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使い心地

 

 門番よろしく。ちょうど出口であるゲートを塞ぐように置かれている巨大な石像。

 先ほど砕いたガーゴイルとは大きさが桁違いで、それこそゲートの全長をすっぽりと覆い隠すくらいにはデカい。


 目の前に立ってまじまじと観察してみるが、ゲートとの間に隙間もないし横着して逃げ出すことは不可能だ。


「さて、こいつをどうやって倒すかなんだが……」

『さっきと同じ要領で吹っ飛ばせば良いんじゃない?』


 戦闘に入るからと俺の影に潜ったロベリアが答えた。

 簡単に言ってしまえばそうなんだが、はたしてこの巨体にそれが通用するのだろうか。


「一番良いのはそれだろうけど、こいつをバラすとなると相当な威力が必要になると思う」

『なるほど、それじゃあジェフの方が敵より先に爆発四散しちゃうね』

「出来ればそういう事態は御免被りたいんだが」

『頭と上半身が残っていればなんとかなるんじゃない?』

「冗談のつもりだろうけど、冗談に聞こえないからやめてくれ」


 本気で有り得そうだから笑い話にもならない。


 一先ず威力の底上げは置いて、ゲートの前に居座っているこのガーゴイルだけはどうにか退かさないといけない。

 ものは試しと言うし、俺の身体が吹っ飛ばない程度に調節してやってみよう。

 もっとも、俺の魔素も最初よりは減っている。今の状態でどれだけの威力を出せるか。


 手で触れられる距離まで近づく。

 けれど先ほどのガーゴイルと違って、目の前のこいつはピクリとも動かない。

 もしかして、ただの石像なのか?



 訝しみながらも左手で石像に触れると、爆破させた。


 破裂音と小規模の爆風が巻き起こり、それらの衝撃に目を(すが)める。


 粉塵が舞う中、上から微かな物音を察知して背後に飛び退いた直後、俺が立っていた場所に大岩の鉄槌が降ってきた。

 凄まじい衝撃に石畳が捲れ上がって地面が陥没している。

 あと数秒退避が遅れていたらぺしゃんこだった。


 鉄槌を下した主は、ゲートの前に居座っている石像だ。

 どうやらこいつはゲート前から動くことは出来ないらしい。それもそのはずで、その場所から移動してしまったら門番の意味が無い。

 その代わりなのか、図体がデカく攻撃性も高いみたいだ。先に進もうと危害を加える者には容赦なく襲ってくるようで、現に今の攻撃も即死級だった。


『今のヤバかったんじゃない?』

「ああ、しかもあの程度の爆発じゃビクともしなさそうだ」


 ガーゴイルの攻撃によって晴れた視界の先には、先ほど爆破した痕が残っていた。

 胴体部分を狙って攻撃したのだが、結果は芳しくはない。

 威力は今まで通り、前座のガーゴイルを屠ってきた時と同じだが、この相手には効果がまるで見られない。

 爆破で表面を少し抉ったくらいだ。図体がデカすぎて砕くにはこれよりも何倍もの威力が必要だろう。


 それに加えて、今の攻撃で分かったことが一つ。

 ガーゴイルへの爆破攻撃時、使ったのは左手だ。特に何も考えず無意識の行動だったが、結果これが功を奏した。


「どうやら見た目通り頑丈みたいだ」


 爆破に使った左手には傷一つ付いていなかった。

 今までだったら、腕がもげてそれを再生してと労力が凄まじかったが、腕が吹き飛ぶどころか無傷とは思ってもみなかった。


 先ほどは突然の変化に驚いたが、この形態変化は予想以上に使えそうだ。


『それだったらもう少し威力強くしてもイケるんじゃない?』

「可能だとは思うが、威力が高い分魔法の発動まで時間がかかる。魔素も十分とは言えないし、俺の準備が整うまでアイツが待ってくれたら良いんだが、あの様子だと無理そうだ」


 先の爆破から、ものの数秒で反撃が飛んできた。

 危害を加える前なら近づくのは容易だったが、敵として認識された今では接近するのも厳しいだろう。


 リスクを承知で突っ込むか。それとも、別の策を考えるか。

 けれど、今のところガーゴイルに有効なのは爆破魔法だけだ。これ無しでは突破は難しい。


「何か良い案はないか?」

『案って言ってもなー、元々無機物の魔物だからって爆破させてたんでしょ? これじゃあ振り出しに戻ってない?』


 ロベリアの言はもっともだ。

 消去法で行けば爆破の一択しか打つ手はない。ここは高威力で倒せることに賭けて攻撃してみるとしよう。



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