翌日
翌日、俺はミルを連れてガトーの元へと赴いていた。
これからダンジョンの最終エリアへと向かうので、その前にガトーへミルを預ける為だ。
「後で迎えにくるから、ミルはお利口さんにして待っててな」
「ギュウゥ」
俺の肩に乗っていたミルを、伏せをしているガトーの傍に下ろす。
離れたくなさそうにじっと見つめられたがここは我慢だ。
一緒に連れて行くのは危険すぎるし、かといって俺の帰りをじっと部屋で待つのも退屈してしまう。
ガトーに見て貰うのが一番と判断してこうして連れてきた。
ミルもそれは分かっているようで、大人しく俺のお願いを聞いてくれたが後ろ髪は引かれてしまう。
「ガトー。ミルのこと、よろしく頼む」
「分カッタ。私モ良イ暇潰シニナリソウダ」
明朗な返事をしたガトーは昨日と違ってとても穏やかに見える。
ボスに言ってこのエリアの沼地を外してもらったことで、種族間の抗争もなくなったからだろう。
ダンジョン的には戦力ダウンということになるのだろうが、ボスに尋ねるとその事に関しては問題はないそうだ。
元々このダンジョンは昔からあるものだが、階層は浅いものだった。
五階までしか無く、アンデッドしか出てこない。
それ故に冒険者ギルドでも初心者向けのダンジョンとして広まっている。
それをいつからか分からないが、ボスが間借りして隠れ蓑として使っていたようだ。
一応侵入者を警戒して適当に階層を増築したみたいだが、未だ初心者向けダンジョンとして認知されている。
五階以降は初心者ではかなり手を焼くのだが、表立って危険視されないのは単純に需要がないからだ。
ベテランの冒険者はダンジョンなんて潜ってないでもっと稼ぎの良い討伐依頼をこなす。
初心者の為にと、ダンジョン内部の構造は大まかに情報公開されているが、基本放置だ。
よほどの馬鹿でもない限り、深層まで潜るなんて事もないし実際アンデッドにやられて死ぬ輩は多くはない。
死ぬとしたらそれ以外の要因――俺のように裏切られて殺される方が圧倒的に多いだろう。
というわけで、俺の要望は意外とあっけなく受理された、というわけだ。
「ヨロシク頼ムヨ、オ嬢サン」
「ギュイィ」
お留守番を受け入れたのか、ミルも案外楽しそうにしている。
やはり動物の毛皮がお気に入りなのか、ガトーの両前足の間と顔の下にあるスペースにすっぽりと収まってご機嫌だ。
正直羨ましいし、このままミルと遊んでいたいがそうも言ってられない。
泣く泣く、森を後にして次のエリアへと向かうのだった。




