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奇妙な乱入者⑤

 

「……そいつは良いのか?」

「こんなのは後回しです!」


 後ろ髪引かれるでもなく即答する様はいっそ清々しいほどだ。


 そのまま手放した男には目もくれず、青年は話し出す。


「僕がここに来た理由は人捜しの為だったんです。見回りから帰ってきてみると、同僚が盗難被害の報告があったからそれの対応をしてくれと言われて」

「あいつら、暇そうに見えたけど……」

「スラム地区はこんなですから、誰も関わり合いになりたくないんですよね」


 あはは、と愛想笑いを浮かべて彼は答える。


「依頼人がスラム地区に入ったと言うので追いかけてここに来て……後はご存じの通りです」

「……なるほど」


 これは俺も怪しまれるような格好をしていたから、彼だけを責めるなんてことは出来ない。

 しかし、そうは言っても無駄な時間を過ごした事は否めないだろう。


「なんというか……悪い奴じゃないんだけどな」

「本当になんと詫びていいか」


 過ぎたことは仕方ない。気持ちを切り替えていこう。


「申し訳ないと思っているなら犯人を捜すのを手伝ってくれ。俺一人じゃどうしようもないし、盗られた物が返ってくるなら今までのことは全部水に流す」


 こちらから提案すると青年は項垂れていた顔を上げた。


「わかりました。元々そのつもりだったので是非協力させて下さい」


 差し出された手を握って握手を交わす。


「そういえばまだ名乗っていませんでしたね。僕はフォルオと言います」

「俺はジェフだ」


 先ほどの話から大凡察しは付いていたが、こいつが隊員の言っていたあのフォルオらしい。

 確かに名指しされるくらいには悪目立ちする難儀な人物ではある。


「早速だが、フォルオは犯人の行きそうな場所に心当たりはあるか?」

「そうですね。半魔ならここにも居るのですが子供となると……もしかしたらあそこかもしれない」


 着いてきて下さい、と先導するフォルオに大人しく従っていった先はスラム地区を離れて、王都の外。


 犯人は街中に隠れていると思っていたのだが、彼の足取りは迷いがない。


「今から少し離れた廃村まで向かいます。おそらく、犯人はそこに居るはずです」

「ずいぶん自信たっぷりに言うんだな」

「犯人の特徴を聞く限り、なんだか僕の知り合いに似ているので……複雑な心境ですが、予想が当たっている事を祈りましょう」


 王都の周辺には廃村がいくつかある。

 昔は村として機能していたが王都に人が集まるにつれて村も廃れていったらしく、今では夜盗のアジトになっている場所もあると聞く。


「もしかして、そこに隠れ住んでるのか?」

「ええ、でも部外者にバレると面倒なので口外しないでください。僕もあまり顔を出すなといつも怒られるので」


 気まずそうにフォルオは答えて、陽が落ちかけた街道を歩いて行く。


 最初は驚いたが、王都で暮らすよりもこうして人が寄りつかない場所で隠れている方が、半魔にとっては暮らしやすいのかもしれない。

 けれど、あんな子供が生活圏から離れて暮らすには苦労するはずだ。

 王都周辺だからといって治安が良いわけでもない。夜盗だって出るし安全とはほど遠い。




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