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行方不明

 リオンがそれほど憤らないのは、そんな理不尽さには慣れてしまっているからだろう。

 けれど、フォルオは違ったみたいだ。


「そんなのはおかしいです」

「何もおかしな事なんて無い。他の人間からしたらそれが当たり前なんだよ。全部が全部、お前みたいな奴ばかりじゃないんだ。少しは自覚しろ」

「……それは僕に、周りと同じように見て見ぬ振りをしろと言っているんですか?」

「そうだ」


 きっぱりと言い切ったリオンの言葉に、フォルオは唇を噛みしめた。固く握りしめられた拳は行き場を失ったままだ。


 フォルオは他の人間と比べると変わってはいるが、考え無しの馬鹿といった印象は受けない。リオンの意見も理解はしているのだろう。

 顔を歪めて沈黙する様子からもその心境は伺い知れる。


「お待たせしました~」


 緊迫した状況の中、俺の荷物を取りに行っていたシィラが戻ってきた。

 彼女の後ろに隠れるようにして一緒に連れてこられた子供は、俺から荷物を盗った半魔の子。

 キーンと呼ばれていた少年が、バツが悪そうに盗んだ荷物を手渡す。


「いきなりあんなことして、その……ごめん、なさい」

「ああ、ありがとう」

「……怒んねえの?」

「もうたくさん怒られたんだろ? 荷物もちゃんと戻ってきたんだから俺が怒る事なんて何もないな」


 ここまで辿り着くのは骨が折れた。本当は文句の一つでも言ってやりたかったが、色々と話を聞いていたら怒るに怒れない。

 何にせよ、ミルが無事ならそれで良いんだ。


「……あれ?」


 鞄の中身を確認すると、入っていたはずのミルの姿がなかった。


 キーンに荷物を盗られた時はきちんと鞄に入って貰っていたはずだ。

 ここに居ない筈はない。しかし、鞄をひっくり返してみても結果は同じだった。


「この中にミル……トカゲが入ってなかったか?」

「中身は弄ってないよ。兄ちゃんから盗ってまっすぐここに帰ってきたから、どこかに置き去りにもしてない」


 キーンが嘘を吐いているとは思えない。

 けれど、だとしたらミルはどこに消えたというのだろう。


「アリシアじゃないか? さっきすれ違ったとき何かを大事そうに抱えていたから、もしかしたらジェフが探しているそれかもしれない」


 困り果てている俺を見て、思い出したようにリオンが告げる。


「その子はどこに居るんだ?」

「三十分前に外に遊びに行ってくると言っていた。あまり遠くには行ってないはずだ。そういえばさっきから姿が見えないな」


「いつもなら陽が落ちる前には戻ってくるんですけど……どこかで道草でもくっているのかしら」


 シィラが陽の落ちかけた外を見ながら心配そうに呟く。


 話を聞くに、そのアリシアという子はキーンよりも少し年下。ミルと同い年らしい。


「俺、探してくる!」

「駄目だ。探しに行くのは俺とジェフで行くから、キーンはここで待っていろ。アリシアと入れ違いになるかもしれないし、外も暗くなってきている。危ないだろ」

「……わかった」


「それじゃあ私は夕飯の準備をして待ってますね。ほら、キーンとフォルオも手伝って」


 二人の背中を押してシィラは夕飯の支度をしに奥へと消えていった。




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