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急展開

 

 あんな現場を見て放って置くことは出来なかったので、俺もフォルオに同行することにした。


「備品って言ってたけど、リストに酒とか食い物が入っているんだが」


 見せてもらった羊皮紙に書かれている内容は、職務怠慢を隠そうなどという気は全く感じられない。


「暇だとどうしてもそういう物に手が伸びてしまうんでしょうね」

「……暇だとか、そういう次元じゃないだろ」


 思わず溜息が零れる。

 あいつらの横暴な態度もそうだが、それを黙認して従っているフォルオも俺には理解出来ない。


「良いように扱われてるだけじゃないのか」

「そうでしょうね。でも、僕の邪魔をされないだけマシですよ」


 今まで邪険にしてくる輩はたくさんいたらしい。

 だからこういう扱いにも慣れているのだ、とフォルオは語った。


「口だけの連中なので、言わせておけば実害はないですから」

「……そういうものなのか?」


 気にするなというけれど、なんだかもやもやする。


 思えばリオンはフォルオのことをかなり心配していた。

 こういった状況を知っていて、あそこまで言っていたのかもしれない。


「そういえば、ジェフは僕に付き合っていて良いんですか?」

「ああ、その事なんだが」


 それについては、ここに戻ってくる道中に考えていた。


 俺一人ではどう足掻いてもアルバートに接触する事は不可能だ。

 だからフォルオを利用しようと考えたわけだが、それに際して上手く誤魔化せるか。

 それが一番の問題だ。


 誰が聞いたって、何の用があってそんなものを渡すのかと質問攻めに遭うのは明白。

 いくらフォルオが多少抜けているお人好しでも上手く行くはずがない。


 だったらどうするか。


 手っ取り早い方法は、嘘偽り無く全てを話してしまうことだ。



 時間があればこんな強硬手段には及ばない。


 しかし、ダンジョンへ戻った際ボスに数日以内に渡すようにと言われた。

 俺のやるべき事は変わらないから理由は聞かなかったが、外堀を埋めて接近する作戦は使えなくなったわけだ。


「折り入ってフォルオに頼みたいことがあるんだ」

「僕に……良いですよ。何でも言ってください!」


 胸を張ってやけに張り切っているフォルオを尻目に、どう説明したものか。

 話も長くなるし立ち話で済ませるようなものでもない。


「込み入った話になるだろうから、ゆっくり話したい」

「それじゃあ僕の用事をすべて終わらせてからですね。まずはさっき頼まれた備品の補充と、あとは……キーンの件もあったなあ」

「俺も手伝おう」

「それじゃあ手分けして済ませましょうか」


 フォルオの指示で、俺はアリシアへのプレゼントを見繕うことになった。


 別れ際に何が良いかとフォルオに聞くと少し悩んだ後、「気持ちがこもっていれば何でも良い」とかいう、何の解決にもならない返答をされた。


 そういうのが一番困るんだ。


 そもそも、俺はアリシアについて詳しくはない。

 昨日出会ったばかりだし、明らかに人選ミスだ。


 うだうだ文句を垂れながら、商業区でアクセサリーを見て回っていると前方からフォルオがこちらへ向かってくるのが見えた。


「早いな、もう終わったのか?」

「物資は詰め所に置いてきました。ジェフはどうですか?」


 問いかけに首を振る。


 子供用となると、やはり扱っていないようで中々丁度良いものが見つからない。

 困り果てている所に、フォルオはあるものを取り出した。


「……帽子?」

「アリシアの頭には見えづらいですけど角が生えてるんです。今は目立たないから良いですけど、後々必要になると思って」

「良いんじゃないか。少なくとも、気持ちはちゃんとこもってるな」


 花柄の刺繍があしらわれた青色の帽子。

 フォルオは出禁を言い渡されているから、俺が預かってキーンに渡そう。


「それじゃあお次はジェフの番ですね。時間もちょうど良いですし、食事がてら話しましょうか」


 告げて、フォルオが向かった先はグランの屋敷だった。




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