い出すと、確か亜獣化症の治療をしているとか。

 正直言って眉唾であるが、ミルのことを聞いてみたい。解決しなくても何か糸口が見つかるかも。


 少しの期待を胸に廃教会に向かうと、俺の姿を見つけたキーンが駆け寄ってきた。

 どういうわけかいつもより嬉しそうだ。


「兄ちゃん! もう戻ってきたの?」

「ああ、いいもの持って来たんだ」


 ――何かあったのか?

 尋ねる前にキーンは俺の手を引っ張ってくる。


「久しぶりに先生、来てくれたんだ!」

「さっきリオンにも聞いたんだが……先生ってどんな人なんだ?」


 なんともなしに尋ねると、キーンは少し考える素振りを見せた。


「んー……わかんない!」

「はあ?」


 わかんないって……俺もわかんないけど。

 まあ、子供の言うことだからな、なんて思いながら教会の入り口を潜るとそこには見慣れない人物がいた。



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